え・・・・・・、マジで??
ここまで色々な事があったが、とりあえず残るチュートリアルはあと一つだけらしい。
ここ、天界アルカディアから、下界へ俺を転送する事。
転送方法はわからないが、まあ魔法がある世界だ。きっとアニメや漫画みたいに転移陣みたいな所に乗って転送されるのだろうと、少しわくわくしていた。
「零時さんこちらへ」
シンに呼ばれ後をついて行くと、
「あれ、君は」
その隣にはあの可愛らしい少女騎士が居た。
「あ、あの、先程は、し、失礼を。だ、だからその、す、すいま、せん、でしたっ」
ぺこりと頭を下げ、必死に謝罪をする少女。
「おや、もう面識がありましたか」
「ああ、あの貧乳達に囲まれた時にな。えっと、大丈夫だよ、怒ってないからさ。だから頭を上げてくれないかな?」
「は、はい」
少女は返事をした後、ゆっくりと頭を上げる。
「では彼女の事をご紹介しておきますね。彼女は、ソフィア。転送場所まで彼女も一緒に来て貰う事になっているのですよ」
「そうなのか。改めて宜しく、ソフィアちゃん」
俺が目線を合わせて笑顔でそう言うと、
「よ、よろしく、おねがい、しま、す」
またもぺこりと頭を下げるソフィアちゃん。
「さあ、挨拶も済んだようですし、そろそろ参りましょうか」
そう言い、シンがぼそりと何かを呟くと、俺達の目の前に白い門が現れた。
「・・・・・・・・・・」
ぽかんとしている俺をフフ、と笑いながらシンはその中へと入っていく。
「では、零時様。ついて来て、下さい」
ソフィアちゃんもその後に続く。
取り残された俺はもうどうにでもなれという気持ちで、二人の後を追った。
「花畑の次は雲か・・・・・・」
門を通った先にあったのは、またも見渡す限りの広大な雲、雲、雲。
慣れてしまったのもあり、あまりこの事に驚きはしなかった。だが、唯一不思議に感じたのは、今まさに自分がその雲の上に立っているという事だった。
「あそことはまた違う良さがあるでしょう?」
「ま、確かにな」
ぼすぼすと雲を踏みながら答える。
「まさか雲の上を歩ける日が来るとはな」
「フフ、ここの雲は魔法で作り出した物ですからね。ちょっとやそっとでは落ちませんのでご安心を」
ちょっとやそっとじゃなかったら落ちるには落ちるのか。などと思い、俺は雲を踏むという行為を止めた。落ちるのは勘弁したいからな。
「そういえば、あの白い門は一体何だったんだ?」
「あれですか? あれは『異空間移動魔法』という魔法で、我々属性神と創造神様にしか扱う事の出来ない特別な魔法なのですよ」
「じゃあ、他の奴には転移魔法は使えないのか?」
「いえ、下界にも扱う者は居ますが、ただ使用するにはまず転移場所にマーキングをしておくのと、更に専用の魔法具を使用する必要があるのですよ」
うわ、何それめんどくせぇ。
「しかし我々の扱う『異空間移動魔法』という魔法は、それらの工程を一切必要としないのです。だからこそ特別なのですよ」
最早それこの世界ではチートじゃねぇか。
「まあ、これも万能という訳では無いのですがね。一つだけ制限が」
「あ、主様、そろそろ」
「おや、そうですね。では始めましょうか」
シンが何かを言いかけていたが、ソフィアちゃんに遮られてしまった。
続きが気になりはしたが、ついに俺の下界への転送が始まるのか、という気持ちの高ぶりにオタクの俺が勝てるはずも無く、何かを言いかけていた件はとりあえず後回しにする事にした。
「で、始めるって言ったって、一体どうするんだ? 魔法陣もそれらしき装置とかも見当たらねぇぞ」
キョロキョロと辺りを見回しながら俺はシンにそう告げる。
「いえ、我がアルカディアが用いる転送陣にそんな物は使用しませんよ?」
と、真顔で返答するシン。
「はい?」
その言葉に俺は思わず声が裏返ってしまった。
「え、じゃあどうやって・・・・・・」
俺がそう尋ねるとほぼ同時に、シンはソフィアちゃんの方に手を向け、言った。
「そこで彼女の出番です」
・・・・・・ガシャンッ!
その時、背後から何か重い物を振り下ろす音がした。
「・・・・・・・・・・」
あー。すんげぇ嫌な予感しかしねぇ。
だってシンが手を向けた途端に、あのプリティキュートなソフィアちゃんがだよ? どこから出したの? って聞きたくなるくらいの大きな大きな剣を、片手でブンブン振り回してるんだよ? そりゃ嫌な予感しかしないさ。
「ソフィー?」
そしてシンが名前を呼ぶと同時に、大剣を抱えたソフィアちゃんが飛び上がり、雲の一部分を、
ズゴオオオオオオオオオオオオオオオンッッ!!
それはもう、もの凄い爆音と爆風と共に、貫きました。