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第92話 幻の大地 その4

お久しぶりです。ここ最近忙しくて中々書くことが出来ませんでした。

まだしばらく定期的に投稿は出来ないかもしれませんが、

少しずつ書いていますので、今も見てくださってる方、本当にありがとうございます!

「さあ。この山脈を越えていかなきゃね」


『……あの遠巻きに見える巨大な樹が世界樹なんだな?』


『凄まじい大きさじゃなぁ』


『これは霧で覆い隠していないとすぐに見つかってしまうわけだ』


『うむ……そして遠巻きでもかなり魔力が伝わってくる。

正しくこの世界の魔力循環の要なのだな』


「その通り。世界樹は大地から魔力を汲み上げ、放出する。

それだけじゃなく瘴気といった歪んだ魔力を吸収して浄化するし、

世界中のダンジョンと連動していて、魔力を集めて大地に還元したりもしているんだ」


『……つまり、ダンジョンは全部魔王の敷地?』


「中らずと雖も遠からずかな。

流石に全てのダンジョンがそうというわけではないからね」


『……』


『むむむ……』


「あの二匹はすっかり本気で索敵してるね」


『"恐怖"のスキルを珍しくばら撒いてるもんな……』


『アレでは下位の魔物はほぼ近付けんのう』


『まぁ……仕方ない……』



 アスとミカン、この二匹は思い切り周囲を警戒していた。


 この山脈に棲む魔物がかなり厄介で、龍達が呑気に会話している横で

 アスとミカンは割と必死に迎撃していたのである。


 個々の能力はそれほど高くはないものの、

 頭が良く、必ず群れている"キラーエイプ"や、

 岩の鎧を持つ恐竜の魔物の"ストーンアンキロ"、"ストーントリケラ"。

 空から強襲し、猛毒の爪や尻尾で攻撃してくる"ヴェノムワイバーン"。 


 極め付けは"石化の魔眼"を持つ"バジリスク"と"カトブレパス"だ。


 "石化の魔眼"による石化は俺は神力で強引に解除できるが、

 ミカンはそうはいかない。

 

