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 『泳宮と大蛇』落選作

地域の伝承などから導き出した物語

  

 泳宮の史跡を一人の男が観光して居る。素性は解らないがスラッとした見た目の良い男だ。

「あの?すいません。お一人ですか?」

声を掛けた女性もまた、容姿端麗で美しい美女だった。

「あの?何か?」

「いえ。余りにも格好良かったので。」

「そうですか?」

男は、悪気はしなかった。それどころか下心さへ生まれていた。

「よろしかったら、マッサージ等受けて見ませんか?」

「え?」

「私、マッサージ上手いんで!」

男は訝った。しかし、スケベ心と下心がそれらを上回った。

「お願いしようかな?」

「そう!じゃあ。」

女は男の腕を取り、キツく抱き付き、胸を腕に圧しつけてきた。

【悪くないな。】

男は女に凌駕されていく、

「私の定宿で良い?」

「定宿?」

「ええ、お誘いした人をお連れしいてる、所よ。」

【美人局か?】

「怪しんでいるんでしょう~!大丈夫よ。私はフリーだから。」

男はなおも、下心に支配されていた。

「ここよ。」

そこは綺麗なラブホだった。

女は手慣れた様子で、部屋へ男を導いた。

 その部屋は狭いが、それなりの硬さのベッドが中央に置かれていた。

「横になって。」

女は男をベッドにうつ伏せに寝かせた。

 女は下着姿になり、男の上へ跨った。

「何処からいらしたの?」

女の手は男の背中を撫で始めた。

「放浪の旅人さ。」

「そう。」

女はなおも優しく撫でる様に、背中に手をはべらしている。

「お名前は?」

邪義じゃき!」

「邪義さん。もっと気持ち良くならない?」

「俺はマッサージに誘われたんだ!チャントやってくれ!」

邪義の心から下心が消えていた。

「ねえ!最も気持ちいい事しましょうよ。」

女は邪義の耳元で吐息を吹きかけながら囁いた。

 邪義は、突然!体位を入れ替えた。

「ええ?」

女は狼狽えた。

 邪義は無言で背中を強く押し始めた。

「マッサージとは、こういう事を言うんだ!」

邪義の指は的確にツボを捕らえた。

「う・う。」

女は邪義の下に埋もれた。

「解ったか?」

邪義は女から離れた。

「幾らだ?」

女は呆気に取られていた。

「幾ら何だ!」

邪義はなおも迫った。

「じゃあ、オール込みで、一万。」

邪義は財布から一枚札を取り、ベッドに横たわり、邪義を見つめる女に投げた。

「じゃあな。」

邪義は立ち去った。


 次の日、邪義は姫治天文台に居た。

「あら?昨日のお兄さん。」

また、あの女だった。

観光客は少ないが、疎らな観光客は必ず彼女を眼で追っいた。

「何だ!お前か?」

邪義はぶっきら棒に、半ばバカにした様にあしらって居た。

「知らない仲じゃないんだし、良いじゃない。」

女は、またもや邪義に近付き、二の腕を取り、胸で誘惑を始めた。

「これがお前の生業か?」

「いいえ。本業は!観光課の職員。これはね・・・・・・?」

女は言葉を切らした。

「ふ〰ん!もう、俺は釣れんぞ。」

邪義は冷たく言い放った。

「如何かしら?」

女は邪義の頬を妖恋に撫で始めた。

 邪義はその手を掴んだ。

「一万じゃ、足らんのか?」

「そりゃ~、多いに越した事は無いわ。」

開き直った様に答えた。

「他を当たれ!」

