序章1
俺は死んだ。
なぜ死んだのかは、もう思い出せない。
ただ、死んだということだけは分かる。
もう自分の体の感覚は無い。聴覚も嗅覚も味覚も触覚も無い。
辛うじて視覚があるだけだ。
その視覚さえも、強い光を浴びているということしか分からない。
俺はこのままどうなるのだろう。ただ何も無い空間でずっと、幾星霜も漂い続けるのだろうか。どんどん思考が薄くなり、ここに居る俺は、ここにある俺になってしまう。
そんなのは嫌だ!
(──嫌か?──)
当たり前だ!俺はおれだ!他の何物にもなりたくない!
(──では、どうしたい?──)
生きていたい……。生きたかったんだ……!
(──何故だ?──)
別に俺は凄く幸せだったという訳でも無い。凄く不幸だった訳でもない。ただ普通に、笑って、泣いて、喜んで、悔しがって、怒って、哀しんで、そんな当たり前に生きていたんだ。
それがいきなり終わってしまったんだ!納得が出来るわけが無いだろう!
──そう、俺は自分の生に納得がしたいんだ……。
(──なるほど、それがお主の願いか──)
──ん?俺は今、誰と会話をしているのだ?
ここには俺以外いない。仮に居たとしても、口が無いから話せない。
なあ、お前は一体誰なんだ?なんで俺と話せるんだ?
(──我は今、お主の思考に直接語り掛けている。──)
思考に語りかける?訳が分からない……。お前は何者なんだ?
(──我に固有名は無い。ただ無から何かを創り出す存在だ。お主らの言葉では神とでも言えばよいかな──)
……っえ?神様だって?