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闇底の魔法少女  作者: 蜜りんご
4章 闇底不思議探訪
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月の行方

 あ、と思った時には。


 闇空(やみぞら)へと投げ飛ばされていた。


 何かぽよんとしたものにぶつかって、ぽーんって感じで、空飛ぶ竹ぼうきの後部座席から投げ飛ばされちゃったのだ。


 とはいえ。

 最初こそ、何が何やら分からなくてパニくったけど、竹ぼうきから投げ飛ばされるのもこれで二回目だからね。

 すぐに落ち着きを取り戻して、今度こそーとばかりに華麗に空中回転を決めて、自分の力でふわりと浮き上がる。

 ビシッとポーズまで決めちゃってから、そんな場合じゃなかったことに気が付いた。


 そうだよ。そもそも、あたしたちは一体、何にぶつかっちゃったの?

 ほかのみんなは、大丈夫だったのかな?

 慌ててあたりを見回すと、まず目に入ったのは、心春(ここはる)だった。

 空中ブランコの、花でできた持ち手を、両手で掴んでいる。膝の上に大事に抱えていたキノコ山盛りのバスケットは、どこかへ消えていた。緊張した面持ちで、じっと正面を見つめている。

 視線の先を追いかけて、フリーズした。


 な、なんか、いる。

 なんか、いるよ!

 半透明で、でっかいのが。うごうごってしてる。

 なに、あれ?

 妖魔?

 それとも、闇空には普通に存在する自然の一部的な何か?

 なんかね。形的には、半透明なでっかい腸がうごうごしながら、闇空に浮かんでいる感じ。

 気持ち悪い……ような。そうでもない、ような。

 生き物のような、そうでもないような。

 ただ、そこにあるだけで、こっちに向かって襲ってくるような気配はない。


「心春、月見サンは?」


 うごうごしたものを気にしつつ、そっと心春に近づく。

 さっき、あたりを見回したとき、心春以外に人影が見えなかったのだ。

 フラワーはともかく、月見サンはどこへ飛ばされちゃったんだろう?

 月見サンのことだから、大丈夫だとは思うけど。


「分かりません。近くにはいないみたいなので、かなり遠くへ飛ばされたんじゃないかと思います。それより、今はアレですよ。殲滅しようと思ったんですけど、魔法を吸収されちゃって。一体、何なんでしょうか、アレ?」

「い、いつの間に攻撃してたの!?」

「ふっ。先手必勝ですよ!」


 心春は不敵に笑った。

 大人しくて引っ込み思案な妹風の見た目なのに、なんでそんなに好戦的なの?

 あんなでかくて得体のしれないものと、一人で戦おうとか思って実行しちゃうところが、なんかすごいよ。あたしには、できない。


「えーと、でも、魔法が効かないんじゃしょうがないし、いったんここから離れよっか? 妖魔なのかどうかもよく分からないし」

「え? 妖魔じゃないなら、何なんですか、アレ?」

「いや、ほら。あたしたちの知らない、闇底の自然の一部……とか? 生き物なのか、そうじゃないのか、微妙な感じじゃない?」

「言われてみれば、確かに。妖魔じゃない可能性については、思い至りませんでした。ふむ、でも妖魔でないなら、戦っても意味がないですね。分かりました。少し離れて様子を見ましょう」

「うん。あんまり離れすぎると、月見サンと合流できなくなっちゃうかもだし」

「はい」


 うごうごしたものは、闇空の上の方に固まっているみたいなので、あたしたちは少し距離を取りながら、下へと下がる。

 心春がうごうごしたものを警戒していてくれるので、あたしは月見サンの姿を探して四方八方へと目を凝らす。

 でも、一体どこまで飛ばされちゃったのか、それらしき姿はどこにも見当たらなかった。

 月見サン……。一体、どこに…………。

 心細くなりかけたときに、ひょっと何かが隣に現れた。


「竹ぼうきが飛んできたけれど、本体はどこへ行ったの?」

「ひ、ひぃっ!?」

心花(ここはな)さん!」


 ちょ、フラワー! 妖怪みたいに現れるの、止めてよー!

 って、いや?

 ちょっと、待って?

 それ、月見サンの空飛ぶサドル付き竹ぼうきだよね?

 なんで、フラワーが持ってるの?


「え? 月見サンは?」

「わたしが聞いているんだけど?」


 あ、そう言えば、そうでしたね。

 いや、でも、そうだけど、そうじゃなくて。


 え?

 え?

 えええええ????

 つ、月見サン、月見サンは!?


「まさか、月見さん……」


 心春が呆然と足元を見下ろす。

 少し高度を下げたとはいえ、地面はまだ遠い。

 ホタルモドキらしき明かりがぼんやりとは見えるけれど、ここからでは地面の様子までは分からない。


「だ、大丈夫ですよ! 魔法少女なんですから、地面に激突したくらいで死んだりしませんよ、きっと! ほら、ギャグマンガみたいに地面にめり込んで魔法少女型の穴とか出来ちゃってるかも! 穴の中で、私たちのツッコミ待ちをしているのかも!」

「そ、そそ、そうだよね! 月見サンだもんね! もしかしたら、マジシャンもどきっぽく、心配したあたしたちが穴を覗き込んだところで、上からジャーンって現れるつもりかもしれないしね!」


 一瞬浮かんだ嫌な想像を打ち消すかのように、まくしたてる心春にあたしも乗っかる。

 どこか浮足立つあたしと心春とは反対に、フラワーだけはいつも通りだった。

 平静。冷静。動揺なし。


「そうね。もしもの時は、代わりにこの竹ぼうきを埋葬すれば問題ない」

「問題あるわー!!!」

「大ありですよ!!!」


 表情一つ変えず、さも当然のように言い放つフラワーに、二人同時に渾身のツッコミを入れた。

 心春と心が一つになったのは、これが初めてかもしれない。

 おかげで、少しだけ冷静さを取り戻せたよ。

 取り戻せたけどさ。


 フラワー。

 あたしたちの様子を見かねて……とかじゃなくて。

 今の、本気で言ってたよね?


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