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最近イイ感じだった雨宮さんが急に冷たくなった  作者: 大月 津美姫
雨宮さんが急に冷たくなった
9/30

9 目立つのは御免だ

「おい! 奏汰!! 雨宮さんと別れたんだって? 何があったんだよ!?」


 昼休み。いつものように購買のパンを買いに廊下を出ると、待ち構えていた大地が食い気味に詰め寄ってきた。


「…………何で知ってんだよ」


 前回といい今回といい、大地の情報の早さには脱帽する。


「学校中が大騒ぎだからに決まってんだろ!! お前たちが最近仲良さそうなのは、殆どのヤツが知ってたけど、雨宮さんとお前が付き合ってたことは新事実だ! それ自体が衝撃のニュースなんだからな!?」

「学校中は大げさじゃねぇか?」

「そんなことねぇぞ? 一時限目が終わった途端、お前のクラスのヤツが駆け込んで来て、そこからあっという間だ!」

「まぁ、彼女は人気だしな」

「いや、お前もだよ!!」

「んなワケねぇだろ……」


 だったら何で紗蘭以外の女子は俺に話しかけてすらくれねぇんだよ?


 ぐっ、と辛い気持ちを押し込める。

 大地と話していると、あっという間に購買の前に着いた。今日も並んでカツサンドを買おうとすると、俺に気付いた生徒たちが振り返って、サッと何故か横に除けた。

 俺の前だけ列が無くなって、まるで道ができたみたいになっている。


「えーっと……?」


 男女関係なく、俺を見て何やらコソコソ話が成される。


 なんだコレ。俺、めちゃくちゃ腫れ物扱いされてねぇか!?


「次の方ー?」


 購買の店員が不思議そうに俺を呼ぶ。


「あ、あぁ……」


 あまり考えないようにしていたが、なんか一気に悲しくなってきた。お陰で食欲も失せた。俺はカツサンドではなく、たまごサンドを選んで購買の人混みの中を抜ける。


「奏汰がたまごサンドとか珍しいな」

「大地、俺明日から朝コンビニ寄るわ」


 言えば、先程の光景を見ていた大地が苦笑いする。


「メンタル削られてんな」

「あんなにコソコソ噂されて目立つのは御免だ」

「だよなぁ。でも、昼飯は今まで通り一緒に食おうな!」


 大地に「おう」と返事をして俺たちはいつも食事している中庭へやって来た。ベンチに腰掛けてたまごサンドを食べながら、「それで?」と尋ねてくる大地にクリスマスデートから今日までの経緯を話す。


「確かに、雨宮さんが別れたがる理由がよくわかんねぇよなー」


 首をひねる大地に「だろ?」と同調する。


「お前、無意識のうちに何かやらかしたんじゃねぇの?」

「いや、そんなことねぇよ!」


 うん。思い返す限り何も無いハズだ!!


 だが、大地は「本当かぁ~?」と疑いの目を向けてくる。


「例えば、何か彼女にとって嫌な言葉を口走ったとか」

「それはない」


 ……と、信じたい。

 だが、何か不愉快な気分になることを口走ったのだろうか? と段々不安にもなる。


「んー、じゃあ、そのトラックから助けた時に体臭が気になったとか?」

「体臭!?」

「割と生理的にムリって女子はいるぞ?」


 言われて、くんくんと俺は自身の匂いを嗅いでみる。だが、何も匂いはしない。寧ろ柔軟剤の香りがふんわりと鼻を抜けていく。

 そんな俺を見て大地がクククッと笑った。


「いや、自分で分かったら苦労しねぇよ。そういうのは自分じゃ分かんねぇモンなんだよ」

「そうなのか?」

「おう。俺なんて部活して家に帰った瞬間に姉貴が『汗臭い!』って、煩ぇんだよ。確かに自分で嗅いでみたら汗臭いけど、俺がリビングに入ってきただけでその反応なんだぜ?」

「へ、へぇー……」


 女子には匂いに敏感な人がいるらしい。

 まぁ、確かに良い匂いがするに越したことはないか。髪型とかは気を使っていたが、匂いはあまり気にしてなかったな。


「モテるお前なら、そういうのは気にしてると思ってたワ」

「いや、俺はモテてねぇし、寧ろモテたいんだが。つーか、それを言うならお前のがモテるだろうが。いっつも男女問わず周りに人が寄ってんだろ」


 明るい性格の大地は所謂学年の人気者だ。そんな人気者が親友で俺は鼻が高いよ。


「ま、そういう事にしといてやるよ」


 大地は食べかけのハムカツサンドを口に放った。


「兎に角だ。今日の放課後、雨宮さんとちゃんと話せ。それでお前に非があるようなら謝って仲直りしろよ? 俺はお前たち結構お似合いだと思ってるし、これでも応援してるんだぜ?」


 俺を元気づけるように大地がニッと笑う。


 ホント、いいヤツだ。


「おう、頑張るわ」


 親友に答えて、俺もたまごサンドの残りを食べ切った。

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