閑話 龍達と空島
最近少し忙しくて、更新ペースが落ちてますが
どうか御容赦ください……。
今回は閑話、久しぶりに魔物解説もあります。
「グオオオオオオッッ!!」
「グオオオオオッ!!」
「グオオオオオッ!!」
「グオオオオッ!!」
一匹の金色に輝く巨龍が咆哮をあげる。
それに追従するように複数の咆哮が辺りから響く。
『お前達!よくぞ無事でいてくれた!
この場に無き神龍様に代わり、礼を言うッ!!』
『ウオオオオオーーー!龍王様ーッ!』
『龍王様こそよくぞご無事で!』
『我ら"王龍"一同、重荷が下りる思いです』
龍王はアス達から解放された後、一匹帝都の跡地で同胞達を呼び集めた。
魔力を乗せた龍種にのみ感じ取ることができる念話を世界に飛ばし、
かつて散り散りとなった同胞、その子孫を一同に集めたのだ。
なお、世界中で龍が飛び回ったので人間達はかなりパニック状態である。
帝都が壊滅した報と合わせて人々の間では不安が広がっているが、
それは龍達はもちろん、例の龍馬達も知る由もないことである。
『お前達。我らが龍種が仕えるべき神龍様は現在、
ある魔物達の助力を持って、その力、その存在を取り戻し始めている!』
龍王の念話が響く。集められた龍達は
その言葉を聞き逃すまいと耳を、身体を龍王へと傾けている。
『その魔物は馬の魔物の身でありながら、
我ら龍と同等の力を身に着け、そして同時に龍の呪いを甘受した身だ!』
『呪龍なのですか!?』
一匹の龍が思わず念話を飛ばした。龍王はその龍へと返す。
『王龍ティンバレス。その通り、かの魔物は呪龍の力を持っている』
『呪龍は……闇に堕ちた龍。それは神龍様によって排除されるはずでは?』
ティンバレスは疑問を口にする。
本来、呪いの力を宿した邪龍の類は、神龍によって討滅、浄化されるのだ。
しかし、龍王は首を横に振る。
『あの魔物は後天的に、それも外部から呪いだけが刷り込まれている。
生まれ付いた性質でもなければ、自身が身に着けた能力でもない』
『……呪いだけが、独立しているという事ですか!?それは、不味いのでは!?』
『今は、大人しい。しかし、何をキッカケに暴走するかはまだ分からない。
ただ、確実に言えるのは、あの魔物は、悪龍でも邪龍でもない、ということだ』
いや、馬だし、もっと言えば元人間だから!しかも何だよ悪龍とか邪龍って!?
アスがこの場にいればそう思っただろうが、
生憎幻の大地へと向かっており、この場にはいないのであった。
『それに、形はどうあれ、神龍様はあの魔物に大恩があると言う。
我ら龍種は、恩あるものに刃を向けるほど愚かな存在ではない』
『……むむむむ……それは……そうですが……しかし、呪いは……』
『くどいぞ……ティンバレス……』
『……申し訳ありません』
ティンバレスは龍王に睨まれ、押し黙った。
龍王は周囲の龍達を一瞥し、答える。
『現在神龍様はその魔物達と共に、
残る力の手掛かりを得るために移動しておられる。
そこで我々は一度神龍様が現在拠点としている地へと向かう。
その地にて準備を整え、然るべき時が来た時、
我らは故郷……龍の谷を取り戻すッ!』
『『『オオオオオオッッッ!!!』』』
龍達の咆哮が地を揺るがす。この場にいる数十の龍がいれば、
大国でさえ軽く滅ぼすこともできるのだが、彼らはあくまで神龍が最優先だ。
龍達は飛び立つ。空島へと。
『ナ、ナンダアレハ!!』
『龍ダ!』
『ドラゴンダ!退避、タイヒ~!』
昆虫族は大騒ぎだ。最も、自分が住んでいる所に突然見知らぬ龍が
何十体もやって来てはそれもそのはずなのだが……。
『小さき者達よ!静まれ!彼らはお前達に危害を加える存在ではないッ!』
龍王が念話を飛ばして回る。龍王が目配せすると、
それを受けた龍達は一匹ずつ、ゆっくりと空島に着陸し、
