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未来(ゆめ)〜ユメミライ〜  作者: 莉ゆ。꒰ა♡໒꒱
未来(ゆめ)を追いかけて
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1章 未来(ゆめ)を追いかけて 【交換】

「ヒナ、手術日、決まった。あと一週間くらい。」

 僕が言うとヒナは少し笑った。

「私も、手術日決まっちゃった。」

 とヒナは悲しそうにそう言った。

「まず、日本で胸の手術をして、その後タイで本格的に手術なんだ。9月の27日から始まる。」

 と僕が言うとヒナがびっくりして

「そう、なの、、、。私も、同じ日に手術、、、。」

 と言った。

「、、、!手術日ヒナのところにいたかったな、、。」

「私も、そうだよ。あと、その日、私の誕生日なんだ。同じ日に生まれて、死ぬのかなあ。」

 ヒナが涙声でそういった。

「生きるよ、ヒナは。生きて、生きてよ、、、。」

 悪化してるのもわかってた。手術したら死んじゃうかもしれないのも。全部。

生きてほしかった。

ヒナに、生きてほしかった。

「私の話、しても良い?」

 ヒナがそう切り出した。

「私はね。チソラくんは明るいって思ってるかもしれないけど、クラスでは静かな子なんだ。ゆんちは、そんな私を明るく元気づける役目だった。いつも明るくしてくれた。私は、チソラくんに元気になってほしくて、最初から明るくしてた。そんなところを好きって言ってくれた。でも、、、病状が悪化したらそんな元気もなくなっちゃって、最近は笑えなくなった。チソラくんの話すこと、全部好きなのに、笑いたいのに、笑顔をつくる元気もなくなっちゃって、、、。悲しいよ。ほんとはね、手術日違ったんだ。でも、あまりにも早く死にそうだったから、早くなっちゃって、、、。だめだね。私は、生きたい。これからの先も、チソラくんがもっとかっこいい男の子になるのを見たい。もっとおとなになって、先の未来をみたい。でも、叶いそうにないな。______私の将来の夢は、アイドルになること。子供っぽいって思うかもしれないけど、私は誰かに明るい笑顔で勇気をあげたいってずっと思ってた。

チソラくんに、託してもいいかな。アイドル。」

 ヒナはそう言うとニコッと笑った。

アイドルは、男の子でもできるんだろうか。

“諸君、狂いたまえ!”というのに当てはめるなら、僕はアイドルになっても、誰にも何も言われないけど。

「ヒナの笑顔なら世界中の人を魅了みりょうできたかもしれないのにな」

 僕がつぶやくとヒナはぱぁっと向日葵ひまわりみたいな笑顔で笑った


 タイの病院につく。

日本で胸オペを終わらせ、胸に違和感を感じなくなったころ、タイに出発した。

「じゃあ、お母さんはこれでホテルに行くね。チソラは病院に入院だけど、、頑張ってね。それと______男の子に産んであげられなくてごめんね。」

 お母さんが悲痛な声でそういった。

ごめんねって言われても、「大丈夫」も「気にしてないよ」も嘘になるし、どう答えたら良いのか分かんなかった。

「行ってくる。」

 僕にはそれを言うのが精一杯だった。

お母さんはニコッと笑うと、ホテルに向かって歩いていった。


「こんにちは、手術ですか〜。名前をお願いします。」

 と受付のお姉さんが言った。タイだけど、日本人の人だ。

「チソラです。」

 と僕が言うとお姉さんは

「あぁ〜。チソラさんですね。064番の病室です。何人かの部屋になっておりますが、大丈夫ですか?」

 と言った。僕が頷くとお姉さんは病室まで案内してくれた。

部屋には日本人の、僕と同じ待遇の人がたくさんいた。

日本人がたくさんいるだけで、安心する。

医者せんせいもあとで来ますので、もうしばらくお待ち下さいね。」

 お姉さんはそう言うと戻っていった。

他の国ってだけで、ドキドキする。

不安がたくさんだ。

何をするにも、不安でしかたない。

周りが話していても、タイ語は知らないし、何をするにもタイのやり方と日本のやり方は違くて、日本でしていた“普通”は海を超えるだけで全然違うんだな、と実感した。


「遅れてすみません。手術はいよいよ明日やろうと思っています。心の準備は大丈夫ですか?日本で説明があったと思いますが、もう一度警告します。この手術は完璧に男の子に変わるわけではありません。それと__術後は固形物が食べられません。痛む場所が多々あり、しばらく歩けないかもしれません。」

 お医者さんはそう言うとどこかへ行った。

周りの、聞いていた他の患者さんが

「日本から来たの?どこ?」

 と聞いてきた。まるで、前のヒナみたいに。

それで思い出す。明日、ヒナも手術ということを。

大丈夫か不安になる。

でも、僕は未来に向けて一歩踏み出す。

僕が、未来で笑えるように。

生きれるように。

そして、、手術を受けた後は、アイドルになるために、ヒナの夢を叶えるために頑張ろう。



「痛っ、、、。」

 起きれば全身痛かった。

手術は、無事終わった。でも、全身が痛い。

「痛いですかー?」

 看護師さんが聞いてくる。

「痛いです、、、。」

 って返したら点滴の中に鎮痛剤ちんつうざいを入れてくれた。


痛い。

全身ズキズキする。

あぁ、手術しても、こんなに痛くても、本当の男の子にはなれないんだな、、、。


声を出そうとすると、かすれて出ないけど、明らかに声は低くなっていた。

「ホルモン注射」っていうのをすると全体的に男の人になるから。

僕は、起きて、寝てを繰り返した。



『ねぇ、ねぇ。身体を、交換してあげようか。』

 誰?誰の声?

周りは真っ白で、優しく包みこんでくれてるみたい。

前を見ると、かっこいい天使が居た。

顔は全然わからない。周りがふわふわしてて体の形もわかりにくい。

でも、男の人だった。

かっこいい、天使。

僕は

『交換したいです。』

 って言った。

交換したら、身体が男の人になって、幸せだった。

ずっとこのままでいたい。



「っ、、、。ゆ、め?」

 起きたら病院の天井が見えた。

周りはガヤガヤしてて、誰か話してるみたいだった。

「痛い、、、。」

 鎮痛剤が切れたのか、気のせいなのか、やっぱり身体が痛い。

ずっと、夢の中なら良かったのに。

こんなに苦労して、苦しくて、でも、本当の男の子にはなれないんだ。

死にたい。

死んでしまえばラクになれるのに。

身体も変わって、気持ちも変わるかもしれない。

また、身体が女の子で、でも女の子が良いって思えるかもしれない。

男の子になれるかもしれない。

死にたい。

全部終わりにしたい。

この、ハズレくじみたいな人生を。

もう、良いことなんて無いかもしれない。

死んでしまいたいと思うことは、悪いことなのかな、、、、。


でも、約束は守らなければいけない。

ヒナから託された未来ゆめを。

実際の手術とは多少違うところがあります。ご了承ください。

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