宝探し・1
二年生初めての野外学習は、二人一組の「宝探し」だ。
学院の所有する広大な森の一画に金属とガラスと木の三種の玉がいくつも隠される。それが「お宝」。
宝には精神系の使い手ならそれと分かる「目印」がついている。香りと感じるか光と感じるかは、人それぞれらしい。
探すのは精神系の異能者の役目。置き場所は少し工夫がされているので、身体系の異能者が活躍するはずだ。
異能を持たない生徒には、公平を期すため「宝の在り処を示した地図」が渡される。そこから地形を読み取り、取りやすい場所にある玉を目指せば、対等に渡りあえる仕組みだ。
加点方式の競技のようなもので、木よりガラス、ガラスより金属の玉の点が高い。
昨年の優勝組は金属ふたつガラスひとつの合計三個だったと聞く。金属の配点が高いので、ガラスと木だけで勝つのは難しい。
夕刻までに玉を持ち帰り、先生に採点してもらえば終了だ。
不公平のないようにと先生が組み分けをしたので、リリーはまだよく知らない同級生マルコムと一緒になった。
穏やかで口数が少ない印象の彼に、集合場所である森の入口で、リリーから切り出した。
「なにを目指しますか」
「なに……」
戸惑う様子の彼に続ける。
「上位入賞を狙うのと、一日森を楽しく歩ければいいと思うのでは、やりようが違います。探すのは私の担当なので、目的をはっきりさせておかないと」
遊びといえど野外「学習」。成績はつかなくても、心象には影響するとリリーは思っている。
黙考するマルコムを急かさずに待った。
「僕のような目立たないものがアイアゲートさんと組めるのは、そうそうないと思います」
それと目的とがどう繋がるのか。返答に迷うリリーに、マルコムは控えめながらもはっきりと言った。
「この機会でなければ、上位は目指せないと思います。僕は人よりよい成績を取ってみたいです」
ならば。急造ペアなのだから、結束を固める必要がある。まず作戦名を決めようとリリーが提案した。これは運営側からの推奨でもある。
「絶対勝つぞ、では?」
なかなか良いと思うのに、マルコムはうんと言わない。二・三の候補が上がり、彼の言い出した「最善を尽す」に決まった。
注意して聞いていれば、周りでも作戦名やチーム名を決めている。「疾風怒涛」とか「一挙両得」とか。これなら「絶対勝つぞ」の方がマシだとリリーがひとり考えるうちに、開始の合図が響いた。
男子同士の組は、遠くまで行ける。体力があり森の奥まで進んでも戻って来るのも早い。
そういう点では、男子女子の組は不利で、最初から勝ちに行かない組もありそうだ。
競争相手は案外、異能持ちではない組、あるいは歩き慣れている平民同士の組はなんじゃないか。リリーはそう予想した。
「何を探していますか」
マルコムはリリーの後を歩いている。
彼の父は地方の役人で、息子には中央で活躍して欲しいと、学院へと送り出してくれたそうだ。
自分については話しても、リリーの身の上は尋ねない。つまり、彼もリリーの噂を耳にしているのだろう。




