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紅薔薇の貴公子・1

 通常ならこの時期ではない学院見学会は、秋入学にあわせて今年は春に予定された。


 併せて寮の見学会も開かれる。 

この二日間授業はなく、在校生は部活動や同好会活動をアピールするのに忙しい。


 入学希望者の受験勉強について助言するブースが作られ、また別に学校生活を在校生が語る席もある。


 学院のイメージアップの為にと様々な形で皆動員されたけれど、嫌嫌ではなくリリー達も学院祭のようで楽しんでいた。




 初日は女子の入学希望者の案内をしたり、奨学生として制度の説明をしていたリリーは、今日は寮にいた。


 談話室のカーテンを締め切り、神秘的な雰囲気の――薄暗いだけとは言わせない――「占い部屋」を開いた。その主がリリーという設定。


 女子の寮生は少なく部屋はいくつも空いている。人数が多いほど、学校側への要望は通りやすい。「数は力なり」だ。


 そういうわけで入学希望の女子には是非とも寮まで足を運んでほしい。そこで思いついたのが、女の子の好きな占いだった。


「無料占い」を寮で行えば、保護者と共にここまで足を伸ばしてくれる――かもしれない。





 占い監修はオーツ先生だ。オーツ先生は人を観察し類型にあてはめるのがご趣味で、かつてそんな研究もしようとしたらしい。


「たくさんの質問をして重なる部分を拾っていけば、その人の性格が浮き彫りになるのよ。性格が掴めれば、考え方がわかる。考え方がわかれば、今後選択するであろうものが見える。つまりその人の未来の予測が立つのよ」


 オーツ先生の理論では「骨格や顔の造作が似ていると声まで似ているのよ、他人でもね。そこまで似ていると不思議な事に考え方も似てるわ」となる。



 リリーとしては「それは感覚的には共感するが、証明は難しいと思われるので研究課題としては、どうだろうか」と止めたという先輩研究者の気持ちに、共感をよせてしまう。


 そしてオーツ先生の「占いは統計学的なもの」という考えのもとに「特製占いカード」を作った。子供だましのお遊びの域を出ないのは、あえてだ。


本気で行えば異能の領域に踏み込んでしまう。


「私は合格できるでしょうか」と聞かれれば、「今の努力を続けて諦めなければ合格できます」が模範解答。当たるも当たらないもない。


 来てもらえばリリーの目的は達成しているのだし、気分よく帰ってもらわなくては入学への意欲が削がれてしまう。当たり障りのない会話をし、寮を見学して頂くのはさほど難しいとは思わない。



「衣装でそれらしさを出しましょうね。女の子は変身が好きだもの」


 浮き浮きした様子のオーツ先生に若干の不安を感じる以外、リリーは気楽に考えていた。





 オーツ先生の私物、薄物のスカーフを目だけ出す形に頭から巻き付け「古の魔道士」――先生だって見た事がないのに違いない――のような濃紫のローブはやり過ぎだと思うのに。


 さらに先生はリリーの目の周りにぐるりとアイラインを入れ、目尻を長く跳ね上げた。これで丸い目は、大きな切れ長の目になり異国風の美人の出来上がりだ。


 この変身にはリリーもびっくりしたけれど、出ているのは目だけ。それが奏功しているのだと納得した。


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