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貴公子は「聖女」と語る・1

 白く細い首を強調するように肩をぐっと落とし、腰を反らせて気取った様子で歩く。


「殿下、ごきげんよう。本日はようこそ、お参りにいらっしゃいました」


 「聖女」はエドモンドに近づくと、他は眼中にないとばかりに親しげな笑みを浮かべた。


 エドモンドから返るのは、胡乱な奴だと言いたげな冷めた眼差しだが、聖女はめげない。


「さあ、坊ちゃまの番だ」と目をキラキラとさせて待つ。

 先に耐えきれなくなったのは、家令ロバートだった。主の不興をかうのを覚悟して口を開く。


「皆様のお越しを歓迎いたします。ご存知のように公国では長く『聖女』は空席となっております。ですので、不躾ながらお尋ねいたします」


 こんな感じでいかがでしょうか。伺いを立てるロバートに、目のくりくりとした聖女が満足そうにする。


「聖女と奇跡は切り離せないものと存じますが、認められたのはどのような奇跡でしょうか」


「まず、私は神の啓示を受けました。『人の為になりなさい』と。その後悪魔に取り憑かれた女の人を救い、呼吸の止まった女の人を生き返らせ、ま・し・た」



 質問するのはロバートでも、聖女がひたりと視線を据えるのはエドモンドだ。

 起こした奇跡を強調する聖女を、エドモンドが手のひらを向けて制止した。聖女がキョトンとする。


「ジャスパーは、そんなことしなかったわ」

「もういい」

しかめっ面のエドモンドは、面倒の極みというように手を降ろした。


 お嬢さんがせっかく楽しんでいるのだから、もうしばらく付き合えないものか。と思うロバートの前で、聖女リリーは「ふう」と息を吐いた。




 いつもの館のいつもの部屋。居るのは、いつもの坊ちゃまと家令と行儀見習いではなく。

 ジャスパー・グレイ役エドモンド、聖女サンドリーヌ・リュイソー役リリー、ジャスパーの声担当ロバートだ。

三人で送る一幕は、エドモンドの動きひとつでお終いとなった。


 髪を包んでいた布巾をリリーが取り去ると、豊かな赤毛が現れた。その手でケープに見立てて肩を包んでいた膝掛けを取り払ったのは、暑かったせいだろう。


 ロバートが受け取るとまた「ふう」とひと息つき、ハタハタと首筋を手で扇ぐ。



 黙っていたエドモンドが、首に張り付く一筋の赤毛に目を留めながら「よく見て教えろと言ったが、イチから再現しろと言った覚えはない」と、口角を下げて不服を示す。


「その方が、より伝わるかと思って」

リリーはケロリとしたものだ。


「坊ちゃまに聞こうと思っていたんだった。悪魔祓いってなに? 王国では悪魔が取り憑くの?」


 隣に座れと寝椅子を示すエドモンドに、リリーが待ち切れないように尋ねた。


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