王子様にお茶に誘われたなら・2
「ならば、よいのだ。うむ」
応接メイドが丁寧にお茶を淹れてくれる。テーブルには色の美しいお菓子が沢山並び、どれも一口大だ。王家のお口は上品にできているのだろう。
これはいくらでも食べちゃう。いくつまでは「もっと食べてもいいですか?」と聞かずに食べていいのか、と悩むリリーに。
「好きなものを好きなだけ取るがよい」
ユーグ殿下はお心の広さをみせた。
よくお菓子を手土産として下さったけれど、お茶にお招きいただくのは初めて。マナーの心配はあるものの、田舎娘に期待はしないはずだと、都合よく考えることにした。
お茶の産地など教えてもらいながら和やかに過ごし、リリーが油断したころ。
「エドモンド殿下より、そなたを娶りたいと内々に打診があったが……存じておるか」
全然関係のない話題を、さも自然な流れのように組み込むのは、止めて欲しい。
喉がお菓子を押し戻しそうになるところを、ナプキンで口元を隠して咀嚼する。ちゃんと飲み込んでから、リリーは口を開いた。
「知っているような……いないような……」
ユーグ殿下から歯切れの悪さを問いたげな気配がする。
「広間でひと目見た瞬間に恋に落ちた、と聞いたが」
それは初耳。言わない、坊ちゃまは断じてそんな事は言わないと思う。公国語で話したのを王国語に訳すと、そうなるのか。
殿下の考え違いを正したいけれど、坊ちゃまについて公国へ帰るのが使命なら、この誤解はそのままでいいのかもしれない。
黙り込むリリーをどう取ったのか、ユーグ殿下が質問を変えた。
「そなたエドモンド殿下の、どういったところを好いておるのか」
それなら。
「お顔」
リリーは即答した。坊ちゃまよりキレイな人は見たことがない。誰にとっても納得の答えだと自信を持って言える。
「――他には」
ほか。考えるリリーの耳に「そこは悩むのだな」とボソリと聞こえる。
「優しいところ」と言いたいけれど、夜会の初対面で優しさなどどうしてわかる? と言われたら、何も返せない。坊ちゃまと私は、あの夜初めて出会ったのだから。
「私のことを可愛がってくれそうなとこ」
ユーグ殿下の顔には「呆れた」と書いてある。どうやら、この答えは外したらしい。
「では、そなたは私のどこが好きなのだ」
良いところ探し。子供の頃にはそうやって遊んだけれど、久しくそんなのしていない。興味津々で待つ、意外に子供っぽい王子様にリリーは慎重に答えた。
「他の人には着こなせない派手なお色の服がお似合いになるとこ」
微妙な表情に変わる殿下は、一体なんと言われたかったのだろう。「他には」と聞く。
「美味しいお菓子をたくさん知っていて、くださるところ」
これもすごく美味しいと、小さな焼き菓子を口に入れる。眺めていたユーグ殿下がまた質問した。
「では、エドモンド殿下は、そなたのどこを気に入ったと考える?」




