コウ
「え……?」
突然苦笑いと共に、そういってため息を吐くコウを見て、師匠に教えられた、亜人差別について思い出す。
……エルフや、獣人などの亜人族は、昔から見た目が人間と違うため、虐げられてきた。
奴隷として売られたり、意味もなく殺されたり。
クレーシアや、クレーシアと同盟を結ぶ、アイリス同盟国は、奴隷や、亜人差別を禁止しているが、それでも、すぐに差別はなくならない。
具体的には、獣人というだけで、騎士や魔導師、魔術師試験に落ちやすくなったり、学園に入れなかったりなどがあるらしい。
コウが言っているのは、多分、獣人に対する偏見的なあれだろう。
「ファララ様、どうなさいましたか? やっぱり、この耳と尻尾? 引っこ抜きましょうか?」
……考えていると、困ったようにコウが呟く。
引っこ抜きましょうか? じゃないだろう。
抜いたら、耳聞こえないだろうよ!
「いや、引っこ抜かないで……!」
「え、ならどうします?」
なんで、突然引っこ抜くことになった?
一周回ってちょっと冷静になってきたので、コテン、と首をかしげるコウを見つめる。
……ヤバい、可愛い。
コウ、まじで男の子か? 女の子にしか見えんのだが?
……はぁ、ほんと可愛いよ! 弟にしたい。この世界の人ってみんな綺麗だからさ、アライグマの獣人じゃない方のコウの可愛さは対して目立たなかったんだよね?
でも、ケモミミ生えただけで、こんな可愛いの?
でもさ、天才無表情少年ケモミミ騎士(弟属性)は、要素盛り過ぎでは? ってか。
「逆に私のために尻尾と耳引っこ抜けるの……?」
「今の主は、ファララ様なので」
……忠熊!!
いやなんだよ、忠熊って……!
どうやら、私も結構動揺してるらしい。
「……ファララ様が、もし、俺のことを気持ち悪いと思うなら、今すぐにでも、」
「いや、解雇はしないからね?」
「え?」
「え?」
コウの言葉を遮って、私は不思議そうな顔をする彼と顔を見合わせ、首をかしげ合う。
「え、なんでですか? 尻尾と耳あるんですよ?」
さっきから、何でそんなに尻尾と耳にこだわるの この人。
「……うん、それでもいいよ。あっ、でもいくつか質問させて?」
「……は、はい……」
頷くとコウは、私の前にしゃがみこむ。
「コウってアライグマの獣人……であってる?」
そう聞くと、コウは、こくこく頷く。
さっきから、スペキャ顔を披露されている私の気持ちを考えてほしい。
「え、と、はい。合ってます」
「ありがとう。それじゃ、2つ目。コウって学園、通ってるの?」
「……いえ、俺は、純粋な人じゃないので」
ありゃ、俯いちゃった。
学園にも通わせてもらってないのか。
「……なんとかするわね。3つ目。コウの家ってどこ?」
「俺の家は……ルーデンス公爵家です」
ルーデンス公爵家? 騎士団長の家系……?
いや、それより……公爵家なのに、学園に通ってないの?
「……え?」
「……あ、身分のことはお気になさらず。ファララ様は、扱いは王族なので。俺、元は孤児ですし」
「……わかった」
ぐっと下唇を噛み、4つ目の質問をする。
「4つ目の質問コウ、騎士団見習い試験、何位だった?」
「見習い試験、ですか」
見習い試験というのは、騎士団が毎年行う10歳を対象とした試験のことだ。これに合格すれば、騎士見習いになれる。
ちなみに魔導師団も仕組みは同じ。
見習い試験ではなく、騎士団入団試験に合格しないと、騎士としては認められない。
見習いはあくまで見習いだ。
入団試験は、15歳対象毎年実施。
「……一応、首席でした」
「what?」
「はい?」
コウがパチクリと目を瞬かせた。
いけない、いけない! うっかり前世&今世最高の発音のwhat?が出た。whatの意味は確か何? だ。
それにしても、学園通ってないってことは剣は独学か。
……頑張ったんだろうなぁ。
「ううん、なんでもない……質問は以上だよ」
「……? わかりました?」
それを聞いて、私は、立ち上がろうとする……前に。
目の前にあるコウの頭に手を伸ばした。
「コウ。頑張ったんだね、偉いねぇ。
私の騎士になってくれてありがとう」
なるべく優しい声を心がけ頭を撫でる。
「!? ファララ様?」
アワアワと慌てる彼の耳に触れる。
あ、ふっわふわ~のもっふもっふだ。
可愛い。
「あ、姉様が探しに来てる気がする……行こっか」
なんとなく姉様からのテレパシー的なものを感じて、コウの頭から手を離す。
最後にスルリと頬を撫でて、私は、立ち上がり、コウに向けて精一杯の笑みを浮かべた。
「話しにくいこと言わせちゃってごめんね……私は、コウが騎士ですっごく嬉しいよ」




