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最近イイ感じだった雨宮さんが急に冷たくなった  作者: 大月 津美姫
雨宮さんが急に冷たくなった
17/30

17 紗蘭を知りたい

 中庭から自分のクラスに辿り着くと、篠田さんと机を合わせている雨宮さんの姿があった。


「雨宮さん!」


 声をかけるとビクッと彼女の肩が揺れる。


「……なに?」


 短く尋ねられた言葉に一瞬気持ちが萎みかけたが、俺は勢いに任せて話し出す。


「どうしても雨宮さんに聞きたいんだ! 俺と別れたくなった理由。雨宮さんは何も無いって言ったけど、本当はあるだろ?」

「無いよ」


 やはり彼女からは短い答えが返ってくる。


「じゃあ、どうして雨宮さんはこの間、泣いたんだよ? どうして別れた俺との何でも無い会話を覚えてたんだ? 俺の名前、呼んでくれたのは? 頼む!! 俺は雨宮さんのこと知りたい。分かりたいんだ!!」


 俺が言えば、後ろから着いてきていた綾奈が口を開く。


「雨宮さん、奏汰の幼なじみとして私からもお願い! 奏汰は本気で雨宮さんが今も好きなの。だから、奏汰が納得するためにも、答えてくれないかな?」

「俺からも頼む!」


 大地までもが雨宮さんにそう願い出た。


「お前ら……」


 俺は良い親友と幼なじみに恵まれているらしい。その事にジーンと感動していると、俯いて黙っていた雨宮さんが俺を見た。



「……分かった。……ここじゃ目立つから、場所を変えていい?」


 言われて周りを見ると、クラス中の視線が俺たちに注がれていた。


 あ、やっちまったワ……


 先程まで情け無い言葉を並べまくっていた俺は一気に羞恥心が込み上げてくる。だけど不思議と後悔はしていなかった。そして、俺たちは人通りの少ない空き教室に移動した。



「…………今から話す事は、全部本当にあったことだよ。……でも、きっと信じてもらえないと思う」


 雨宮さんが何処か遠い目でそう切り出した。


「どういう意味だ?」

「そのままの意味だよ。って言っても、私もどうしてそんな事になったのか良く分からないけど……」


 呟いて彼女は暗い顔で俯いた。


「私、一度死んでるの」


 その一言で一瞬、シーンと辺りが静まり返る。


 少しの間をおいて、「は?」と俺と大地、そして「えっ?」と綾奈と篠田さんの驚きの声が重なる。


 雨宮さんが死んでる? だが彼女は確かに今ここに、俺の目の前にいる。


「今から1ヶ月後の終業式前のことだよ。それで、気が付いたら私はクリスマスの日に戻っていたの」


 今から1ヶ月後!? それって未来ってことか??


「ちょっ、ちょっと待ってくれ!! は? え? 意味分かんねぇ。第一、それって俺らが別れた理由と関係あるのか?」


 思わず雨宮さんの声を遮る。


「じゃあ、聞くの止める? 私はそっちの方が良いかな。……そこの大地くんとミホちゃんはともかく、荒木くんと横山さんに話すのは正直、怖いから」


「えっ?」と綾奈が声を漏らす。


 俺だけじゃなくて、綾奈も何か関係があるのか?


「話を止めてごめん。ちゃんと聞くから、続けてくれ」


 俺がそう答えると、彼女は自身が体験した出来事を順を追って話し始めた。

いつも読んでくださり、ありがとうございます!

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次回から暫く雨宮さん視点です。

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