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第88話 幻の大地へ

「……死んだ……」



 数人の男たちがテーブルを囲って重い口を開いていた。

 完全にお通夜状態となっている。



「聖女様が……マリー様が亡くなられた……」


「……お前の神聖魔法でもダメだったのか……?」


「ああ……症状の改善が見込めていたのだが……。

つい昨日だ。容体が急変し、そのままアッサリと事切れてしまっていた……」


「……何が原因だったのだ?」


「……恐らく、マリー様の中にあった、伝承の龍が原因だと思う。

昨日、マリー様のものとは異なる魔力が、

マリー様の身体から急激に噴出してきたのだ」


「……龍の封印は万全ではなかったのか?」


「……分からない。なんせ600?700年は前の話らしいからな」


「時間が経つにつれて封印が弱まったというのか?」


「いや。それならもっと早く症状が出ていてもおかしくはない。

引っかかるのは、ここ最近で急激に龍が活性化しているということだ」


「最初に症状を訴えたのは?」


「確か半年は前のはずだ。その時は少し胸が痛む程度だったらしいのだが……」


「むう……一年もしない内に、聖女様が……か」


「それで、どうする?拘束力を失った身体から龍が這い出るかもしれんぞ?」


「今はまだ封印が機能している。不本意だが新たな聖女を立てるしかあるまい」


「……龍の封印を受肉してくれる者がいるかどうか……」


「精一杯の保証をするしかないだろう。俺も出来るだけケアする」


「……龍を討滅しては、ならないんだったか?」


「ああ。伝承の通りなら、龍を排除することは神敵になると同義とのことだ」


「……どういう、ことなのだろうか」


「分からん。十何代も前の勇者が言ったことを、俺が知っているわけないだろう」


「……それは、そうだが」


「それよりも、封印が破られる前に新たな器を用意する方が先だ」


「……分かった」



 男達はそう言って、部屋を去っていった。



『……ふむ。まあ、こんなものか』


『いや、デカすぎない?』



 空島に一匹の巨龍がいる。龍達が守っていた分体と融合し、

 五本目の首を取り戻したフラードだ。


 その全長は恐らく数百メートル。いや、デカすぎない?


 "変化"のスキルで見慣れたサイズにフラードが縮んだ。



『見た目はもう殆ど龍だな』


『まだ完全体ではない。が、多少は力を取り戻した気分にはなったな』


『……多少、ね……』



 ……あえて何も言うまい。



『神龍の全盛期はこんなものではないからな』


『あれはな……睨まれただけで生きた心地しねえからなぁ』



 レッカとクライがうんうんと頷きながら呟いた。そうですか……。


 フラードが力を取り戻して数日後のこと。



「や。久しぶり」


『ああ……まあ、久しぶり』



 魔王が来た。……その手には妙な石を持っている。



『シャングリラはどうした?』


「彼女はボクをここに運んだところで帰ったよ。

で、君達は世界樹まで行く準備は出来たかい?」


『ああ、少し待ってくれ。

俺とクロ、あとミカンは行くんだが……他は誰が行くか揉めていてな』


「ほー。そりゃまたどうして?」


『龍三匹はフラードの分体の回収をしたいらしいし、

虫達は未知の領域には行きたくないらしい。

龍王は何か地上でやっているみたいだし』


「ああー……なるほど」


『フラードは特に世界樹に興味があるわけではないみたいだし。

そもそも、飛べないことを気にしてるみたいだ』


「ん?ああ、移動手段については問題ないよ?

