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第76話 アスの作戦

「バカな!一体どうなっているのだッ!!」



 一人の男が荒々しく叫んだ。



「侯爵様、ですから……帝都に魔物の大群がッ!!」


「そんなバカな!確かに近頃、帝都近辺に

新種らしき魔物発見の報告はあった!

だが、まるで魔物暴走(スタンピード)の様な

短期間での大群発見の報告はなかったハズだ!」


「しかし、現に今……」


「……ぬうう、騎士達を出せ!

帝都に乗り込んだ魔物を倒しつつ、

我々の安全を確保するのだ……!」


「わ、分かりました……!」


「帝都の守備隊は何をしておるのだ……ぬう……」



 今、まさに帝都は火急を告げていた。



「「「ギギギギギ!」」」


「クソッ!何なんだよコイツら!強すぎる!」


「や、やめろ!来るなッ!ギャァア!!」



 帝都各地に突如、無数の穴が空いた。


 そして、そこから全長10mはあろうかという

 銀色の恐竜が無数に現れ、都を蹂躙し始めた。



「おらァァッ!」


「ギガァッ!」


「た、隊長……!わ、我々だけでは……、

とても……!」


「弱音を吐くな!我らが倒れれば、

次は城が狙われるのだぞ!」


「しかし!我々では複数人で当たって……ぬぅ!

……何とか!互角に、持ち込める……相手です!」


「だからどうしたというのだ!

それが我々が防衛を放棄する理由にはならない!

さあ私に続けェッ!!"烈空斬"ッ!」



 "剣術"スキルでガード恐竜ロボットを吹き飛ばす。


 この男は帝都守備隊の隊長であり、その戦闘力は高い。


 冒険者ならばAランクの冒険者と同等と言える。


 だが、唐突に大群で現れ、ロクな準備も出来ず、

 寡兵での戦いを余儀なくされた彼らは苦戦していた。



「クッ……ギルドは……何をしている!?

いくら国家権力とは不干渉であるとはいえ、

共通の敵の出現には協力体制を取る条約のハズだ!」


「それが!冒険者ギルドも魔術師ギルドも……

高ランクの人材が不在のようで……とても、はぁ……

対処できずに、いるそうで……!

その上、冒険者ギルドのギルドマスターは……

はぁ、行方知れずと、なっている……らしく!

魔術師ギルドの方は、前衛職が居らず防戦一方との……ことです!」


「何だとォッ!?何故、ギルドマスターが不在なのだ!」


「それが、ちょうど……魔物の調査に……

出向いていたらしく……!」



 肩で息をしている兵士達の説明を聞き、隊長は判断した。



「魔術師ギルドに行くぞ!この場を切り抜けろッ!」



 しかし、魔術師ギルドに合流出来ても、

 戦況は好転しないだろう。


 ハッキリ言って異常だ。

 恐竜の魔物のようだが、明らかに生命体ではない。


 何より武器を当てた時に響く金属音。

 そしてミスリル製の剣が、斬り裂くどころか

 使えば使うほど刃こぼれしていく。



「まさか……魔法金属の……機械だというのか……?」



 隊長は、信じられないものを見るように、

 誰にも聞こえないような大きさの声で絞り出した。



「……クソッ」



 隊長達は最後まで抗ったが、

 ついに魔術師ギルドにたどり着くことは無かった。


 魔術師ギルドが、持たなかったのだ。


 十数名のギルド職員とギルドマスターは

 障壁を貼り、何とか堪えていたが、

 空中からプテラノドン型の魔法の嵐、

 地上にはティラノサウルス型の顎と脚、

 そしてトリケラトプス型の突進により

 耐えきれず、打ち破られてしまった。


 そうなれば後は各個撃破されてしまうだけであった。


 非力な低ランクの人材はラプトル型に次々狩られた。


 それはもう、一方的な蹂躙であった。



「チクショォォォォオオッッッ!!」



 隊長の叫びが、兵士達の断末魔が木霊した。


 そして、それとは別に事件が起きていた。



「……バカな……」



 男は屋敷の窓から、外の光景を見ていた。


 目の前には、一匹の龍。

 そして、どこからともなく現れた

 無数の"キラーアントフライ"と呼ばれる蟻の魔物。


 龍は街の広場を地下からぶち破り、地上に現れるなり、

 龍の代名詞たる"息吹"をお見舞いして街を破壊した。


 瞬く間に阿鼻叫喚の地獄と化した街の人間達が逃げ出す。


 しかし、騎士も国民も無差別にキラーアントフライの

 大群に襲われて瞬く間に蹂躙されていく。



「子爵様!早くお逃げください!!」


「むぅ、分かっている……」



 男が屋敷を離れるために移動しようとした時だった。



『させねえよ』


「ッッ!?」



 頭の中に低いトーンの声が響き、思わず龍を見た。


 ──そして、屋敷は"息吹"の光に包まれた。


 しかし、この光景はこの地だけで起こっていた訳ではなかった。


 帝都周辺の幾つかの、都市でこの現象が発生していた。

 まず都市を破壊し、その都市の貴族を殺害。

 (判断基準は、何か豪華な服装や装飾をした人)


