第89話 幻の大地 その1
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『スノーウルフ……か』
『おおかみさんー』
スノーウルフはCランクの魔物。俺達が負ける理由もない。
ミカンだけでアッサリ片付くのだが、数が多い。
俺に対しては龍麟によって牙や爪が通らない。……これが、龍の力なのか。
脚に噛み付いたものの、ビクともしない俺に
一瞬動きが止まったスノーウルフをもう片脚で頭を踏み潰す。
横ではミカンがスノーウルフを取り込んでいた。
『チッ……アイツら、どうせ負けないだろうからと置いていきやがって』
俺達を置いて行った魔王らを追いかけて小走りで後を追う。
今のところ曇ってはいるものの悪天候ではない。さっさと追いつこう。
雪原には主に寒冷地に住む魔物とアンデットが出現する。
最も弱いのはスノースライムなのだが、ここでは上位のアイススライムが出るようだ。
他にはスノーウルフに、スノーマン、ブリザードという精霊のような何か。
ホワイトベアにビッグトド、ロイヤルペンギン等だ。
しかし厄介なのはアンデットの方で、ウォリアースケルトンはまだマシ。
ゾンビナイトという盾にスケルトンメイジという魔術師。
ボーンスパイダーという骨の蜘蛛。ゾンビライダーという腐った騎獣に乗るゾンビ……。
『はあ……はあ……。何で、アンデットがこんなに強いんだ……ッ』
『ミカン……さすがにつかれたー……』
アンデットのタフさは厄介だ。頭をフッ飛ばしても立ち上がることもある。
確実なのはバラバラにすることなのだが……。スケルトンはともかく、
ゾンビは悲惨なことになるのでやりたくない。遠距離から雷魔法で炭にした。
「ははは、だいぶお疲れのようだねー」
『おかげさまでな……』
ミカンのレベルが40を超えたし、有意義ではあるのだが……。
そんなことを思い、息を整えながら先を進んでいると、魔王が立ち止まった。
『……アレは……』
「ふむ。お馬さん、アレには勝てるだろうか?」
『……分からん』
『ただ者ではないな……あのスケルトン』
フラードが言葉を漏らした。
フラードが言う通り、あのスケルトンからはただならぬ気配を感じる。
『……』
左眼に魔力を込める。……どうやら、"鑑定"は通ったようだ。
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種族:ヴァルハラナイト
系統:アンデット系
状態:普通
LV :50/99
HP :79650/79650
MP :67850/67850
攻撃力:91450+7484
防御力:70800+11998
魔法力:61950
魔防力:59000+2200
素早さ:84960+5394
ランク:SS
装備:
E.英霊の剣
E.英霊の盾
E.英霊の兜
E.英霊の鎧
E.英霊の籠手
E.英霊の膝当て
E.英霊のグリーブ
E.英霊のマント
攻撃系スキル
「全力攻撃:LV9」「剣術:LV9」「槍術:LV9」「斧術:LV9」
「格闘術:LV4」
魔法系スキル
「闇魔法:LV6」「強化魔法:LV6」
技能系スキル
「魔力感知:LV9」「魔力操作:LV9」「気合法」「魔戦法」
「空間把握:LV9」「暗視:LV9」「隠密:LV6」「忍び足:LV6」
「HP自動回復:LV9」「MP自動回復:LV6」「命中補正:LV6」
「回避補正:LV6」「危険察知:LV9」「指揮:LV4」「統率:LV4」
「連携:LV4」「属性付与」「腕力強化:LV6」」「堅守:LV6」
「加速:LV6」「威圧」
耐性系スキル
「闇耐性:LV9」「物理耐性:LV6」「魔法耐性:LV6」「苦痛無効」
「状態異常無効」
ユニークスキル
「縮地」
称号
「英霊」「魔王の配下」
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『……油断はできないぞ。ミカン!』
『うー!』
『……ぬぅ……』
使い込まれた様子の古びた真紅の装備一式に身を包む骸骨剣士。
その構えは自然体でありながら隙を感じさせないモノであり、
戦闘において明確な格上であることをアスは否が応でも感じ取った。
『なるほど、英霊ね……』
ヴァルハラナイトの動きを見逃すまいと警戒しつつ、
ミカンの前に立つ。
ミカンの場合"魔力変換"で強引に能力を底上げしなければ
ヴァルハラナイトと戦うの厳しいだろう。
だが俺は、能力だけなら大差はない。地力の差はあるだろうが……。
『ミカン!』
『……!りょーかいー!』
俺はミカンに念話を飛ばして指示を出した。
ミカンはすぐさま"繭纏"で防御形態になり、俺の背後に陣取った。
さて、何処から来る……?
ヴァルハラナイトが剣を構えて、駆けた。
右眼はともかく、俺の左眼を舐めるなよ……!
呪龍眼はヴァルハラナイトの動きを捉えている。
なら俺がその動きに対応さえできればッ!!
『"ウィンドバリア"ッ!』
周囲を強風の結界で覆う。
がヴァルハラナイトはアッサリ風を剣で断ち斬った。なら……!
『"サイクロン"ッ!』
暴風を、周囲を薙ぎ払うように引き起こした。
この密度は流石に斬れないのかヴァルハラナイトが距離を取った。
……判断が的確だ。恐らく接近戦はまず勝てないと見るべきだな。
……ミカンをどのくらい守れるかにかかっている。
『……ふぅー……』
一呼吸置いて、俺はヴァルハラナイトを見据えた。
全身に魔力で刺激を与えて強化する。"気合法"だ。
緩やかに魔力を消費するが能力に補正が入るスキルだ。
そしてウィズダムから与えられている付与スキルを確認。
よし、行ける!
