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闇底の魔法少女  作者: 蜜りんご
5章 闇底に咲く花
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拘束系魔法少女

 試行錯誤の末。

 ついに。

 満足のいく拘束具が完成した。

 いや、こういうと、あたしが危ない人みたいだけど。

 違うんだよ?

 これも、世のため人のため……違うな。世のため、罪のない男性たち(罪がある人は除いてもいいのかなー?)のためなんだよ?

 とりあえず、今この場においては、サトーさんのためだ。

 サトーさんに罪がないかどうかは、ひとまず置いておくとして。


「ふー……」


 満足のため息を漏らしたあたしの足元には、キノコが……基、心春(ここはる)が転がっていた。

 真っ白いキノコ型拘束具に、全身を完全に拘束された心春が。

 赤い水玉模様のカサの下に、顔だけがのぞいている。

 ちゃんと全身が拘束されているのに、一見したところはただのキノコ型の寝袋にしか見えないところが一番のこだわりポイントだ。

 仕方なくやっていることなのに、危ない趣味の持ち主だと勘違いされたくないからね。

 うん。重要、重要。



「うーん。魔女にカケラ、ねぇ……。そっちは、俺も初耳だわ。地上でも闇底でも、聞いたことねぇな。まあ、あの元神がなんか知っているんなら、今度闇鍋に行った時にでも探りを入れてみるわ」

「そう。なら、そっちは頼んだわ。華月(かげつ)という妖魔については、どうかしら?」


 心春問題が一段落したところで、月下(げっか)さんたちのお話はどうなったかなーと振り返ってみれば、ちょうど月下さんの説明が終わったところのようだった。

 魔女とカケラのことは、闇底をあちこちフラフラしているらしきサトーさんでも知らないみたいだ。


「華月、か…………。月華(つきはな)の真似をして、使い魔を連れていて、魔法少女の魔法が効かない……と」

「ええ」

「んー、まず、月華の真似をしていることについてだが。お前は知らんだろうが、あんまり力が強くない、どちらかと言えば捕食される側の妖魔にはよ、月華に憧れたり、魔法少女に憧れたりしている奴らが少なからずいるんだよな」

「え? そう…………なの? 月華は、なんとなく分からないでもないけれど。妖魔が魔法少女に憧れるなんて、本当にそんなことあるのかしら?」


 サトーさんのセリフに驚いて、目をパチパチしている月下さんが見えた。

 あたしも、びっくりした。

 月華は、まあ、分かる。だって、普通に強くてカッコいいもんね。妖魔だって、憧れちゃうよね。うんうん。分かる、分かる。

 まあ、魔法少女までっていうのは、ちょっと意外……?

 あ、でも。

 そういえば、ココも魔法少女に憧れてるみたいだったなぁ。まあ、ココは妖魔じゃないんだけど。


「まあ、でっかい妖魔に食べられそうになったところを魔法少女に助けてもらったり? そんなんらしいけどな。魔法少女の中には、助けた妖魔をペットみたいに連れ歩いている奴もいるぜ?」

「妖魔をペット……」


 月下さんは、苦笑いで空を見上げた。

 信じられないって顔だけど、あたしはその魔法少女の気持ちもわかるかなー?

 ぬいぐるみみたいに可愛い妖魔がいたら、連れ歩きたくなっちゃうよね?

 その子が、ココみたいにお話とかしてくれたらさ、もう愛しさで爆発しちゃうよね?


「だから、まあ。華月って奴が月華の真似をしているのは、そういうのが斜めの方向に行きすぎちまった……てことじゃないかと思うんだが。華月って名前も、月華の真似っこを始めてから名乗るようになったんじゃないのか? たぶんだけどよ」

「…………なら、心春の魔法が効かなかったのは、どういうことだと思う? 心春は、術者ってわけではないけれど、かなり力は強いわ。元々、素質はあったのじゃないかしら? 魔素を集めてキノコの森を作ったり、後はこのキノコエレベーターとか、ね。その心春の魔法が全く効かなかったなんて、華月はかなりの力を持っているっていうことになるわ。カケラが関係していたり、魔法少女を喰らったことで魔法少女の力に抗体的なものが出来た、と言うわけでなければ」

「そうみてーだな。てかよ、キノコの森ってマジか? なんか、なんもなかった場所にいつの間にキノコの森が出来たのは知ってたけどよ。このキノコエレベーターだって、発想もなかなかすごいけどよ。思いついたからって、そう簡単にできることじゃないぜ? 今更、言うのもなんだけどよ」

「大はしゃぎだったものね」

「…………忘れろ」

「どうしようかしら?」


 な、なんかいきなり、邪魔しちゃいけないような雰囲気が漂いだした!

 こ、この二人って、どういう関係なのかな?

 付き合ってるわけじゃ、ないんだよね?


 てゆーかさ。今、思い出したんだけどさ。

 サトーさん。

 初めて会った時、なんか月下さんのこと悪く言っていたように思うんだよね。内容は、忘れちゃったんだけど。こう、あたしたちと月下さんを仲たがいさせようとしていたかのような……。なんか、そんな感じにも取れるようなことを言っていたような気がするんだよね。

 すっかり、忘れてたんだけども。

 でもさ。今思うと、あれってさ。

 自分のことを放ってアジトに引きこもっちゃった月下さんが許せなくて、八つ当たり、みたいな?

 月下さんを独り占めしているあたしたちに嫉妬して、みたいな?

 あたしたちと月下さんが喧嘩とかしちゃったら、もしかしたら月下さんがアジトから出てくれるんじゃ、とか期待しちゃって、みたいな?

