第69話 蟻の巣おもてなしの会
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皆様、本当にありがとうございますッ!!
ここは、キラーアントの巣の中。
今、この中では大勢のキラーアントが忙しげに
わらわらと動き回っていた。
そんな中、大広間のような空間で、一匹の蟻が
キラーアント達の前へと立つ。
『良いですか。本日は、アス様の大切なお客様を
おもてなしする日です。各々、与えられた役割を
確実にこなしてください!
なお、サボった者にはアス様が直々に、ありがたーい
ご忠告をして下さるそうです』
「「「ガタガタガタガタ」」」
キラーアント達は震えた。彼らの中では
蒼翼の天馬は、怒るととても怖い主君で定着しているからだ。
『本日のお客様は、"魔鉱龍アダマンタイト"と、
そのお子様方。それから"魔鉱龍ヒヒイロカネ"。
"魔鉱龍ダマスカス"。以上となります』
その後、命令を飛ばす蟻は
キラーアント達に諸注意の連絡をし……。
『では、配置について……よーい。どん!
行ってらっしゃい!可愛い我が子達よ!』
『『『イエッサー!!』』』
大量のキラーアント達が、また移動して行った。
『大したもんだなぁ』
一匹の魔物が音もなく現れる。
『……これはこれは、アス様。
お前達、警戒は解きなさい』
「「……」」
ロイヤルガードナーアント達は警戒を解いた。
二頭の蟻に護衛されていた蟻が、恭しく頭を垂れる。
『やめてくれ。キラーアント達からすればお前が主だろう?』
『……分かりました。アス様』
頭を上げつつも、その蟻の態度はどこか不満げだ。
『済まなかったな。留守にしてそうそう、
こう難題を押し付けてしまって』
『構いません。子供達に仕事を与えることで、
私達も生き生きとしますから』
『大したもんだよホント。マザー……じゃぁなかったか』
『はい。"クイーンアント"ですよ。アス様』
『悪いな。進化するところ、見届けられなくて』
『いえ……恥ずかしながら、私は戦闘が苦手で』
『だが、キラーアントの数を増やす能力と、
命令を下す能力に特化している。
数の力は脅威だ。人間やスライム然り……』
アスは何時ぞやのスノースライム事件を浮かべた。
……そういえば、ヤマヒメや、
山で別れた昆虫族達は元気だろうか?
『そうですね。……それでも私達は、弱いです』
『神獣や龍達と比較したらダメだろう。
それに、キラーアントには彼らだけの強みがあるさ』
『……そうですね。私も、もっと
子供達に相応しい存在にならないと!』
『気負いすぎるなよ。フラードみたいになんぞ?』
『……それはちょっと』
クイーンアントは遠慮気味に否定した。
現在フラードさんは眠っている。
憔悴していたのと、無駄にエネルギーを使った反動らしい。
アダマンタイトは今は少し落ち着いている。
……奥さんの形見である子供達にベッタリなのは
正直致し方あるまい。
ダマスカスは傷こそ癒えたものの、強い衝撃を受けると
まだ痛むらしい。クロが蹴って虐めていた。何故に。
ヒヒイロカネは俺の治癒魔法の効果もあってか
連れて来た魔鉱龍の中では一番健康体だ。
肉体的にも精神的にも。
祟神の事は話してあり、どうかフラードを恨まないで
やって欲しいと頼んだところ、承諾してもらえた。
ただ、祟神を生む原因となった人間に憤りを感じている様子だ。
ダマスカスは分からないが、
今のところアダマンタイトとヒヒイロカネが、
特にアダマンタイトが人間に敵意剥き出しだ。
……当分カウンセリングが必要かもしれない。
誰が適任なんだろう?
『アス様ですね』
『アス様ですナ』
『アスさんでは?』
『あーすー?』
…………お前ら。
……えぇ?伴侶無くした方のカウンセリングって、
どんな無理ゲー?なんて言えば良いのさぁ。
…………とりあえず魔鉱龍達はキラーアントのもてなしを受けている。
キラーアントが採掘した質の良い土や、魔物の魔石。
空島産の天然の湧き水等が並び、
キラーアント達がそれを配膳したり、
本調子でない者には食べさせたりしている。
ミスリルがアダマンタイトの子供達をあやしている。
子供達は笑顔を浮かべている。
『……アサガオも、子供が好きだった……。
決して言葉にするタイプでは無かったが、
優しい笑顔を浮かべて子供達を見守っていたんだ……』
『……良い奥さんじゃないですか』
俺はアダマンタイトとミスリルが
会話しているのを横で静かに聞いていた。
思い出を語るアダマンタイトの顔は、少し嬉しそうだった。
どうにか立ち直ってくれると良いのだが……。
『イデデデデッッッ!!』
ダマスカスが悶えている、横からひょっこりと
黒い魔物が現れる。
『……ねぇ』
『ん、クロか』
『……褒めて?』
『褒めた褒めた』
『……』
『……すまん』
『……左目……大丈夫……?』
『……さぁな。フラードが立ち直ったら聞いてみるよ』
『……強い呪いの力……宿ってる。……気を付けて』
『……ありがとう』
『うん。もっと……褒めて、良いよ?』
『残念ながらサービス期間は終了だ』
『ぶー』
『難儀だよな。好きでもない男の所嫁がなきゃ、
消されちゃうなんてなぁ……ディオメデス、だっけか?』
『ッ……それ、どこ……で』
『さてな。そのうち分かるかもな』
『…………知ってる、なら……どうして?』
『どうしてもこうしてもな……。
俺は普通の恋愛がしたいです』
『……変なの』
『アダマンタイトを見れば分かるさ。
奥さんを愛していたから、あんなに楽しそうに
思い出話を語っているんだ』
『…………』
『俺だって、どうせなら最後の最後まで
笑えるような家庭を築きたいさ』
『…………』
『……まあ、そういうわけだよ。クロ』
『……ミスリル。……うんざりした、顔してる』
『今の一言で全部台無しになったの分かってる?
ねえクロさんそこんとこ分かってるぅ!?』
『…………てへぺろ?』
『真顔で言うセリフじゃねぇよ!』
『……アスは……面白い……』
『は?』
『……そういう所が好き』
『お、おう?』
『……私も、笑顔に……なれるかな』
『それはお前しだいだろ……』
『……私が……笑顔を作れたら……』
『……作れたら?』
『…………『フハハハハッ!正義の使者
ハイパーカブト参上ッ!』いに…………』
クロの発言は、ハイパーホーンの台詞で掻き消された。
「「きゃっきゃっ!」」
『ああ。小竜達をあやしてるのか。
……というかこっちの世界にもあるんだな。戦隊モノ』
『………………』
『……ん?クロ、どした?』
『…………アス』
『ん?』
『……あいつ。……ころしていい?』
『やめなさい』
その後アスは、クロの暴走を止めるのに
必死だったという……。
『…………ほーんと、バカばっかだヨォ。マロ』
『まぁまぁ、こういうのも結構悪くないと思うぞ?』
『……ヒヒイロカネ、だったか』
『あぁ。今回はお前の主には世話になった』
『礼には及ばんマロ。奴はマロが育てた。マロ』
『そうなのか。そりゃすげぇ。すごいのを育てたんだな!』
『ふっ。マロにかかれば当然の結果マロ』
バキバキッ!とグレッシャースライムが踏み砕かれた。
『息を吐くように嘘をつくんじゃねーよ!ドアホッッ!!』
今日も、アスの心の叫びが響き渡る。
空島のおもてなしは、まだまだ続くのだった……。




