表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

526/560

遠い国から来た友人・3

「公子!!」


 カミラと話していたテンションのままリリーが飛びつく。


 イグレシアスは口では「おっと」と言いながら、少しの危なげもなく抱きとめた。


「久しぶりだね、アイアゲートさん。会いたかった」

「私も! 私もです、公子。みんなと一緒の『アイア』でいいのに」


 もう一度ぎゅっとしてから「さん」はいらないと伝えて、公子の顔を見る。

リリーを見つめるイグレシアス。大きな笑みはあの頃のままに、精悍さが増していた。



 いつの間にか椅子の背に手をかけたジャスパーが、落ち着いた声を出す。


「ひとまず座りませんか」


 そうでした、ここでわいわいしていては昼餐会が始まらない。

公子に「どうぞ」とすると「いや、その席に座るのは君でしょう」と笑われる。

リリーは久しぶりの再会に舞い上がっていると自覚した。




 カミラもスコットもそしてジャスパーも、お互いの近況を口にしない。イグレシアス公子への配慮だ。どこで誰が聞いているか分からない。


 それでも会話ははずみ「ジャスパーとこんな風に会えるなんて」とスコットは繰り返した。 


「私も皆とかわりませんが」

ジャスパーが苦笑する。


 身分差はもちろんだけれど、卒業と同時に結婚したジャスパーには妻子がいる。スコットは、妻子が領地にいてジャスパーは公都邸にひとりだなんて知らないから、余計に「なかなか会えない」と思うのだろうと、リリーは分析した。



 坊ちゃまは王国訪問中なので、帰りを急ぐ必要がない。せっかく会えたのに、このまま別れるのは惜しい。リリーは目をくりんとさせた。


「ジャスパー、この後の予定は?」

「特に何も」


 ジャスパーが慎重な口ぶりで返す。リリーは食後のお茶を飲んでいる公子に視線を移した。


「公子は?」

「晩は会食も入れていないから、宿の近くを見て回るくらいかな」


よし。

「カミラとスコットは暇でしょ? 」

勝手に決めつける。


「ひどいよ、アイア」これはスコット。

「ヒマよ」これはカミラ。


それじゃ、決まり。うふふと笑いながら誘う。


「ねえ、みんなで遊びに行こう」

「どこに」


警戒心丸だしで聞くのはもちろんジャスパー。


「砂場」


みんなのポカンとした顔が珍しい。


「この季節なら、砂場が最高よ」

リリーは自信たっぷりに告げた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 更新をありがとうございます! 懐かしの子羊  「呼んだぁ〜?」  「あそぶ!?」  「・・・たぶん よばれてはいない かな」  「ぇ゙ぇ゙ぇぇ〜」  「ぼくら 増えすぎちゃったからなー」 …
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