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貴公子と美貌の女伯爵・2

「知り合いをご紹介くださろうというなら気遣いは無用だ。未婚のご令嬢に気を持たせるわけにもいかない。あなたさえ良ければ、今後も同伴が必要な時にはお誘いしてもいいか、と今夜にでも尋ねようと思っていた」


 エドモンドが異国にいた三年の間、エレノアに特定の相手はいなかったと他からも聞いているが、当人に確かめると同時に、しばらくは誰とも結婚するつもりはないと匂わせる。


「願ってもないお話ですわ。こちらこそ宜しくお願い申し上げます」


 いつも息子と一緒という訳にもいかない。彼女は同意するだろうと思っていた。



「エドモンド様は、慈善活動に力を入れるおつもりと伺いましたけれど」


「賑やかな席にも飽いた。社交はそこそこにして、青少年の育成と平民の登用の推進を主にしようと考えている」


「それも留学の成果でしょうかしら。国にとっても益になりますわ」


 エレノアは階級差別意識が薄い。その美貌と華やかな性質から信奉者が多い彼女を味方につければ、力となる。



「私が成長を期待するのはちょうどご子息の年頃だ。それで言うなら、グレイ家の後嗣も優秀で、公国のこれからを支えるひとりだと思っている」


 夜会で会う機会があれば、早いうちに知人を通じて面識を作るといい。とエドモンドはアレンの為に助言した。



「エドモンド様の留学は、実りの多いものでしたのね。以前は何事にもご興味をお持ちになれないご様子でしたのに」


 エレノアは四十路に近い。年上ぶって言われても気にならない。


「こんなに長くあなたを独占しては、恨まれそうだ」


 年齢を匂わせる話は取り合わないのが、マナーというもの。話を変えるエドモンドの言葉を受けて、可笑しそうにエレノアが笑う。


「その辺りもお留守の間に変わってきておりましてよ。今は次の大公夫人とそのご友人方が主役ですわ」


 口惜しくもなさそうに教えるのは、長く社交界の華として君臨しての余裕だろう。


 エドモンドの兄の妻はまだ若い。上の世代への影響力はエレノアに劣る。見目の良い息子アレンは聡明だと聞いている。今後もレクター家は重要だ。



「さて、一曲お相手願えないだろうか」

「よろこんで」


 優雅に差し出した手にこれまた美しい所作でエレノアが白い手を重ねる。


「二曲にしておくか」

「ええ。今夜は私それで失礼致しますわ。アレンもあまり長くおりますと拙さが露呈してしまいますし」

「では、合わせて私も帰るとしよう」


 仕事の打ち合わせのような口調にそぐわない見惚れるような笑みを湛えて、二人はダンスを楽しむ人々の間へと踏み出した。


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