 そんな感じだったり? しちゃったりする?

 星空(ほしぞら)的には、そこのところを深く追求したいんだけれども。

 お話は、また華月のことに戻っていく。

 うん、分かってる。それが、本題なのは、分かってるよ、うん。



「実際に見たわけじゃないからなぁ。可能性の話だけなら、どれもあり得るだろうが。まあ、カケラとか関係なく、単に力負けしたって可能性もないわけじゃない」

「ここまでのことができる心春が、力で負ける相手、か。あんまり、考えたくないわね。純粋に魔素を操る力だけの話なら、心春は私を上回ると思うわ。まあ、そうは言ってもこちらも元はプロですし? 本気でやりあって、負けるつもりはないけれど」

「張り合うなって。元が術師でないだけに、魔法少女たちの力は俺たちとは異質なんだからよ。あの子は発想力もあるし、油断してるとお前の方が負けるぞ?」

「な!?」

「あいつら、思い付きだけで、空を飛んだり、城を背負ったり、キノコ生やしたりするからよ……。術師の常識に囚われてると、かえって足元をすくわれるぞ。ピンチになったら、術師には思いもよらないようなぶっ飛んだことしてきかねないぜ?」

「…………そう言われると、なんだかそんな気もするわね。というか、キノコロケットとかで空へ飛ばされでもしたら、手も足も出ないわね」


 何かを想像してしまったようで、月下さんは自分の体を抱きしめるようにして、ぶるりと体を震わせた。

 てゆーか。華月の真面目な話のはずが、なんだか心春の話になってきているような? あと、一部劇場型のあの子も登場していたような?

 そして、なんか。心春の評価、高い?


「で、話を戻すとだ。妖魔には、倒した相手の血肉を喰らうことで、そいつの力を取り込んでパワーアップできる奴がいる」

「…………そう言えば、そんな話を聞いたことがあるわね。蟲毒なんかが、そっちの系統だったかしら? うちの流派はあんまり、妖魔を使役したりはしないから、思いつかなかったわ」

「月華や月光のところなんかが、そっち系だな。で、だ。華月って奴が、すでに何人かの魔法少女を喰らっているのが本当なら、魔法少女の魔法への抵抗力云々の前に、その力を取り込んだことで純粋に妖力が上がっているって可能性もあるんだよ」

「それは、質が悪いわね」

「だな。まあ、俺もなじみの妖魔なんかに、ちょっと探りを入れてみるわ。妖魔の方が、なんか知ってるかもしれんしな」

「ええ。お願いするわ。何かわかったら、アジトへ顔を出してちょうだい」

「アジトか……。気は乗らねえが、仕方ないか」

「何か、問題でもあるのかしら? 別に男性だからって、出入り禁止にしているつもりはないのだけれど。アジトには、一度も顔を出したこと、ないわよね?」

「…………。まあ、滅多に戻ったりはしないんだろうけどよ。運悪く、月華に遭遇したらと思うとな。まるで相手にもされないか、嬲り殺しにされるか、二つに一つって感じだろ?」

「……………………。もしもの時は、逃げる時間ぐらいは稼いであげるわ……」

「……否定はしてくれないんだな」


「なかなか、興味深い話ではありましたけれど。やはり、あの男。月下美人(げっかびじん)さんに対して馴れ馴れしすぎます! くっ! 今すぐ、殲滅したい! ですが、あの男はあの男で、使い道はあるようですし! いろいろと、知識はあるようですし! 完全に搾り取るまでは! 今は! 今は、我慢しなければ!!」

「ふわぁああっ!? 心春ー!?」


 いきなり隣に感じた気配に、あたしは思い切り飛びのいた。

 ギャグマンガのキャラ並みに、わざとらしいポーズで思い切り飛びのいた。

 でも、わざとじゃないんだよ? びっくりしたあまりに、自然とそうなっちゃったんだよ!


「え、ええ、と? 心春? 星空? 一体、何をやっているのかしら?」

「い、いつの間にか、妖精風魔法少女が、ただのキノコに!?」

「てゆーか、キノコ人間になってない!?」


 ずっと背中を向けていたサトーさんはもちろん、月下さんも話に集中していたのか、あたしが心春に仕出かしたことには気づいていないみたいだった。

 二人ともキノコ椅子から立ち上がって、何だこりゃって顔で心春を見ている。

 犯人のはずのあたしも、驚いていた。


「えっと、その。心春が心春的に暴走してもまずいので、キノコ型寝袋で拘束してみたんですが、それがなぜかこんなことに……」

「はい! 動きづらかったので、改造してみました! これ、素敵ですね! キノコへの愛が溢れています! 今後は、これでいこうと思います!!」


 腰に手を当てたポーズで、あたしの隣に立っている心春が、ドーンと言い放つ。


 キノコ型寝袋から、手足を生やした心春。

 足元まですっぽりと覆っていたはずの軸の部分は、胴体の下あたりまで短くなっていて、にょきっと白いタイツを穿いた足が伸びている。足元には、赤いブーツ。

 そして、顔の下、肩口のあたりからは、足と同じように両手がにょきっと生えている。こっちも手首までピタッと肌に張り付く白い布で覆われている。

 あと、あとね。

 カサの上は、白地に赤の水玉のままなんだけどね。

 軸……胴体の方は。

 赤いキノコとハートの柄模様になっていてね。


 キノコっていうか、キノコ人間なんだけどね。

 それにしても、なんていうか。


 うん。

 なんじゃ、こりゃ?


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