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個性的な教師による授業・1

 「特殊能力」「異能」と呼ばれる才能は、大きくは二つに分けられる。身体系と精神系だ。


 併せ持つことは無いとされ、能力自体は公国民の二割が持つとも言われる。


 平民では潜在能力に気付かない者が大半で、貴族では努力を嫌い才能を伸ばさない者も少なくない。


 結果「異能持ち」と呼ばれ国に登録するまでになる能力者は、それほど多くはない。


 この学院でも異能を持たない生徒は多く、異能持ちであると認められれば入学試験に加点があり、職によっては有利に働く。



 そんなリリーの知っている事からオーツ先生の授業は始まった。

 つまり異能持ちであると認められたものの、活かし方使い方はまるで知らない新入生がほとんど、ということだ。



「みなさん、ワタクシの授業を選択したからには、異能持ちというわけよね。ここにいる女子がみんな精神系さんなのは、さっきも説明したとおり『身体系の才能に気がつけない』または『文化的に女子の身体系の能力を活かそうとしない』のが理由よ」


 指を胸の前で組み高い声で説明する教師に、一同が頷いた。


 男子では身体系と精神系は半々に近いのに、女子は精神系ばかりなのはそういう事か、と理解した様子だ。


「ねえ、先生は男性よね?」

階段教室でリリーの隣に座るカミラが囁いた。


「オーツ先生はアンガスというお名前だから、たぶん男性よ」


 喉仏もあるし、髪は長いが後ろでひとくくりにしている。背は高く肩もしっかりとしているので、まず間違いなく男性だ。


「話し方が女性っぽくない?」

カミラが重ねる。


「精神系の使い手は、個性的な方が多いと聞くわ」

リリーは、精神系の使い手だと自己紹介した教師の巻きスカートに目を止めたまま返した。


 「癖が強い」という表現は回避した。思うに先生はこの教室のどんな会話も漏らさずひろっているはずだ。


――ほら、やっぱり。他の説明をしているのに、視線だけこちらに投げて一瞬口角を上げた。


 まだ何か言いたげなカミラを、机の下で制する。

これくらいにしておかないと注意されるか、難しい質問を投げ掛けられてしまう。



「精神系さんには、まず自分がどれくらいの力を使えるかを知ることから始めてもらいましょう。身体系さんには『何かされてるなぁ、ボク』って感覚を体感してもらいましょうね。でないと、『キレイな女の子にポーっとなってる内に好き勝手されちゃいましたぁ』なあんて事に、将来なったら大変でしょ? ほら身体系さんはまっすぐな男の子が多いから」


思い当たるふしがあるのか、男子がどっと笑う。


「これから先も、ワタクシの授業では身体系と精神系ペアで行うことが多いけど『今日組んだお相手とずっと一緒じゃなきゃいけない』なんてないから、吟味しなくて大丈夫。お相手はコロコロ替えてオッケーよ。楽しんで行きましょ」


 みんなが笑ったことに気をよくしたらしいオーツ先生が、にっと笑う。


 緊張しては実力が出せないと、あえて面白おかしく授業をすすめているのだろう。リリーの考えは大きく外れてはいないはずだ。

 服装と口調は完全にご趣味のような気もするけれど。



「さあ、今だけのお相手を決めて、ペアを組んで」


 小気味良く両手のひらを打つ音と共に言われて、男子がガタリと椅子の音をさせ一斉に立ち上がった。


「やだ、緊張するわ。選ばれなかったらどうしよう、アイア」


小声のカミラはすごく早口になっている。


「『選ぶ』はおかしくない? それを言うなら『誰も来てくれなかったら』でしょう」


 修正するリリーの声など耳に入らないほど、カミラはソワソワとしていた。


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