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年末年始の過ごし方・1

 カミラはリリーの渡した香水をとても喜んだ。調香師の勧める「年若い女性の好む香り」を主として、フレッシュミントを足してもらった。そこにレモンを少量。透き通る爽やかな香りに仕上がった。


 「早朝の森林の清々しさ」を基調とし、セージとゼラニウムを隠したジャスパー用は「紳士用には珍しい水晶のような透明感がある」と調香師の評した香りだ。「大人の男性ならばルームフレグランスとしてお使い頂ける」らしい。


 ふたりには「工房につれて行ってもらったから、私の意見も入れてくれたの。いつも仲良くしてくれるお礼」と渡した。


 ジャスパーは若干驚いたものの、「つけるのはお好みから外れるかもしれないので、気分を変える時にお部屋にでもふってくれたら」とリリーが言えば、受け取って目の前で封を切った。


「特定の香りを身に着けた事はありませんが、これはあなたのお好みですか」

「ジャスパーはよく出来るから、重々しい香りでより強く見せる必要がないでしょう。だから気持ちの良いものばかりの香りにしたの。調香師さんも『演出効果という意味では足りませんが、私は好きです』って言われたから、きっと香水としては物足りないんだと思うわ」


 なので大人の男性ならルームフレグランスにしかならないのだろう。


 容器で分かったらしい香水店の名をすぐにあげたジャスパーは「希少な品をありがとうございます」と口にする。リリーよりよほど詳しそうだった。


「一番近い距離にいるのはあなたですから、お好みの物をつけるのは当然でしょう。今日から使います」


 体術で組むのでリリーは汗の匂いに気をつけていたが、ジャスパーもそこは同じだったらしい。


贈り物をするのは楽しいしあげる方こそ嬉しい、リリーはそう学んだ。









 十月も半ばに差しかかり夜は冷える。家令ロバートは暖炉に火を入れ、椅子の位置まで完璧に「隠れ家」のリリー好みを再現した。頼まれてもいないので、自己満足の極みである。


 お湯から出てバスローブにくるまり、足には新作のフカフカとした室内履きを履いたリリーが、「ここにずっといたい」とにっこりした時には、心温まった。


 今リリーは昔のように、前に暖炉お腹に温めた石入りのロビン背中にエドモンドという一番のお気に入りの姿勢で――つまり若き主の膝の上に乗って――、分厚い敷物に座り火にあたっている。


 少し離れた場所からそれと無い風を装って眺めるロバートには、幸せの形がここにあると思える。



 エドモンドに「今週の嬉しかったことは、ふたりに香水を渡した事」と報告したリリーは、次の話に移った。


「イグレシアス公子が、公国らしい年越しを体験したいって」

 お手紙に書いてあった。伝えるリリーにエドモンドが問う。


「お前は私がいない間、年の変わり目はどう過ごしたのだったか」

「アイアゲートの両親といた時は、一緒に教会へ行ってた。去年はスコットに誘ってもらって、炊き出しのお手伝い」


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