何と昆虫族達にその巨体を屈ませる……頭を下げたのだ。
『お前達、この小さき者達はこの地の生産を担っている。
蜂や蝶ならば蜜を。蜘蛛ならば糸を。蟻ならば肉体労働を。甲虫ならば狩りを。
これからのお前達の食糧や生活を支える者達だ。しっかりと友誼を結べ』
『ハッ。皆さん、お初にお目にかかります。
"王龍ティンバレス"という者です。どうぞよろしくお願いします』
『あらあら……随分と腰が低いのですね……?』
キラーアントの巣穴から、一匹に大蟻が念話をかけながら現れる。
『ハッ。我らはいわば居候。なら相応の立場となるでしょう。
この場では私ティンバレスが代表して挨拶を……。
……と、失礼、良ければ名をお聞かせ願えるか?』
『ハイ。私はクイーンアントという者。この地の昆虫達を取り仕切っていますわ』
『なるほど……通りで念話も達者なわけですね』
『ふふ、これは日々の訓練の賜物ですわ。
殆どの昆虫族も、簡単な念話なら出来るように仕込んでありますから、
皆様もご用命があればお声をかけて下さって大丈夫ですよ』
クイーンアントのその言葉を聞いて龍達は『おおッ!』と感嘆の声を上げた。
昆虫族は基本的に知能が低く、念話を用いる個体は稀だからだ。
教わる相手でもいない限り……。
『それは素晴らしいですな』
『ええ。これも我らの主のおかげです』
『……主?ここの昆虫族は貴女が取り仕切っているのでは?』
『ええ、"昆虫族"は』
『……左様ですか』
ティンバレスはクイーンアントらを超える強い魔力を感じ取っていた。
クイーンアントの口ぶりからも、あくまで彼女は
昆虫族のみの長なのだろうと判断し、感じた魔力の方を向く。
(魔鉱龍……!?……何故そのような特殊個体が……?
それに魔鉱龍と共にいるあのスライムも……スライムにしては魔力が強い)
魔力の強さは、気配の強さ、存在感として放たれる。
ティンバレスを始め龍達は、この島がただの島ではないと感じた。
『お前達、これからお前達が住む場所に行く。
こちらのクイーンアント殿の話で、向こうの火山の周辺の山……。
あの山を飛龍の系統は住処とせよ。
地龍の系統は、この地にいる魔鉱龍と共同で生活してもらう』
龍王は龍達に指示を出す。そして、最後は龍達を威圧しながら話した。
『くれぐれも、この地に住む者達に迷惑をかけるな。
特に、火山にすむお方は怒らせてはならんぞ。
あの山には、神獣の一匹が棲んでおられるのだ。良いなッ!』
『『『ハ、ハハーッ!』』』
神獣、それは強大な力を持つ龍達でも恐れ敬う存在。
龍達は、この島で暴れるのは絶対にダメだ、と無言の結束を交わしたのだった。
~魔物解説~
・王龍
龍の王族……ではなく、次代の龍王候補の龍のこと。
龍王候補である王龍に選ばれるには、Sランク以上の龍種であること。
三属性以上の属性の適性を持つこと、の二つが最低条件。
例えば王龍ティンバレスは、火、風、土の三属性を扱うことができる。
そしてSランクの龍種なので、【王龍】の称号を持って、
龍王候補として君臨している。因みに王龍はあと三体いる。
しかし、火龍レッカのように、Sランクの龍ではあっても、
火と風の二属性しか適性がないため、王龍にはなれない、という龍もいる。
というか、殆どの龍は属性特化、或いは二属性である。
三属性以上適性があっても、Sランクの龍種になれなければ
王龍候補にはなれないので、王龍になれる龍はそれなりに貴重と言える。
因みにアスは一応(本当に一応)龍種で、Sランクであり、
水、風、雷、闇の適性を持つため
実は王龍になる最低条件は満たしていたりする……。
なお本人……本馬は王龍になる条件どころか存在すら知らない模様。
神龍のフラードも態々王龍の事を一々話したりもしていないため、
仕方ないと言えば、仕方ない……のかもしれない。




