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貴公子は過保護ぶりを発揮する・4

「問題があるとするなら、兄とタイアンも同じように術をかけやすくなる事か。コレにふたりを近づけるな」


 そんな機会があるとも思えませんが。と思うロバートは、冗談ではないとわかるエドモンドの顔つきを前にして黙った。


「本来ならばお互いの肌ができるかぎり広範囲に触れることが望ましいが、まだ子供だからこれでも可能だろう」


 エドモンドは自分の着るシャツのボタンを腹の辺りをまで外し、さらした胸にリリーの頬を寄せると、再びバスローブ下に手を差し入れた。


 そのように抱いては、ほぼ脱いでいるのと変わらないのでは。ロバートは若く引き締まった体つきの主ごとリリーを眺めた。


 諌める気持ちはない。「裏口を作る」という時点で既に行きすぎているのだ。ここだけ咎めても仕方がない。


「済んだら、コーヒーを濃くいれてくれ」


 ここではコーヒーを飲まないと仰ったので、豆がございません。

 などということはもちろん無い。いつ気の変わるかわからないエドモンドの為に、常に準備しておくのが家令ロバートの務め。




「お前の言うように、髪を引っ張られたくらいでは泣かないのだな。それはなかなかに立派だが、次からは正論を吐かずすぐに逃げろ。妬みなど正面から受け止める必要はない」


 耳に心地よく響く語りかけの相手は眠る子供だ。

若き主の異能は「裏口」を作りながら言い聞かせることも可能なのだろうか。


「悪いようにはしない、受け入れろ。大切に思っている――ロバートも私も」



 これはまだしばらく続くのだろう。コーヒーを淹れるには早すぎる。


 ならば主人の指示がなくとも気を利かせて、別方向から対処するのが「出来る家令」というもの。ある程度の差配は立場上許されている。

 主の不満の元は、目に入らぬ位置まで遠ざけねばなるまい。それは職務の範疇だ。



「よく眠り、目覚めたら気持ちも軽くなる」

「あまり心配をかけるな。過保護になる――ロバートが」


 これも術の一部なのだろう、よくわからないが。

抑揚をおさえ同じ調子でリリーに話しかけるエドモンドに一礼したロバートは、階下にいる馭者の元へと向かった。



 馭者は平民出身で、あまり環境がよいとは言えない地域の出身だ。特に目立つわけでもないのに「有能だ」と見極めたエドモンドが護衛のうちから引き抜き、主に私的な用事において馭者を任せている。


「有事にはこれ一人で二人分の働きをする」と高い評価を与えるエドモンドに彼が恩義を感じているのは、ロバートの目にも明らかだ。


 リリーに対し好意的な姿勢を示している上に、空いた時間に自主的に様子を見てくる配慮もある。

当初は距離をおいていたロバートも、今ではある程度仕事を任せるほどになっていた。



 ベスとその父親のことなら、彼が適している。

歩く間に考えをまとめたロバートは、今のところ馭者しか使っていない使用人部屋の扉をノックした。



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