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白いウサギは甘い苺の夢を見る・2

「犬ではなく兎を?」


 しばらくウサギの話題を続ける事にしたらしいエレノアが、さりげなくエドモンドの腕に触れながら尋ねる。


「はい。犬より手がかかりませんし。吠える事もなく、静かで大人しいものでございます」


 飼っているのは若き主人ではなくロバートだと言われた以上、答えるのはロバートだ。


「そういうものなの? でも懐かなくて、つまらないのじゃなくて? あまり利口そうでもないし」


 懐かなくは――ない。つまらくは――全くない。

利口は利口だが若き主人に言わせれば「教育に偏りがある」。


「何と比べるかによりましょうが。見ているだけで可愛らしく、息子もよく構っております」


 慎重に会話を運んでいたエレノアは、ここに来て納得したらしい。笑みを頬にのせた。


「子供は動物が好きですものね。一羽だけですの? それとも」


「増えれば手間もかかりますので、世話も行き届きませんし。家には一羽で充分だと思っております」


 エレノアの笑みが深まるのを目にしたロバートは、しばらく前の夜を思い出した。



 隠れ家へ向かい走る途中で、御者が馬車の小窓からロバートに伝えて来た。


「後ろから一台ついて来ております。大方だんな様のご友人だと思われますが、どういたしますか」


 会おうと思うなら、適当な場所で停めれば向こうも停まる。エドモンドに気がないのなら、一度宮へ戻るか撒くかだ。


 ロバートがエドモンドの指示を仰ぐと「お前の家へ立ち寄る」と。

その通りにしロバートが降り、後ろから来る馬車を注視する。


 速度を落とさずに通り過ぎて行く家紋付の馬車は、女伯爵エレノア・レクターのものと知れた。


今シーズン、エドモンドはエレノアとまだ同衾していない。別に誰か出来たかと疑うのも当然の事で。


 ただ、ロバートにはこの誇り高く割りきりの良いように見える淑女には、嫉妬などという感情は似つかわしくないように思える。



「エドモンド様、このまま外に出られないのでしたら、パーティーまではまだ時間がありますわ」


 いつの間にかエドモンドに絡めていた腕を胸に引き寄せて、上目遣いに口にする。艶も媚びも自在に操るところもまた彼女の強みだ。


「あなたの部屋へ行こう」


 意図を正しく理解したエドモンドに、向けられる嫣然とした笑み。普通の紳士ならば、その美しく濡れたような唇に目は釘付けだろう。


「適当なところで呼びに来い」


パーティーに間に合う時間に呼びに来いと言われ、ロバートは一礼した。



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