邪義は女を振り払い去ろうとした。

「待って、私!桜媛ようえん貴男とは何かいにしえの導きを感じるの!」

「ほー、桜媛か?で?だから?」

邪義は、更に桜媛と距離を取ろうとした。

桜媛は邪義に駆け寄り、

「これ!」

っと連絡先のメモを渡した。

 その後、邪義はまた昨日の泳宮の池の畔に向かった。桜媛には後ろ髪は引かれたが、それを断ち切り池へと足を向けていた。

「たまには日の光も浴びないと。」

畔には車椅子の女性が介助者と佇んで居た。

容姿は桜媛に負けず劣らず美しかった。

その子はただ池を見つめていた。

 邪義は何となく、その子に惹かれた。

「あの~、お隣良いですか?」

邪義は自然に声を掛けていた。

 ヘルパーは咄嗟に二人の間に割って入る様にポジションを取った。

「良いですよ。」

彼女は優しく答えた。

彼女は邪義に

「ここは、古い言い伝えのある池で・・・姫をおびき出すために鯉を放ったとか。」

「へぇ~。」

「他にも、天文台のある地には『三宮神社』があり、姫之命が祀られている等、伝承の多い地なの。」

「へ~。」

邪義は二回目で案内看板等により、大体は把握していたが、初めて聞いたかの様な素振りを見せた。

 邪義を訝しるヘルパーは、

「行きましょう!」

っと彼女を連れ去ろうとした。

「良いお話をありがとう。」

その言葉で邪義は彼女を見送った。

 邪義は夕食を摂りに『猿田彦 彩旬ごはん』へ行く事とした。

「いらっしゃいませ。」

邪義はカウンター席に通された。

コース等もあるが、色々少しずつ食べたかったので、ほたての酒盗和えや金目の煮付け等を堪能していた。

「お隣、失礼します。」

目を向けると、桜媛だった。

「あら?」

「・・・・・・。」

邪義は無言だった。

「偶然、これも何かの縁ね!」

桜媛は悪ぶれる素振りも無く席に着いた。

 邪義は料理もまだ沢山残っていたので、出るに出られず、金目に箸を伸ばしていた。

「邪義さん。今日身入りが少なかったの、どう?」

桜媛は露骨にストレートに挑発してきた。

「・・・・・・。」

邪義は耳を傾けたが、返事はし無かった。

「いけず~。」

桜媛はピッチが速かった。

「大丈夫か?」

邪義は始めて言葉を発した。

「え?大丈夫よ!」

桜媛はまだ呂律は回っていた。

「ここの『みむろ杉』と『黒龍』はお進めよ。奈良と福井だけどね。」

そう言いながら、邪義の肩に凭れ掛ってきた。

【またか?】

邪義は桜媛の常套手段だと思った。

「うふ。うふふ・・・・・。」

桜媛は薄く笑みを浮かべ、自分の心に酔い惑い、それを玩ぶように腕に凭れた。

「おい。」

邪義は怪訝そうに桜媛を覗いた。

 桜媛の頬は仄かに桜色に染まっていた。

「大丈夫か?」

「ええ!」

声はハッキリしているが、眼を閉じたまま、その状態に酔いしれている様だった。

「貴男と出会えて良かった。」

邪義の耳に幽かに届いた。

【うん?何で?】

邪義は訝がった。でも、桜媛の微笑みはそれらをかき消した。

「帰れるのか?」

邪義も食事を済ませ、酒に舌鼓を打っていた。

「立てるか?」

「むれで~す。」

桜媛は酔って居た。それは、酒にか?状況にか?解らないが、嬉しそうだった。

「仕方ない!これも何かの縁。送るよ。」

 邪義は桜媛の支払いも済ませ、桜媛を抱えタクシーに乗り込んだ。

「ごれそうさま。」

「行先は?言えるか?」

