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ポーションではなくトニックです・1

「お疲れさまの釘」は、オーツ先生の術をリリーが反転させて成立するもので、先生がいなくては作れない。中途半端に手元に残し、こちらの方には差し上げてあちらの方には無いでは、よろしくない。


 旅に出る先生に「リリアンの奇跡」を体現するものとして、託した。聞くだけより体感も伴った方が、強く印象に残るに決まっている。


 先生は聖女(候補)じゃないから、「リリアン聖女(候補)に頂いたありがたい釘」として配って、話題作りにしている内に使い切っても、作れなくて当たり前。怒る人はいないだろう。


 オーツ先生の奇術じみた手つきと口上で効果は何倍にもなりそうだ。




 リリーと一緒に領主館でお世話になっているエリックは、領主の代わりにこの館を管理している方と年代が親子ほども違うのに、とても気が合った。実際はエリックが完璧に合わせているのだけれど。


「この地を『聖女リリアン様覚醒の地』として人を呼び込もう。農閑期に近隣の村から骨休めに来てもらえば、賑わいがうまれる。それには是非リリアン様に聖女になってもらわなくては」


 と、夜毎男二人で盛り上がっている。清純派聖女(候補)リリアンとしては、酒豪ぶりを披露することもできず、残念な限りだ。



 用意のよいことに、エリックは「国教派本部へ土地の有力者が『聖人発見』を知らせる文書」の正式な書き方まで知っていた。知る人がほぼいないと思われるその書状を提出すると、国教派本部から調査員が現地を訪れる。


 通常では噂が流れるのに年単位、そこから国教派の調査員が来て報告をするのに半年、そして認定には早くて半年長ければ数年かかるらしい。

が、正確な書式で記した書状は一足飛びに調査員派遣へと繋がるらしい。


 ひとつ目の温泉を発見した時点で、何をどう掛け合ったのかリリーは知らないが、エリックが書状を書いてもらい確実に届くよう手配していたので、既にしかるべき方の手に渡っているはずだ。



 オーツ先生は調査員が通るであろう街道を、王都へ向けて旅している。調査員が温泉に近づけば近づくほど、聖女リリアンの名を聞くことになる。


 気掛かりは、今年の候補者に有望な人物がいるかどうか。過去にふたり同時に認定された事が無いわけではない。認定を「複数人」にするか、ひとり翌年にまわして「二年連続」にするかは、その時の会議の流れだろうと、オーツ先生は推測していた。


 聖女派が毎年必ずひとり認定するのに対し、国教派はこの数年該当者なしとしてきた。

「今年こそ」と思ってくれれば、急すぎる登場のリリアンにも勝機はある。



 でも。本当に聖女になって良いものか。

リリーは眉間に寄った皺に気がついて、指でのばした。


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― 新着の感想 ―
[一言] 更新をありがとうございます! リリアンの聖女への道!面白いです! オーツ先生は俺とか言って 頼れる男性に! いえ 元から頼れる男性なのですが 笑 (吟遊詩人の様に旅をするなら 女装に近い中…
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