 そして、一般人は死なない程度に痛めつける。

 冒険者や騎士等の武装しているものは、

 必ず集団で襲い掛かり、確実に仕留める。


 そうして帝都周囲の都市を壊滅させる。


 ある程度破壊したら撤退し、次の都市を破壊する。


 魔鉱龍とキラーアントフライ達はこれを繰り返す。


 それがアスの作戦の一つだった。



『アスよ。普通に帝都を消し飛ばせば良いのではないのか?』



 空島からウィズダム越しに地上を観ていたフラードが尋ねた。



『そうもいかない。龍王は帝都の魔力動力源として

魔道具に繋がれているらしい。しかも、

下手な処理をすると龍王の命に関わるそうだ』



 それはウィズダムが提示した情報と、

 受付嬢が断片的に知っていた知識を統合し、出した結論だ。


 いくら龍王が、龍種であり高い魔力を保持しているとはいえ、

 一国が消費する魔力全てを賄うのは無理がある。


 そして……。



『龍王を捕らえる事が出来る何か……。

この国のそれが分かるまでは、下手な手出しはできない』


『むう……』



 アスはそれを一番警戒していた。

 それを聞いたフラードも渋い顔をした。


 だからこそ、アスは破壊されても構わない

 "ガード恐竜ロボット"達を帝都襲撃の尖兵に使ったのだ。


 流石に都が壊滅の危機に瀕すれば、

 嫌でもその最終兵器を炙り出せるハズだ。


 アスは、そう睨んでいた。


 加えて魔鉱龍達には帝都周辺の都市を徹底的に

 破壊し、住民には重軽傷を負わせるように命令した。


 簡単な理由だ。瓦礫の山と、無数の怪我人を作るのだ。


 帝都に魔物が襲来した。それは恐らく他の都市に

 連絡が回るだろう。魔法がある世界だ。


 俺ではないが馬を走らせたり、鳥を飛ばすよりも

 確実で早く情報を遠隔地に伝えられる

 手段がある可能性はあるだろう。


 しかし、いざ援軍を送ってみて、帝都までの道である

 近隣都市が瓦礫に埋もれ、怪我人だらけならば?


 ……まず瓦礫の撤去をしなければならない。

 出なければそもそも行軍出来ない。


 嫌でも足止めが出来るわけだ。


 さらに都市を徹底的に破壊すれば、

 物資の補給もままならないだろう。


 おまけに住民全員が怪我を負っていると来た。

 全員死んでいる、ならまだいい。


 ()()()()()というところが厄介なのだ。


 生きていれば、怪我の治療をしてやらなければならない。

 まさか自国の重軽傷の国民全員を見捨てる、

 なんてことをした日には国家は国民の信用を失うだろう。


 国とは民が基盤で成り立つものだ。

 民を蔑ろにする国に明日はない。


 そして、ついでのように医療物資も消耗させられる。


 ……正直、外道としか良いようがないと思う。


 しかし、成しえてしまうのだ。

 地下を行き、圧倒的な力を誇る地龍の変異種である

 魔鉱龍と、空を飛び、ジェネラルアントという指揮官を持つ

 キラーアントフライの大群。


 龍が都市を破壊し、キラーアントフライ達が

 指揮官に従って住民を生かさず殺さずで痛めつける。


 抵抗する奴は息吹で消し飛ばすか、数で圧倒すれば良い。

 多少は損害が出るだろうが、それに見合う戦果ではあるはずだ。



『……まあ、利用しない手は……ないよな』



 アスは、地上の光景を眺めながら、呟いた……。



 ※魔物解説


 ・キラーアント


 Dランク。昆虫系の魔物。


 黒い光沢のボディを持った、

 全長数メートルに及ぶ巨大蟻の魔物。


 基本的な生態は普通の蟻と同様だが、魔物らしくかなり獰猛。


 上位種になれば、知能が高くなっていき、

 "女王蟻"に至れば魔物でも

 中々習得出来ない"念話"のスキルを獲得出来る。


 階級の上下がハッキリしており、

 キラーアントは反乱を起こしたりすることはない。


 ただし、女王蟻が死んだ時に後継者がいなければ

 女王蟻を決めるために雌のキラーアント達が争う。


 ちなみに蜂の魔物の親戚に当たる。


 上位種はそのままスペックが上がった"ハイキラーアント"。

 毒や酸を飛ばす"アシッドアント"

 硬い甲殻に身を包む"シールドアント"

 土魔法を扱う"アントマジシャン"

 羽を生やし、飛行能力を得た"キラーアントフライ"

 等がある。いずれもCランク。


 さらに上位種にはBランクの"ジェネラルアント"。

 女王蟻の近衛である"ロイヤルガードナーアント"。


 そして女王蟻の"マザーアント"、"クイーンアント"。


  マザーアントがクイーンアントに進化するためには、

 『女王蟻』の称号持ちがレベル最大の状態で

 部下が合計二千匹以上であり、その内

 Bランク以上の部下が三体以上、

 そしてそのうちの最低一匹は『指揮』『統率』の

 スキルを持つ、という条件である。


 早い話子供二千匹、ジェネラルアントが最低一匹で

 それ以外のBランクの子供最低二匹いる状態で

 レベルが最大になる、というもの。


 滅茶苦茶面倒くさい条件である。


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