「アパート香ヶ洞へ。」

「あいよ!」

運転手は車を出した。

「香ヶ洞?」

邪義は運転手に聞いた。

「ああ、ここらは池等が多いんや、その中の一つ、地名には無いがね。」

「へぇ~。」

「お客さん、その子有名だで、ここらじゃベッピンの姉妹じゃて。」

「え?」

「ええの~。送り狼かえ?」

「違う!」

桜媛はびったり邪義の身体に凭れ、眼を閉じていた。

「ここじゃけ。一階の一番手間へじゃ。」

「なぜ?それを?」

「妹さんが常連じゃきね。」

二人は降ろされた。桜媛を抱えチャイムを押すと、

「はーい、どうぞ!」

っと声がするが、一向にドアが空かない、邪義はドアノブに手を掛けた。

『ガチャリ』

ドアは開いていた。

「お邪魔しま~す。」

邪義は桜媛を抱え部屋へ入って行った。

「あら?いらっしゃい。」

池の前の彼女だった。

「ごめんなさい、お迎えできなくて。こんなだから。」

邪義は桜媛を抱えていた。

「あ!そちらの右へ。」

そこにはベッドが二つ両サイドに並んでいた。

邪義は言われた位置に桜媛を寝かせた。

「ありがとうございます。私じゃ介助できなかった。」

邪義はこの偶然に驚いていた。

「姉がご迷惑をお掛けしてすみません。私は兎媛うえんです。」

邪義は兎媛の前へ座った。

「二度目ですね?」

「え?」

兎媛は少し間を置き、

「ああ!泳宮の!」

「ええ。」

邪義は兎媛に心を奪われた。

「姉とは?」

「まあ、色々と、まだ三度目ですが。」

「え?それだけ?」

兎媛は驚きを隠せなかった。

「お二人は?ご両親は?」

「姉と私の二人っきりです。」

「そう何ですか?」

その後も他愛のない話で二人は弾んだ。

「そろそろ。」

邪義は腰を浮かした。

「またいらして下さいね。」

「ええ、是非。では。鍵は平気ですか?」

「はい。大丈夫です。」

 邪義は部屋を出た。

 ベッドで横たわる桜媛は薄目を開けていた。

「・・・・・・・。」


 邪義は放浪を止めていた。定住はして無いが、暫らくここに身を置く気になっていた。

「あら?今日も?」

「ええ。」

泳宮の池が二人の落合い場所だった。約束も何も連絡していないが、ここでいつも会えて居た。

「じゃあ、私はチョット。」

ヘルパーは気を利かせ離れて行く。

「この地には、皇室の言い伝えも多いですね。」

「そう何です。余り知られていないですけどね。」

二人の距離はドンドン近づいていった。

「姉は全てを私に捧げてくれているんです。」

【だから?あんな事を?】

邪義の脳裏に一瞬過った。しかし直ぐ打ち消された。

【悪女だしな。】

兎媛は決して姉の悪口は言わなかった。

「お姉さん思いですね。」

「いえ?姉の方が私、思いです。」

兎媛は優しく語った。

 時は過ぎ、寒さが増して来た。

邪義はあの店に向かっていた。

 店には桜媛が居た。観光客相手にいつものあれを行っていた。かなりの年配者だ。

「どうです?マッサージでも?」

鼻の下をだらしなく伸ばした親父は頷いて居た。

「行きましょう。」

桜媛は出ようとした。その時カウンターに居る邪義に気が付いた。桜媛はスーッと近づき、

「兎媛には、絶対に内緒に!」

キツイ眼で睨み言い聞かされた。

邪義はただ頷いた。

「行きましょう。」

桜媛は観光客と店を後にした。

「仕方ないんだよ。」

板さんが、配ぜん序にボソッと呟いた。

 

