貴公子は紳士倶楽部で密談する・1
朝食の卓につくなりエドモンドはロバートを見た。
「何かあるなら、先に出せ」
「はい。報告書が届いております」
勘の良さは今更驚くことでもない。ロバートは開いた紙挟みをうやうやしく差し出した。
「面白い事でも見つかったか」
主は読むのも理解も早い。ロバートが答える前に、もう紙をめくる音がしてエドモンドの片眉が上がる。
「お望みにかないますでしょうか」
「期待以上だ。これだけ時間がかかったなら、裏は取れているな?」
書面から視線を外すことなく念を押されたが、当然不確かな情報をあげたりはしない。
「はい」とだけ答え「いかがなさいますか」と問う。
「朝からこれを見せるなら、お前に考えがあるのだろう」
口角の上がり具合から見て、主の機嫌はよい。
「今夜、侯は軍部の定例会に出席されます。そこから紳士倶楽部へ行かれるのが、いつもの流れでございます」
「私の今夜の予定は」
「出欠を保留にしたままのパーティーのみでございます。ここまで返答を致しておりませんので、先方もお運びはないと承知しておいでかと存じます」
ロバートの述べた見解に、エドモンドは納得の表情を見せた。
「報告書前半の写しを用意しろ。前半だけでいい。封はするな、その場で目を通してもらおう」
言葉を切って、続ける。
「思わぬ所に穴はあるものだな」
報告書の内容に同意を求められ、紅茶を注ぎながらロバートは深く頷いた。
格式を重んじる倶楽部から、振興富裕層も在籍する倶楽部まで、紳士倶楽部は公都にいくつもある。通常は会員しか入館できないが、セレスト家は別だ。どこも最上級の礼をもって迎えられる。
従業員から客まですべて男性ばかりで、例外はあるが女性は出入り禁止の紳士の社交場。密談にはピッタリの場所だ。
「服装はどのように」
「略装でいい。友好的にいきたいのに、あまり畏まっては逆効果だ」
友好的などと愉しげに言われても、ロバートには相手の怯える未来しか見えない。
エドモンドが軽い感じに付け加える。
「人のことに構うより、まずは自分の足元を固めろというよい教訓だ」
ほれぼれとするほどの微笑は、ロバートには脅迫めいてうつる。今夜の密談相手に少しばかり同情しながら、フルーツ皿を置いた。




