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鏡柵の番人  作者: 茶内
18/50

      ミッカリさんとの再会

 ルーロンが城北側の青い門に到着したのはまだ陽が昇る前の時間だった。


 ミッカリさんがいつ来るのか分からなかったからだ。


 城壁に背中を預けて座り込んで待っていると、陽が昇るにつれて眠気が襲ってきた。


 昨夜はほとんど眠れていない。これまでの出来事が頭の中をグルグルまわっていたからだ。


 どれも一見クドラ山事件には関係あるかないのか分からないような案件だったが、昨日、ワンパが最後に言ったことを聞いた時、ルーロンの記憶の中の古い出来事が掘り起こされた。


 ルーロンがまだ子供の頃、おじいちゃんに聞かせてもらった話があったのだが、それを今回の事件に照らし合わせてみたところ、荒唐無稽ながら一つの仮説が仕上がったのだ。


 もしこの仮説が正しかったら、それこそ大変な騒ぎになるのではないか。


 記者になって二年目の、しかも女が書いた記事で国中がひっくり返る、そうなったらきっとおじいちゃんは喜んでくれるんじゃないか。ジャンザザは怒って求婚を取り下げたりして。


「あれ?お嬢ちゃん、だよな?こんなところでどうした?」


 不意に声を掛けられた。目を開けるとミッカリさんがルーロンの顔を覗きこんでいた。


「あ、あわあわあわ!おはようございます!」慌てて立ち上がってよだれを拭いた。


「ずいぶん気持ち良さそうに寝ていたなぁ」ミッカリさんが目尻にシワがつくった。


「すいません・・・」いつの間にか寝ていた。


 日差しが心地良かったせいだ。恥ずかしい思いをした代わりに、頭の中はだいぶスッキリした。


「あの、ミッカリさんに会いたくてここで待ってたんです」


「ワシに?」ミッカリさんが不思議そうに目を瞬いた。さりげなく馬車の荷台に目を向ける。何も積んでいないから搬入を終えたあとのようだ。その方が都合がいい。


 カバンの中の空砲を手に取ってミッカリさんに差し出した。


「これ、借りっぱなしになっていた空砲です、ごめんなさい、一発使っちゃいました!それとお礼のお酒も持ってきました」言いながら用意していたお酒も差し出した。


ルーロンの給料から考えると中々高級な代物だ。


「あぁ。そういえば貸してたね。わざわざありがとう」ミッカリさんが空砲を受け取り、しまったのを確認してからルーロンは本題に入った。


「それとミッカリさん、お願いがありまして」


 なに?ミッカリさんが訊ねた。馬がブルルル、といなないた。まだ何かあるのか、早く帰らせろ。と文句を言ってるようだ。


「昔、絵を描かれていたんですよね?今でも描けますか?」


「絵?そりゃあ、描けるけど」


 ルーロンは準備していた紙と鉛筆を出した。


「それじゃお願いします!クドラ山の監視員の顔を描いてほしいのです」


「え、ワネの?」


 はい、とルーロンは頷きながらも、心の中で彼の言葉を否定した。


 違います、彼はワネではありません。


 本物のワネは処刑されてもうこの世にいないのです。


 いまクドラ山にいる彼が誰なのか、それはあなたの描く絵によって証明されるのです。


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