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綺麗なものには唇を寄せると知る貴公子・2

「……もう一度してみろ」

エドモンドがリリーの手を握り書かせようとする。左側に来たエドモンドの右頬に、横を向いてリリーが「ちゅ」と唇をあてた。


 その状態のままエドモンドがリリーを見、焦点が合わないのではないかと思うほどの至近距離でお互いが瞳を覗き込んでいる。


 先に耐えきれなくなったらしいエドモンドが身を起こした。

「急にどうした」

「坊ちゃまがキレイでいい匂いがするから」


 エドモンドの問いにリリーが答えるのに、何とも言えない空気が流れる。伝わらないと気がついたリリーが続ける。


「キレイなものといい匂いのものには、キスするでしょう」


何かを察したらしいエドモンドが逆に尋ねる。

「お前はいつも『キレイ』だとか『いい匂い』と言われて、頬にキスをされるのだな」


リリーが頷いてふわりと笑う。


「――されるのもどうかと思うが。自分から人にするのは感心しない」


顔をしかめるエドモンドに、リリーがしょげる。

「坊ちゃま、イヤだった? ごめんなさい」


「嫌ではない。他の男にするなと言っているのだ。お前は顔がかわいいのだから、どこででもそんな事をしていては拐われてしまうぞ」

「ええ!? それは困る」

「だろう」


分かったか、とエドモンドが頷く。

「でも坊ちゃまみたいにキレイな人はいないから、他ですることもないわ」


リリーが真っ直ぐにエドモンドを見上げて、そう口にする。



 無言のままエドモンドの指がリリーの下唇をぷにっと摘まんだ。そのままめくったりなどして感触を楽しむように指先を遊ばせている。


そろそろだろうか、と声を掛ける機会をはかるロバート。


「お前の唇は柔らかすぎて、当たったかどうかもわからん。もう一度してみろ」


素直にうなずいたリリーは寄せられた頬に、唇を触れさせた。


顔を離して聞く。「どう?」

「ペタ、という感じか」

「ぺたっ? わかんない」


 呟くリリーに「こんな感じだ」言ってエドモンドが、自分の唇をリリーの頬に軽くあてた。


「指?」リリーが首をかしげる。

「指はこうだ」「唇はこう」エドモンドが人差し指と唇を交互にリリーの頬に押しつけている。


「ちょっと違うかもくらい」自信なさげにリリーが返す。


「私の唇よりお前の頬のほうが柔らかいな」

エドモンドが親指で唇をなぞるのを、リリーはじっとエドモンドを見上げて待っている。


 王国では親しい友人同士でも頬へのキスを何度も交わす。相手が子供ならば親類は唇にすることも。

おかしくは、ない。ロバートは自分に言い聞かせた。


「坊ちゃま、気持ちいい?」

されるがまままのリリーがエドモンドに聞いている。

「手触りが良い。つい潰してしまいたくなる」

エドモンドの指はまだリリーの唇を離さない。

「好きなだけ触っていいわ」


 ロバートはここで介入することにした。

主人の好きにさせていては、リリーの唇が腫れ上がってしまいそうだ。

「お二人とも、お茶の準備が整いましてございます」



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