 完全に石にされる前に本体を仕留めなければならないので、

 焦って"息吹"で周囲の木々もろとも消し飛ばしてしまい、

 その爆音でかえって強力な魔物が寄って来るというとんでもないハメになった。


 そして、あまり山を荒らすとホウライの怒りを買うぞ、

 と魔王に釘を刺されてしまった。ミカンが"石化耐性"を獲得してからは

 それなりに余裕を持って倒せるようになったから良いのだが……。


 この山脈、ステータスが高い高ランクの魔物だけでなく、

 状態異常を駆使する魔物もかなり多く、精神的に消耗する。



『"アクアブレード"ッ!』


「グオオオオオッッ!!」


『トドメだーッ!』



 高圧で噴出する水の刃を放ち、"エルダートレント"を切断する。

 そこにミカンの火魔法"ファイアボール"が炸裂し、エルダートレントが沈黙する。 



『……ふう』


『つ、つかれたァ』


「いやいや、お疲れ様だねー」


『……キリがないな……魔力や体力はともかく、

精神的にキツくなってくるな……。……うわ、このトレント美味いな』


『ホントだ、おいしー!』


「半分炭になってる樹木の魔物を齧って

美味いと言い出す君達にボクはついていけません」


『……エルダートレントは……草食の動物にとっては……美味……』


「あ、そうなの……」



 魔王はクロの呟きに曖昧に返答するしかなかった。

 半分龍化したアスはもはや雑食だし、

 ミカンは雑食とかそんな領域を遥かに超えている。


 ……つまり草食、という食性はこの場には一匹とて存在しないのだ。



『肉も野菜も美味しく食えるのが一番だな。うん』


「その炭と化したトレントを野菜と言い切るのは以前の君からは考えられないな」



 魔王は認識を改めた。

 もうここにいるのは以前の元人間という枷に囚われた馬ではなく、

 人間の記憶を持つ、"魔物"なのだと。



『さて、行くか』



 アス達は移動を再開した。流石に龍達はトレントなんて食べない。

 苦笑しながらアスとミカン、

 そしてコッソリ影から取り込んで一部を食べていたクロを眺めていただけである。


 やがて日が暮れ、夜になる。

 夜は夜行性の魔物が闊歩する。視界も悪く、無理な移動は危険だ。


 龍達も休めるスペースがある開けた場所を選ぶ。

 木の枝を集め、ミカンが火をつけて焚火にする。


 焚火を囲んで魔王が口を開いた。



「この分なら、明日には世界樹に辿り着けそうだね」


『そうなのか?あまり世界樹に近付いている実感は無いんだが』


「世界樹は山脈を越えた森の中心にあるけど……。

森までくれば、シャングリラが待っていてくれてるはずだよ」


『シャングリラが?』


「うん。そこの神龍さんみたいな

飛べない子はシャングリラに乗せてもらえば、世界樹まではあっと言う間さ」


『……』



 フラードは無言で魔王を睨んだ。



「あー……ごほん。まあとにかく、この山脈さえこれば

いよいよ世界樹だと思ってくれればいいさ」


『なるほど……』


『ねぇねぇまおうのおじさんはどうしてせかいじゅって

ところにミカンたちをつれていきたいのー?』


「こらこらミカンちゃん、おじさんじゃなくておじいさんでしょ?」


『お兄さんじゃないんかい……』



 アスはボソリと突っ込んだ。

 魔王は意に介していないようでそのまま説明し始める。



「言うなら……監視で……手助けで……戦争のためで……平和のため……かな」


『……』


「君達の群れはこの世界で見てもかなりの物だ。

人間の国の一つ二つ滅ぼすどころか大陸すら掌握しようと思えば出来るだろう」


『……俺達が力を勝手に振るわないように監視しているってのか』


「まぁ、神龍や神馬がいるから大丈夫と思いたいけど……。

それでも、かな?君達のことは把握しておいた方が都合が良いってことさ」


『……チッ』


『…………キモ……』


『悪趣味じゃな』


「君達ホントに容赦無さすぎない?」



 アス達神獣組の辛辣さに魔王は少なからずダメージを受けたようだ。



「……はぁ。こうして理想郷を周って君の

神力のコントロールを鍛えたり、残りの神龍の場所も教えるって言うのに……」


『それに関しては一応感謝はする』


「……それに、君達も人間との戦闘は避けられないだろうしね」


『…………あ?』


「クク。何でもないよ。何れ分かる」



 魔王は不敵な笑みを浮かべる。

 話は終わったとばかりに立ち上がり、背を向けて歩きだす。



「じゃあまた朝に会おう」



 そして次の瞬間には消えていた。

 周囲に魔力も感じられない。……忽然と消えたのである。



『……魔王。……一体何を考えている……?』


『さぁ……。ただ……信用は……しない方が……良い……』


『悪い奴ではないのだがな……』



 クロとフラードは溜息を吐きながら呟く。


 その時、すぐ近くから怒声が響いた。



『テメェ今ここで殺してやろうかッ!!』


『上等だ!逆に殺して死霊龍にしてやるッ!!』


『……あー……神龍様、すみませんのぅ……。

この二匹、夕食の肉の分配で揉めてしまって……』



 アビスが申し訳なさそうに頭を下げる。


 レッカとクライが睨み合いになっている様を見て、

 フラードは一層溜息を深くした。



『きゃー!ミカンもミカンも!』


『危ないから離れとけッ!』


『ガキは遠くにいろッ!』


『そんな配慮が出来るなら喧嘩などするでないわァァァッッ!!』


『『ヒッッ!?』』



 レッカとクライがビクリと震え、固まった。

 フラードに"威圧"され、委縮してしまったのだ。



『……全く』



 フラードは不機嫌そうに尾で地面を叩いた。


 バサバサと、山脈や森から鳥が飛び立つ音がした……。


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