卒業パーティー・2
「やっぱり? リリーもそう思う?」
やっぱりと言うからには、カミラもそう思っていたのだろう。
「絶対。パーティーに誘ったのはスコットからなんでしょう?」
「そうよ」とカミラが肯定する。
「なら、スコットに相談すべきよ。女の子を着飾らせるのは親かパートナーのつとめとされるわ。恥をかくのが親なら、ここにいないからいいけど、スコットは隣にいるのよ? キレイにしている女の子を連れたいに決まってる」
お金がいくらかかるとか、そういう問題じゃない。スコットの評価に繋るのだから、カミラ一人で決めないほうがいい。
リリーの主張を聞いたカミラは、数度瞬きをしてようやく口を開いた。
「アイアって……」
後は焼くだけになったパンを窯に入れてから「なに?」とリリーが尋ねる。
「すごくはっきりしてる。人にねだろうなんて考えもしなかったわ」
聞きようによっては酷い言われようだけど、カミラにそんなつもりがないのは分かっている。言葉を選べないほど驚いているだけで。
「そう? だってカミラがドレスを欲しがってるわけじゃないわ。パーティーに誘われてなかったら、要らないものだもの。カミラはその日スコットの飾りなんだから、そんなのスコットが用意すればいいわ。必要ないものを親にねだれないじゃない?」
カミラが賛同するかどうかは別として、リリーの考えはこうだ。
カミラの家は生活には困らないはずだけれど、いきなりドレスが欲しいと言われても困るに決まっている。ドレス一枚では済まない、アクセサリーも靴も付き物なのだ。
「カミラが言えなかったら、私が世間話みたいにスコットに話してみるのはどう?」
リリーの提案にカミラの睫毛がふるりと揺れた。もうひと押し。
「それでスコットが無頓着だったら、制服で参加するってことで」
当日キレイに着飾った女の子の間で制服を着ているカミラを見て悔やんでも遅いのだ。でも、スコットが恥とも感じず気にしない性格なら、それはそれ。
それより。通常ドレスを仕立てるには三ヵ月みると聞く。パーティーまではもう一ヵ月しかない。本格的なドレスではないので間に合うはずだけれど、それこそポロック家のような名の通る家でないと、急ぎの仕事は仕立て屋が引き受けてくれない可能性もある。
「ごめん……いい? アイア」
申し訳無さそうにカミラが眉をさげる。
「うん、まかせて」
そうと決まれば、明日にでもスコットに話さなくては。大切な友人の役に立とうと、リリーは力強く頷いた。




