遠い国から来た友人・7
おじ様だ、こんな魔法を使うのはおじ様しかいない。
「さすが侯爵家、急なもてなしもお手の物だね」
イグレシアスの誉め言葉を受けて、ジャスパーの表情が微妙なものに変わる。
――それはそう、イグレシアス「殿下」から見ればグレイ家は格下、「さすが」は嫌味に取れなくもない。なにより、準備したのはおじ様だもの。
真実を語ることのできないジャスパーに、リリーは同情を寄せた。
食べ始めたら夕日を見るのはすっかり忘れ、いつの間にか日は落ちていた。
庭においたテーブルには、男の子に人気のある料理が乗りきらないほどたくさん。リリーもカミラも好きな庶民的な味ばかり。
「いいわぁ、何もしなくてこんなに色々食べられるって、なんてありがたいの」
繰り返し感激しているところをみると、自宅ではスコットのお母さんと一緒に料理をしているのだろう。
「残ったら持って帰りましょうよ」
リリーの現実的な提案に、カミラが大きく頷いた。
食べて飲んでいい感じにできあがったスコットが「帰りたくな――い」と海に向かって叫ぶ。
「泊まろうと思えば、たぶん泊まれるんじゃないかな」
リリーが口にすると「 なに言ってるの? 砂浜で寝るつもり?」という顔をされたけれど、別荘の鍵は開いているはず。
寒くも暑くもない今日なら、寝るのに支障はない。朝起きれば、あら不思議。魔法による朝食が並んでいるに違いない。
「残念ながら私は朝から仕事ですので、今夜のうちに全員戻りますよ」
誰の馬車で来たか忘れていませんよね? とジャスパーが圧をかける。
一気にしょげるスコット。
「とても楽しいから、私もスコットに賛成してしまうわ」
カミラがしんみりとする。
「私も! 私も帰りたくな――いっ」
スコットの真似をするリリー。
「カミラ、愛してる――」
「恥ずかしい! やめて、酔っぱらい」
海に向かって愛を叫ぶスコットに、嫌そうにするカミラを皆でひとしきり笑う。
「次は僕かな」
お酒で喉を潤すイグレシアスは、どこまで本気?
「やめてください。公子まで」
止めるジャスパーは、どこまでも本気。
「さすがに愛は叫ばないよ――叫びたくても」
ジャスパーの諫める視線を受けて、イグレシアスが軽く首を横に振る。
「冗談だよ」
「……あまり遅くならないうちに帰りましょう」
「私の身が持ちません」と聞こえたような気がする、これは心の声。リリーがジャスパーの様子を窺えば「誰のせいだと思っているのです」と苦情が届くような。
「誰のせいなの?」と目配せで問い返しても、返事はなかった。




