貴公子は粛粛とゲームを進める・2
兄は自国の有力貴族の息女を妃にし、弟は異国の王女と婚約。では残る公国一の貴公子のお相手は、と話題になって久しい。
今の会話でエレノアは「宗教界から」もしくは「王国から」と理解したのだろう。
「そうではない」
エドモンドはエレノアが何も言わないうちから、否定した。
「詳しく話す気はないが。私は今、兄と父に腹を立てている。――他言は無用だ」
おっしゃらなくとも心得ておりますと、エレノアから表情だけで返される
「国を割るつもりは無い。軍の統率がとれている以上、実力行使は難しい。ならば他で影響力を強めたい。社交巧者のあなたなら、広告塔としての聖女に興味を持つ教派か聖職者、もしくは聖女を推す人物に心当たりはないか」
「……聖女派に限らず、聖女に興味があればよいとおっしゃる……」
エレノアが形の良い顎に指を添えた。
「公国派は保守的で大公家と一心同体ですものね。他の派は独自性が強いか、土着信仰と混ざりあっていて、殿下とはなじまない」
相づちは求めないが、一区切りごとに顔色を窺う。エドモンドは一切表情を変えなかった。
「隣国聖女派と繋がりがあるか。聖女は国教派にもいらっしゃるから、王国国教派でもかまわない。できれば双方に細くとも繋がりがあれば、それが一番ですわね?」
興味がないと明言しながら、充分な知識だ。そして。
「察しがいいな。私の求めるものは、まさにそれだ」
率直に感心したエドモンドに、エレノアがニコリとする。
「友人が土地の管理を一部任せているウーズナムという家がありまして。その土地で英知の使徒派が暮らしております」
英知の使徒教会といえば、女子修道院を持ち「最後の聖女」と呼ばれた修道女が所属した教派だ。
「まだ、活動しているのか。その会は」
「ええ。高名な聖女が世を去って久しく、御威光も薄れて寂れていると聞きましたけれど。もとは光っていたのなら、磨けば輝きは取り戻せるのでは?」
言葉が過ぎたかというように、エレノアがきゅっと口を結ぶ。
かまわないと、エドモンドは頷いた。
「で、そのウーズナムはどのような人物か」
面識はございませんので、お茶のついでに聞いた話ですが、と断ってエレノアが続ける。
「おかしなほどの聖女崇拝者で、教派はお構いなしだとか。『一人娘の婿には、聖女につらなる家の男子を』と長く熱心に働きかけているそうですわ」
つまり王国の聖女聖人に知己がいて、それなりの付き合いがある可能性が高い。しかも、公都では知られていない男ウーズナム。
「――面白い」