 桜媛から緊急の連絡が入った。

〔兎媛が入院した。〕

ラインだった。

 邪義は慌てて連絡にあった病院へ駆けつけた。

 病室へ向かうと、そこから二人の笑い声が漏れていた。

【良かった。】

邪義は病室へ、

「大丈夫か?」

兎媛の隣へ体を滑り込ませた。

「私、外れるね!」

桜媛は邪義に眼で威圧した。

【言うなよ!っとの事か】

邪義はせーいっぱい兎媛の心を和ませる努力をした。

「へ~。それで?」

「・・・・・。なんで?連絡くれなかった?」

邪義は言葉を切り、兎媛に問うた。

「えへ!何となくね。」

兎媛は照れ笑いで返した。

「俺と君の仲じゃないか!」

少し語尾を強め放った。

「ごめん。」

兎媛はしょ気てしまった。

「ああ!そんな積もりじゃ。」

邪義は口籠った。

「どう?」

桜媛は手助けに来たように現れた。

【助かった。】

邪義は胸を撫で下ろした。


 数日後、邪義と兎媛は二人っきりだった。

「あのね?・・・・・。」

兎媛は真剣な眼差しで邪義を見つめた。

「如何したの?」

邪義も兎媛の心を詠み取り、真摯に目を向けた。

「邪義、お姉ちゃんと結婚して!」

思っても居ない発言だった。

「え?・・・・・・。」

邪義は言葉を見失っていた。

「私も彼方を失いたくない、でも、彼方の伴侶にはなれない。」

「なぜ?」

邪義は短く返した。

「だって、この身体じゃ・・・。彼方に迷惑しか掛けないし・・・・。」

兎媛はくぐもった。

「大丈夫、全てを受け入れる。」

「いえ?私のは、ズレてる。それを直して受精できるなら直ぐにでもしたい‼でも、今の科学・医療では無理。それに子供に同じ事をあじあわせたくない!だから。」

「それも、受け止める・・・だから!」

兎媛の眼を見て訴えた。

「お姉ちゃんは私の為に人生を捧げてくれている。報いたい。」

「・・・・・・。」

邪義は言葉を手繰り寄せていた。しかし、発すべき言葉が見つからなかった。

「私を施設へ、二人は自由になって。」

邪義は兎媛の言葉のマシンガンに撃ちつくされ病室を出た。

 その後何度も病室に通い説得を試みたが兎媛の心は微動だに、揺るがなかった。

 また、あの店へやって来た。

桜媛はまた同じく観光客へアプローチしていた。

【ふ。兎媛の気持ちも知らないで。】

邪義は自棄酒に近いピッチで酒を煽った。

「邪義!体に障るは。」

桜媛はいつの間にか生業を止め、隣に座っていた。手を伸ばし邪義の御猪口をテーブルに着席させた。

「余計なお世話だ!」

絡み酒に近かったが、酔いはまだ回って居なかった。

「お前、最低。」

邪義は軽視し軽蔑の眼差しで桜媛を見た。

「私、彼方しか誘ってない。他の人はマッサージだけよ。」

桜媛の告白だった。

 邪義は一気に酔いが醒めた。

「兎媛が・・・・・・・。」

これまでの兎媛とのやり取りを桜媛に全てさらけ出した。

「あの子・・・・・。」

桜媛もお酒の力を借りたくなった。

「邪義は?どうしたいの?」

「兎媛を守りたい。」

「私も。」

二人は御猪口に注がれたお酒に反射する光の揺れに合わせ心が揺れた。


 兎媛は退院して、アパートへ戻っていた。

「お願いします。」

「良いの?」

「はい。」

兎媛はヘルパーに施設への入居を頼んでいた。

 「お邪魔しま~す。」

そこへ邪義が入ってきた。

「じゃあ。」

「宜しくお願いします。」

ヘルパーは邪義の横をすり抜け出て行った。

「如何したの?」

「いいえ!何も。嬉しい、着てくれて。」

邪義はまだ諦めて居なかった。

【如何説得しよう?】

話題を変え、ネタを変え。話を切り出すタイミングを探っていた。

「邪義‼桜媛をお願い‼」

兎媛の眼は危機感漂い、凄い眼圧で邪義を威圧した。

「お・ね・が・い・‼」

邪義は無理なのを悟った。

小さく頷いた。

【負けた。】

邪義の心に吹いた風だった。

 「お姉ちゃん!邪義と夫婦になって。」

桜媛に兎媛は迫った。

「兎媛!気付いてるよ。お姉ちゃんの気持ち。」

桜媛は普段、心を詠まれない様気を配って居たが、こればかりはダメだった。

「え?何を?」

言葉にも動揺が滲んでいた。

「お姉ちゃん。桜媛!私は施設へ入所します。今までありがとう。自由になって。」

桜媛の眼からは涙が溢れていた。これまで肩ひじを張り、支えてきた全てが崩れたからだ。

「う・う・う~。」

嗚咽しその場に崩れた。

「ね?私の最初で最後の我が儘!聞いてくれるよね?」

桜媛は何もできなかった。

部屋に桜媛の嗚咽の響きが木霊した。


 泳宮の池の畔に二人の姿があった。

「兎媛の心が強くって・・・」

「解ってる。」

邪義は思い詰め、池を見つめていた。

「ごめん。一旦帰る。」

邪義は桜媛を見つめ言い放った。

「え?何所へ?私達を捨てるの?」

邪義は無言で首を振った。

「俺は大蛇の子。弟媛と大蛇の末裔。」

言い終わるや否や、邪義の身体は大蛇となり、池の鯉達と供に天へ昇って消えてしまった。

 桜媛は自身の無力を感じながら天を仰ぎ邪義を見送った。

 桜媛は同時に二つの大切な者を失った。

一人は兎媛!

