貴公子は「人形」を部屋に持ち込む・5
リリーの意を決した告白にロバートは驚きつつも顔には出さない。
「さようでございますか」
「坊ちゃまは、優しいから好き」
照れたように口にしピンク色の頬をさらに色づかせたリリーが、恥ずかしさに耐えきれない様子でぎゅうぎゅうとロバートの肩に額を押しつける。
押され負けそうになりロバートはリリーの背中に手を回した。男の子より華奢で、細くても柔らかい。
「坊ちゃまに、そう言って差し上げては?」
ロバートが優しく勧めるのに、額をつけたままリリーが首を横にふる。
「言って差し上げないのですか。きっとお喜びになりますよ」
「……言わない」
小さな声が返る。
「どうして」
分かっているのに聞く大人の自分は意地が悪いと思いながらも、ロバートは聞かずにはいられない。
「……はずかしいから」
照れていると全身から伝わってくるリリーを抱きなおす。かわいくて仕方ない。
ロバートは水音の止んだ浴室にちらりと目をやった。主の入浴の手順や流れは把握している。
とうに出てきてよい筈なのにドアが開かないのは、このやり取りが耳に入って出られないせいだ。
寄せられた無垢な好意にエドモンドはどんな顔をしているだろうか。
ロバートは上がる口角を自覚した。
入浴を済ませ、カナッペをつまみ、温かいミルクに砂糖を入れてもらい飲んだリリーは、暖炉近くいつものようにエドモンドの膝の上で眠っている。
今日は背中をあずける形ではなく、長い脚を投げ出して床に座るエドモンドに抱っこされた状態だ。
エドモンドの脚を枕にして丸まって寝ていたリリーを慎重な手つきで抱き上げ、膝に乗せるのを目にして、ロバートは会話が主に一から聞こえていたのだと確信した。
「ロバート」
それこそ人形を抱くようにしたエドモンドが呼ぶ。
「はい、エドモンド様」
「コレに優しくしてやった覚えはないが、私のことを優しいと言うのなら、コレにはずっと優しくしてやろうと決めた」
なぜかしみじみと口にするエドモンド。
「抱いていると温かくて心地よい」
「子供とはそういうものでございます。癒されると申しますか。子供はすぐに大きくなってしまいます。エドモンド様がお嬢さんに遊んでもらえるのも今のうちでございますよ。少し大きくなりますと、友達を優先するようになりますから」
エリックを思い浮かべて語るロバートに、エドモンドが嫌みなく笑う。
「お前の経験か」
「さようでございます」
「私が遊んでやっているのではなく、これに遊んでもらっていると言うのか」
エドモンドはいかにも心外という目付きだ。




