表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

527/560

遠い国から来た友人・4

「砂場じゃなくて砂浜だね」


 海を前にして明るく笑うイグレシアスとは逆に、ジャスパーは少しお疲れ気味。




 グレイ家の馬車は四人乗りなのに、無理やり五人乗ってこの浜辺まで来た。

「座席が狭い」

リリーがスコットと騒いでいると、公子が「僕の膝にのる?」と提案した。


 いい考えだとリリーが頷くより先に「それならスコットがカミラを乗せるべきでしょう」と、ジャスパーが横口をいれる。



 結局リリーとカミラとスコットがぎゅう詰めで並び、向かいにジャスパーと公子が座った。


 馬車のなかなら、何を話しても大丈夫。イグレシアスが「猫を飼いはじめた」と言い、ジャスパーが「名前が、まさかアイアだなどということは……」と尋ねる。


「ちょっと本気でつけかけたけど」

「本気で!?」


 目を丸くするリリーにウインクを投げるから、これは冗談なのだろう。


「グリスにした。瞳が緑がかった灰色なんだ。ずっと見ていたくても、暖炉の前に来るとすぐ閉じちゃってね。撫でさせてはくれるんだけど」

「誰かさんみたい」

「カミラ、それもう私って言ってる」


 カミラとじゃれてうふうふしていると、ジャスパーが「息苦しくありませんか」と小窓を開けるのすら、面白い。




 馭者はリリーの示した道を走り、夕日が落ちる前に海岸へと着いた。


「わあ、素敵」


 まさか海に来られるなんて思わなかったと、カミラが嬉しそうにする。


「ね、今日はお天気がいいから絶対にキレイだと思ったの」

リリーの鼻が得意げにピクリとする。


「裸足になってもいい?」

ジャスパーに許可を得る。


「どうして私に聞くのです」


 嫌そうに、本当に嫌そうにジャスパーが返すけれど、それでめげるリリーじゃない。


「なんとなく?」

「――止めても、脱ぐのでしょう」


 やり取りを黙って聞いていたイグレシアスが。

「相変わらず仲がいいね。職場も一緒なの?」



 ジャスパーはなんと答えるのか。スコットとカミラは手を繋いで、少し離れたところをいい雰囲気で散策している。

 そう言えば吸い付き魔だったスコットは今はどうなのだろう、改善されたのか。



 そんなことを考えながら、こちらへ背中を向けていてくれる紳士方のご厚意に感謝しつつ、リリーはゴソゴソと靴下をベルトから外して裸足になった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