ボクが持ってるこの石で行くからさ」


『……どういうことだ?』


「これは"転移石"。持ち主が行ったことがある場所なら転移できるんだよー。

使い捨てで、使うと砕け散っちゃうんだけどねー?」


『……それで行くと?』


「うん。人数制限は別にないし」


『……分かった。龍達を連れて行こう。

フラードの分体の場所を教えてやってくれよ?』


「クク。そりゃ、もちろん」



 俺は龍達を呼びに行った。結局留守番は魔鉱龍達と昆虫族。

 フェニックスたちはノーカン。アレらは同居人に近いからな。


 幻の大地に向かうのは、

 俺、フラード、クロ、ミカン、レッカとクライにアビスだ。



「それじゃあ、準備はいいかな?」


『ああ』


「うんうん。じゃー行こうかー!"転移石"ッ!」



 掲げた石がパキリと砕けた。そして視界が歪む。


 次の瞬間には、もう違う景色が広がっていた。



『……ここが……幻の大地……?』



 誰かが呟いた。



「人間達はそう言い伝えてるみたいだけど……僕達は違うね」


『何て呼んでるんだ?』


「僕達は、魔物達の楽園……理想郷(エデン)と呼んでるね」


『ふうん……さぶッ』



 冷たい風が身体を撫でた。



「ここは霧の海岸と呼んでる場所だ。ほら、海には霧がかかっているだろう?」


『……そうだな、向こうは何も見えん』


「あの霧には幻覚作用や方向感覚を狂わせる力があってね。

普通の人間にはまず抜けられないよ」


『……』


「ま、海にはリヴァイアサンやらが巡回してるし、

そういう面でも勝てないだろうけど」


『恐ろしいな』


「この島には戦えない魔物も大勢いる。人間に辿り着かれてはならないよ」


『そうか、とりあえず……寒いから案内してくれないか?』


「ああ、そうだねー。クク、忘れてたよ」


『……どうだか』


「ま、そんなことより。こっちだよ」



 魔王が先導して歩き出したので、その後を着いていく。



『ここから世界樹までどのくらい離れてるんだ?』


「そうだねぇ。海岸の先の雪原を抜けて洞窟を突破し

山を踏破した先にある森の中心に世界樹があるよ」


『飛んでいい?』


「神龍はどうするつもりなのさ?」


『……フラード、すまん』


『いや……聞くだけでも距離があることが分かるからな……。

飛んで行こうと思うのも仕方あるまい。

むしろ私が飛べないことを謝るべきだろう』


「謝り合戦は勘弁してくれよー?」


『分かったよ……ん?アレは……スケルトンか……?』


『いや。あれはウォリアースケルトンだな。武装しているだろう』


「雪原と海岸を預かっている兵士だよ。なにボクがいる限りは襲われないさ」


『……お前がいなかったら?』


「さあ?」


『……さあって……』


「ま、普段は治安維持の面が強いから

そこまで強いのは置いてないから大丈夫さー」


『…………』


「さ。そろそろ雪原だ。吹雪が起こることもある。それに……」


『それに?』


「普通に魔物が襲ってくる」


『……アンタ、魔王だろ?』


「世界樹の天辺で籠ってるからねぇ……魔王としての力を行使すればともかく。

魔物達に魔王だとは知られてはいないんだよねぇー」


『……えぇ……?』


「まあ、そんなわけだから、アスくん頑張ってねー」


『はい?』


「僕は当然だけど、もちろん龍達に神龍と神馬には手は出させない」


『……どういうつもりだ?』


「これも修行だよ。まずは世界樹まで辿り着いてみせるくらいじゃないとねぇ?」


『……腑に落ちねえが、良いだろう。やってやるよ』


「そうこなっくちゃー!流石お馬さんー」


『ミカンもーやるのー!』


『……コイツは良いのか?』


「あー。ま、良いよ。一匹は寂しいだろうしねー?」


『……うっせえな』


『アス、ミカン。無理はするなよ』


『ああ。勿論だ』


『頑張って……応援、してる』


『さっさと倒せよ。先に進めねえからな』


『クライ、余計なことを言うんじゃない』


『ふぅ。……よし、ミカン、行くか!』


『うんッ!』



 魔王の本拠地……?いや、それは世界樹か。

 とりあえず、幻の大地と呼ぶことにしよう。


 俺はミカンと二匹で幻の大地攻略を目指すことになったのだった。


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