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闇底の魔法少女  作者: 蜜りんご
6章 つき と はな
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フラワーのお時間

 これ一体、どういう気持ちで見ていればいいんだろうな。

 えー、只今。

 現場である、アジトの周りにある草原を抜けた先の荒野では――――。


 月華(つきはな)は、フラワー・ガーディアンと“じったりじりじり”した鬼ごっこを開催中だし。

 月下さんは、フラワー・ガーディアンにぎゅってされたまま、モフモフナデナデされてて、なんか放心中だし。

 そんな中、あたしたちの敵であるはずの華月(かげつ)は――――。


「おい、おまえ! どういうことだよ! おまえは、ボクの使い魔、ボクの魔法少女だろう!? 勝手なことをするな!」

「お断り。あなた、私の好みではないし。あまり役に立たなかったし。期待外れも、いいところ」


 使い魔の魔法少女にもてあそばれちゃった華月は、フラワーに向かってキーキー騒いでいるけど、なんか、まったく相手にされてないっていうか、あっさりいなされちゃっていてさ。

 うん、どうしよう?

 あいつ、嫌なヤツだし、許せないヤツだし、敵なのに、可哀そうになってきちゃったよ?

 てゆーか、フラワーが悪役にしか見えないんですが?

 だって、しっとり余裕の表情で、なんかさ、華月よりもずっと勝手なことを言ってなかった?

 眼中にないっていうのは、こういうことですよーっていう、お手本を見せられているような、そんな感じなんですが?

 あたしたちは、これを見て。

 一体、何をどうすればいいの?


 いや、だって。

 これ、これさ?

 マンガとかアニメとかだったらさ?

 クライマックス、っていうの?

 本当だったら、いっちばん盛り上がるシーンになるはずのところだよね?

 強敵とのラストバトル!――――と思って現場に急行したら、仲間の一人が捕まっていた!――――とかさ!

 めっちゃ、ハラハラドキドキ、するところだよね?


 なのに、なんでこうなってるの?

 捕まったはずの仲間は、洗脳されたわけでもないのに、一人で勝手なことしてるし?

 ラスボスだったはずの妖魔は、可哀そうでしかないし?

 本当に、どうすればいいの?

 どうすればっていうか、本音を言えば、もうアジトに帰りたい。

 だって、結末を見届けたくない。

 だって、だって。

 フラワーな予感しかしないもん!

 

 ――――――――なーんて、脳内で一人会議をしていたら、ベリーがポツリと呟いた。

 背景が宇宙になっているみたいな顔をしたまま。


「前回はさ、正直、足手まといになっていた自覚はあるわけよ。私が捕まっていなかったら、あの二人、もっと本気で戦えていたと思うのよね。だから、今度こそ、あいつを仕留められるって、そう思ってた」


 いやいやいや! 足手まといだなんて、そんなこと思ってないから!

 だって、前回は。ベリーを助けることも大事な目的の一つだったし。それに、そもそも最後の最後で華月を仕留めそこなったのは、ベリーのせいじゃないし。月華が、おさるさんだったせいだし。月華がもう少しかしこかったら、あそこで終わっていたと思うよ。本当。

 そう言いたかったけれど、ベリーがさっきのセリフで一番言いたかったことは、そこじゃないっていうのもなんとなく分かったので、今は口を噤んでおく。

 代わりに、月見サンが合いの手を入れてくれた。


「あー、うーん。今回はー、なんていうか、いろんな意味で、フラワーがダークホースになっちゃってる感、あるよねー」

「うん。二人が失敗したら、その時は私が、って。ずっと、思っていたのに。…………今は、まったくそんな気にならないわ。むしろ、あの空間と関わり合いになりたくない……」

「それは、みんな思ってるよー……」

「このまま、あいつら置いて帰っても、問題ないような気もするけどな。なんかさー、しれっと全部が解決しているか、振出しに戻って仕切り直しになるか、どっちかって感じだよなー。とはいえ、本当に帰ったら、置いていかれた月下美人が荒れ狂いそうだからなー。やっぱ、ナシだよなー…………」


 月見サンが乾いた笑い声を虚ろに響かせ、紅桃(べにもも)が力なく本音を漏らした。

 あー、そうか。

 そうだね。帰りたいけど、帰ったらダメだよね。

 月下さんを怒らせたら、怖そうだもん。


「もう! 何を言っているんですか! お三方の愛の行方を、しっかりと最後まで見届けなくては!!」


 心春(ここはる)だけが、目を爛々と輝かせて、興味津々で身を乗り出すようにして、足元の状況を見守っている。

 さらっと華月の存在を無視しているところが、さすがだ。

 てゆーか、お三方って言ったけど、月下さんの役回りは、どうなるの?

 は!?

 それとも、お三方って、フラワーと月華と華月のこと?

 存在を無視されたのは、もしかして月下さんの方ってこと!?

 ちょっとだけ、気になる。

 でも、聞かない。絶対に、聞かない。

 あたしは、存在をギラつかせている心春から目を逸らし、癒しを求めた。

 いろいろと分かってなさそうで、結果的にマイペースなルナを見て和むことにした。

 ルナは、花の塊にモフモフされている月下さんが気になってるみたいだね。じっと見てる。

 もしかして、ルナもやってほしいのかな?

 ふふ。あれが、羨ましいなんて、ルナは可愛いなー。お胸のサイズは、可愛くないけど。あたしは、そっちの方が羨ましいかなー。

 ううん、癒されたけど、傷つけられた。

 あたしは、真の癒しを求めて、月見サンの空飛ぶ竹ぼうきの後部座席にいる夜咲花(よるさくはな)に目を向けた。

 夜咲花は、あたしたちの間に漂う微妙な空気に気づかないまま、月華を見つめていた。フラワー・ガーディアンに圧されてジリジリ後退中の月華を、心配そうに見つめていた。

 ちょっと、胸がキュンとした。

 だって、夜咲花ってば、フラワー的な意味で心配しているんじゃないっぽいんだもん。

 背後にフラワーがいるから、そこが心配…………とかじゃなくて、純粋にフラワー・ガーディアンに手こずっている月華を心配しているんだ。

 たぶん、夜咲花の中では、まだ黒幕は華月のままなんだろうなー。

 とっくに、フラワーに乗っ取られちゃってるのに、月華を心配するあまり、その後のフラワー劇場は目にも耳にも入ってなかったんだろうなー。

 夜咲花っぽいな。可愛い。


 で、その黒幕を乗っ取ったフラワーが、今、何をしているのかというと。

 えー。猿回しならぬ、妖魔回し?

 なんかねー。

 怒り狂ったおサルさんみたいになっている華月の猛攻を、うまく花鎖も使ってあしらいつつ、ひらりひらりと優雅に躱しているんだよね。

 余裕すぎて、襲われているというよりも、ペットと遊んであげているみたいになってるんですけど。

 フラワーの独壇場って感じなんですけど。

 なんか、もう。

 前回の戦いは、何だったんだろう…………って気分になってくる。

 いや、ベリーを助けた大事な戦いではあったんだけど。

 この現場に急行するまでは、華月ってすごい強敵だと思ってたのに。

 今は、ただのザコ敵っぽい…………。


 なんて、すっかり気が緩み切ったその時。


 事態は、大きく動いた。


 いや、え?

 何?

 どゆこと!?


 フ、フラワー!?!?


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