『"重力操作"ッ!!』
「ッ!」
指定した範囲……ヴァルハラナイトの周囲の重力を強化する!
重くすればするほど魔力を消耗するし、軽くしすぎても魔力を喰う
使い勝手の悪いスキル……いや重力に影響を与える以上贅沢は言えんか!
ヴァルハラナイトは重力の重みによって、片膝を付いた。
よし、今だ!
俺はそのまま雷魔法でヴァルハラナイトを狙い撃ちした。
身体をまともに動かせず、スキルの発動もままならぬ様子の
ヴァルハラナイトはまともに被弾しまくっている。
『うわぁ。えげつない……』
『あの拘束、神龍でも動けなかったからな……』
龍達はアスの戦法に引いていたが、
本人、いや本馬は必死だったために気付かなかった。
「……」
『……はぁー……はぁー……そろそろ限界か……』
そのままアスは魔力が残り三割といったところで重力を元に戻した。
ヴァルハラナイトにある程度のダメージは与えたのだが、
高レベルの"HP自動回復"によって決定打にはなり得なかった。
『クッ……』
立ち上がったヴァルハラナイトが剣を向けた。
その動きは先ほどの強者の余裕を醸し出すものではない。
確実に、殺しに来ている者の動きだ。
(速い……ッ!)
たった数歩で距離を詰めたヴァルハラナイトの魔力を帯びた剣を
神力を纏わせた翼で受け止める。神力により強固な魔力の膜を張っている
翼は龍麟に覆われていることもあり、英霊の剣を受けきった。
『確か……こうか!"吸魔"ッ!』
アスの翼から纏わりつくような闇の何かが剣に絡みつき、
それがヴァルハラナイトに付き纏う。
ヴァルハラナイトがそれを払い飛ばそうと剣を動かそうとしたが、
さらに剣には"ダークバインド"……闇の魔力による拘束で
翼ごと縛られビクともしない。ならばと盾を叩き付けようとした
ヴァルハラナイトは、盾を落とした。
『範囲指定が小さいと、魔力消費はそれほどでもないんだぜぇ……ッ!?』
"重力操作"で盾だけを、アスは極端に重くしたのだ。
そのためにヴァルハラナイトの骨の腕は盾を取りこぼしてしまった。
『これでどうだッ!』
アスは神力を纏わせた前脚で盾を踏み蹴る。
神力が滲んでいるために呪われた装備である盾はひびが走った。
一方で剣は剣で神力に阻まれ刃も呪いもアスに通らない。
その上剣は翼と腕ごとガッチリ縛られ、ヴァルハラナイトほどの
戦士でもビクともしない。剣を離すこともできない。
それは縛られているだけではなく、闇魔法"吸魔"によって魔力を奪われ、
スキルを使うことを始めとした魔力操作に支障が出ているためだった。
『……アイツ、守りに特化すると、もしかしなくても相当強い?』
『うーむ。出が早い雷で牽制。風で防御と攻撃、闇で防御と妨害。
……何より、万能性の高い神力を一応練れるし、重力なるものを弄れる。
……恐らく今までの奴の戦法が合っていないのと、
スキルを上手く使いこなせていなかったのがあるのだろうな』
龍達はアスが思いのほか善戦している様子を分析していた。
神龍のフラードさんはどこか解説口調なのだが。
しかし、それ以上にアスはもう、懲りていた。自分に。
この世界に馬として蘇り、もうすぐ一年になるのだろう。
その短い間に何度も死に掛けたし、後悔もした。
それはひとえに自分が自分でないことを恐れたからだ。
人間の感覚のまま、肉体は馬になり、左眼は龍になり。
やがて翼が生え、そして気付けば半龍半馬のような何かになった。
自分はいったい何者なのか?
どうしてこのような姿になったのか?
その理由をある程度知っていても、理解すれども納得は出来ない。
ああ、結局俺は。
『……人間のままが良かったのかもな』
ボソリと呟いた。でも今はこの姿で良い。
空島にいる者達をはじめ、
知性ある魔物達は、見た目はああだが、気の良い者達ばかりだ。
人間のように、騙したり裏切ったりというようなことも幸いにして無い。
俺は、馬にこそなったが、そんな恵まれた者達の環境にいる。
だが、それに甘えて享受してばかりじゃダメだ。
自分自身にも甘えを与えることも、なおダメだ。
『おうまさん!おまたせ!』
ミカンが準備完了の念話を飛ばした。俺は答える。
『ミカンッ!限界まで注込んだんだなッ!そのまま俺ごとぶち抜けッ!!』
『……いくよ』
一瞬驚いた様子だったが、すぐにミカンは落ち着いて、
動きを縛られたヴァルハラナイトの背後を取った。
ああ、俺はこんなにも信用されている。
ミカンからは、敵を倒す意志こそ感じれども、
俺がミカンの攻撃で死ぬとは微塵も思っていないことが分かる。
だったら、それに答えなければ。
今の俺は……人間じゃない、そう。そうだ!
『空島の主、アスなんだよッ!!』
アスはそう叫んでいた。ミカンは心なしか嬉しそうにした。
そして、限界まで込められた膨大な魔力のエネルギー波……。
かつて死霊龍の息吹を正面から撃ち破ったあの攻撃……。
"ハドウ"を、思い切り放ったのだった……。