もう一人は邪義‼

 【あの時と同じね。】

桜媛は両親を失った時に思いを馳せていた。アパートで一人寂しく泣いた。


 七夕の夜、快晴だった。

桜媛は少し一人に慣れてきていた。

天の川のくっきり見える闇夜の晩。

空から一筋の光が部屋の窓から差し込んだ。

部屋の中が光でいきなり埋め尽くされた。

桜媛はその眩しさに眼を閉じた。

「ただいま。」

桜媛は眩しさに諍いながら眼を少しずつ開けた。

「ええ?」

言葉と供に抱き付いた。

「待たせてごめん。」

邪義だった。

「もう。」

桜媛は号泣しながら、抱き付いた。

邪義の胸を拳で何度も叩き続けた。

「痛いよ。」

優しく呟いた。

「お帰り。」

桜媛は邪義の胸で涙を拭った。

「化け物だけど良いの?」

「ええ。」

涙を拭った顔を上げ、満面の笑みで邪義の気持ちを迎え入れた。


 二人は一ヶ月新婚気分を味わった。

「明日行こう。」

「ええ。」

桜媛は邪義の言葉に返した。


 兎媛は施設に来てから、常に夜空を見上げていた。

 七夕の日も、アパートの方へ光が射した事も、しかしそれは二人にしか見えて居なかった。

 「久し振り。」

桜媛だった。

「一人?」

桜媛は微笑み首を振った。

「元気?」

邪義だった。

指にはお揃いの指輪がはめられていた。

【良かった。】

兎媛は目敏くそれを捉えていた。

「さ~あて!」

邪義は兎媛を抱きかかえ車椅子へ移した。

「ええ?」

兎媛は戸惑った。

「帰るはよ!」

桜媛は兎媛に肩を叩きながら促した。

兎媛は二人の顔を交互に見て、

「ええ?ダメよ・・・・・・・。」

邪義は兎媛の唇を指で封印した。

「良いのさ。」

邪義は車椅子を外へと導いた。

「荷物は伝えた通りにお願いします。」

施設の人に伝え桜媛も後を追った。

 外には大きな車椅子も乗れる車が停まっていた。

「これは?」

「準備したのさ。家族の為に。」

 三人は家へ向かった。

「ここは?」

「我が家さ。」

邪義は兎媛を家へ招き入れた。

 そこは完璧なバリアフリーで兎媛の部屋も用意されていた。

「う・う~ぅ。」

兎媛の言葉にならない感激に二人は笑顔で返した。

 夕食時、

「これ。」

邪義は指輪のケースを取り出した。

兎媛は桜媛の顔を見た。桜媛は頷く。

邪義は兎媛の横に行き指輪をはめた。

「お帰り。」

二人の声が重なった。


 近隣では噂が立った。

「両手に花。下衆め!」

三人は気にしなかった。

確かに地域の美女二人を同時にせしめた邪義には良からぬ視線が常に注がれていた。

 しかし、それに臆する事も無く堂々と振舞っていた。

 そして、月日は流れた。

「できたわ。」

「おめでとう。お姉ちゃん。」

邪義と桜媛の待望の子供だった。

「元気な子なら、それだけで良い。」

邪義は二人に言った。

 桜媛は兎媛の部屋と邪義との部屋にベッドがあった。兎媛の部屋にはアパートと同じ様に並べられたベッドが鎮座していた。

桜媛は交互に、時には少し邪義との時間が多いが、平等に代わる代わる寝室を変えていた。

 

『おぎゃ~ァ』


漸くの誕生だった。


八坂入彦命と姫之命の血を引きし、系譜・継承、が途切れる事無く引き継がれた。


大蛇と兎に見守られながら、この子の未来に繁栄あれ。


まだまだ駄作しか描けません

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