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名乗り出た父・1

 リリーの滞在する街なかの屋敷に、ある日ひとりの男が訪ねて来た。

リリアンが幼い頃に生き別れた父だった。


 対応に出たのはエリック。リリアン自体が架空の人物であるから、父親が存在するはずはない。

が、一応玄関先で待たせ、エリックはリリーに相談をした。


 在宅していたリリーには驚く様子もない。不思議に思って問えば「聖人認定されてすぐのお勉強会で『聖人になると今までいなかった親戚が増えます』って言われた」と冷静に答えた。


 それにしても遠い親戚ならまだしも、普通父親は増えないだろうと思うエリックと違い「父親が出てくるのは想定済み」とリリーは口にした。


「母とは死別、父とは幼い頃に生き別れ」と、本部から派遣された調査員に伝えたから、少なくない人が知っているという。



「どうする? リリー」

「私は会わない方がいいと思うの。エリックに任せるわ。今後も『父親』が出てくるかもしれない」


ついでのように言い添える。

「おじ様にはお知らせしないで。お忙しいのに、こんな些細な事を気にかけてもらうのは申し訳ないもの。エリックと私で片付くことは言わなくていいと思うの」





「リリアンは父の顔を覚えていませんが、僕は同じ村の出身で、おじさんの顔を覚えています。失礼ながら、あなたより歳もかなり若いはずです。お気の毒ですが、お探しの娘さんはリリアン聖女とは別の方です」


 はっきりと告げるエリックに、盛大な舌打ちをして男は足音高く帰って行った。


 階段の上でこっそりと聞いていたらしいリリーの気配がする。暴れたら手助けしてくれるつもりだったと思うが、エリックはそれなりに腕に自信があった。

 喧嘩慣れはしていないが、喧嘩自慢は体力にモノを言わせて振り回すばかりの輩が多い。確実に避け続け、疲れたところで仕留めるのが勝つ秘訣。


 エドモンド様やオーツ様のような異能持ちには敵わないが、そうそういるものではない。

 父に勝てるのは、今のところそこだけだと、エリックは玄関扉に鍵をかけた。









 リリーに口止めされても、上役でもある父ロバートにはすぐに報告した。聞いて難しい顔つきに変わったが、よく対応したと珍しく誉められた。


「リリーは、どうして父さんに知らせたくなかったのかが、僕には分からないんだけど」

「私にも分かりかねますが、両親の話題はあまり気がすすまないご様子ですから、エドモンド様のお耳に入れたくなかったのでは」


 少しでも変わったことがあればすぐに知らせを。言われてエリックは「はい」と答えた。


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