困惑を呼ぶ贈り物・2
リリーはカードを受け取ろうとしない。
「ユーグ殿下は、現国王のご子息。そのような貴い方が、いつどこでお嬢さんを?」
ロバートがひたりと見つめれば、リリーは落ち着かない様子になって頬に指先を添えた。
「ええっと、皆様に贈っていらっしゃるんじゃないかしら。私だけとは――」
「いいえ。この靴の裏に押印がありますが、これは先日お嬢さんが履いてお戻りになった靴に入っていたのと同じもの」
貰ったのが私だけとは限らない、と最後まで言わせずにロバートは指摘した。
「そしてカードには『あの夜に間に合わせる事ができなかった詫びに。このうちに気に入る物がある事を願っている』と記され、署名入でございます。ユーグ・ベルナール、と」
カードに手を伸ばそうとしないので、かわりにロバートが読み上げた。「これでも言い逃れができますか」と、詰め寄る気持ちで突きつけると。
「ごめんなさい! おじ様!」
リリーが、いきなり抱きついた。
「こんなことになると思わなかったの! 言わなくても大丈夫だと思ったの。ごめんなさい、ごめんなさい、おじ様」
懸命に言い訳をするのは子供の頃そのままで、ぎゅうぎゅうと頭を押し付けられると、ロバートの内に「仕方がない」という気分がうまれる。
「敷石でヒールを折ったのを、すぐ後ろで見てたのが殿下だったの。お気遣い下さって、靴屋さんを呼んでくれてミュールをもらったの。聖女候補とは名乗ったけど、お家の場所も言わなかったし次のお約束もしてないわ、本当よ」
ひと息に言い顔を上げようとしないのも、また可愛い。
「父さん、それでいいの?」とばかりに冷めた視線を投げかける息子を完全に無視して、ロバートは「怒ってはおりませんよ」と赤い髪を撫でた。
その言葉を信じないらしく、リリーはまだ「ごめんなさい」と繰り返す。
「お嬢さんが悪いわけではありません。少しきつく言い過ぎました。謝るのは私のほうです」
リリーからほっとした雰囲気が漂い、息子からは「甘すぎる……呆れ返った」とあからさまに伝える眼差しが注がれるが、済んだことを今更言っても始まらない。
ロバートは子供の頃のように、リリーの背中をトントンとした。ようやく安心したらしく、甘える気配がまた愛らしい。
緊急時以外、手紙のやり取りは最低限と決まっている。さてこれは緊急事態としてエドモンド様にお知らせすべきかどうか。
ロバートは頭を悩ませた。
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