好きな色
やっぱりゼノの瞳の色、私は好きだ。青なのだが、その一言では表せない。光の当たり具合によってなのか分からないが、いろんな青が混ざったような複雑な色。
「綺麗だな」
「頭でも打ったか?」
「正常だよ」
「なら、あんま見んな」
ゼノは顔を背けてしまった。じろじろ見てしまったのがいけなかったか。でも、見たい。
起き上がり、彼の正面へ回り込むと困ったように頭をかいた。これはゼノの癖だ。そしてその後、下に視線を向け腕を組むのがひとセット。何度この場面を漫画で見たことか。
それが目の前で見られるなんて。しかし、これはいけない。この仕草をしたということは、機嫌が悪い、もしくはお腹が空いているかのどちらか。
この状況からして、十中八九機嫌が悪い。けれど、見るのを止められない。普段は口数が少なく一匹狼。あんなに大人びているのに、子供のような態度。このギャップが刺さらないはずない。
「呪われてもしらねぇぞ」
「なんで呪われるの?」
「この炎と同じ色だからだ。」
悪魔と呼ばれた炎と同じ色。人はその目を見ると呪われるといって怯えるそうだ。手のひらで揺らめく青い炎はこんなにも綺麗なのに。
ゼノが人と目を合わせたがらない理由はこれか。今思えば、よく背を向けられていた。嫌われているのではと不安に思っていたが、要らぬ心配だったようだ。
「私が呪われないようにしてくれてたの?」
「別にそんなんじゃねえ」
「ありがとう」
「だから、ちげーって」
否定すればするほど、肯定していることに気付いてはいないのだろうか。あと2,3回この件を繰り返したいが、もう充分優しさは伝わった。
「心配しなくても大丈夫。私、呪われたこと1回もないから」
「なんだそれ」
自信満々だったのだが、いまいち反応が悪い。どう伝えたらいいものか。呪われていないことを証明するのはなかなか難しい。言葉で伝わらないなら、この先の時間を使って示すだけだ。
いつか自分で自分を卑下しなくてすむ日まで。
言葉では足りないなら、時間を使って、態度で示して。それでも足りないなら、もっと沢山の時間をかけるし何度も言葉にする。
届かなくても、受け取ってもらえなくても。諦めてしまったら、叶わないから。
ゼノの頬をそっと両手で包み視線を合わせるが、すぐさま目を逸らしてしまった。
「なんで、俺を怖がらない」
「なんでって聞かれてもな」
確かに見た目は怖い。目つきも口も悪い。おまけに態度もあまりよくない。気怠げな雰囲気を纏っているし、近づき難い。でも、それは表面上の話。
本当は食いしん坊で、仲間思い。出会って日が浅い私を気遣ってくれる優しさがある。非情に見えることがあるが、客観的に物事を見ているだけ。その冷静な判断が仲間を何度も救った。
「ゼノ君には素敵なところがいっぱいあるから」
「そんなのあるかよ」
「あるよ。甘い物を口いっぱいに頬張ってるところが可愛い。戦ってる姿は格好よすぎるし、仲間を見捨てたりしないところも好き。あ、もちろん全部好きなんだけど、特に好きってことね。あと……」
「もういい」
「なんで?まだまだあるよ」
「あんた、ほんとに変な奴だな」
「そうかな」
「ああ。何考えてんだか、俺には分かんねぇよ」
「私も分かんないや」
なぜこんなにも好きなのか。数あるキャラクターの中で、たったひとり。似た顔、似た性格。でも、全然違う。惹かれるなにかを持っている。
それが何かは分からないが、幸せになってほしいと思うのに理由は必要ないはずだ。




