第68話 魔鉱龍を勧誘しよう ~帰還~
★Side:アス
『……う、うう……』
……いつの間にか、気を失っていた、らしい。
……とんでも無く不快な気分だ。
それは左眼が痛むからか、それとも
フラードから伝わる感情からなのかは、わからない。
左眼……一体、どうなっているんだろう。
……"鑑定"
『グッ……』
ズキン。と、左眼が痛んだ。
『……はぁ、はあ。何なんだ、これは……』
「呪龍眼」
世界が恨んだか龍が恨んだかも分からない。
呪われた魂に歪められた、かつて龍の眼だったモノ。
常に身体的な苦痛を与え、魔力を消耗する。
この眼で何かを見ているだけでも魔力消費量が増加する。
内蔵スキル:
「鑑定:LV9」
「千里眼」
「予見:LV4」
「視覚拡張:LV6」
「暗視:LV6」
「動体視力強化:LV9」
「恐怖の魔眼」
「発狂の魔眼」
「怨念の魔眼」
『グワッ!』
ズキン、と左眼がまた痛んだ。
ま、待て……常に痛みが走り、そして、
ただ目で見ているだけで、魔力を消耗する、だと?
じょ、冗談じゃァない。……とりあえず、左目は瞑ろう。
『はぁ、はぁ。……そうだ、ヒヒイロカネはどうなった?』
ヒヒイロカネの事を思い出した俺は、
一旦横穴の入口の方に戻ることにした。
果たして入口まで来てみると、倒れて動かないヒヒイロカネと、
その隣で文字通り身体がだらけているミカンがいた。
ミカンが俺の接近に気付いて、
浮かび上がりこちらを向き……。
『!あー……す……?』
『……何だその、中途半端な反応は』
『……なんか、ちがうー。まりょくが、きんきら?
…………でも、なんだかどろどろ……?』
『……そうか。魔力の質が、変わったから……。
一瞬、俺だと分からなかったんだな』
ミカンは身体を上下に震わせ、肯定の意を示した。
『ヒヒイロカネは……良かった。まだ、息があるようだな』
『うん。ひひいろに、ぶわってなってたわるいのが、
ぱぁんとはじけて、ひひいろもきぜつー!』
『……ええと。ヒヒイロカネに取り付いてた例の魔力が
弾けて無くなり、そのままヒヒイロカネは気を失った、と?』
『??……おー!』
『……ミカン、俺の言った事分かってないだろ』
『そんなことあるかも!』
『あるんかい!』
思わず突っ込んでしまったが、良く考えたら
ミカンはまだ幼い。理解出来なくても仕方ない。
……むしろ、あの説明でも能弁な方かも知れない。
『……"ライフ"』
ヒヒイロカネに治癒魔法を掛けておく。
呪いに侵され消耗しているだろうから、
しないよりはした方がいいと思ったからだ。
『……さて、と』
(ウィズダム、皆はどうなっているんだ?)
魔力を飛ばしながら空島へと意識を向ける。
【オリハルコン、接触成功。
勧誘ヲ試ミタ結果、条件次第ト思ワレマス】
(条件……まぁ、その辺りは後で
詳しく聞こう。他はどうだ?)
【ダマスカス、接触成功。
獣人ト交戦ノ後撃退。現在ダマスカスハ痛ミデ
死ニカケテオリマス】
(……いや、何があった!?)
【クロガ、一時的ニ痛覚等ヲ消シタ反動ノヨウデス】
(……何やってんだアイツ)
【ソウイウ、魔法ノヨウデス】
(……フラードは?)
【アダマンタイト、接触成功。
救出後、別ノ竜ノ救出ニ失敗。代ワリニ、
ソノ竜ノ子供数頭ヲ保護シ、ソノ後……】
(……その後……?)
【アダマンタイトト共ニ、
都市ヲ消シ飛バシタヨウデス】
『あのクソ神龍ッッ!!』
アスは頭を抱えたくなった。……抱える手が無いのだが。
『……あれほど、目立つ真似をするなって、
出発前に言ったはずなのにぃ……』
アスとしては、人間は決して舐めて掛かっていい
相手とは思っていない。知恵は高いし、
魔法や装備等、我々の想像の範疇外の物を
持っている可能性もある。
『そうでもなければ、人間はあっという間に
魔物に滅ぼされる。繁栄出来るわけがないんだ』
そもそも、フラード。お前は人間に負けてるんだぞ……?
アスは思った。もし都市が壊滅したことで、
"勇者"のような厄介な人間が動いたら、と。
『……間違いなくフラード復活に支障が出るな。
龍族ってのは長命な割に短気なのか?…………はあ』
『あす、だいじょぶ?』
『……ああ、だいじょぶだ。ミカン』
『へへー』
ミカンは、にへらと笑みを浮かべた。
『……さて、とじゃあウィズダム。全員の転移を頼む』
【承知シマシタ】
『魔鉱龍も同行するものは連れて行くぞ。
……とりあえずヒヒイロカネも運ぶか』
『はこぶー』
そうして、地上から魔物達が極一部、消えた。
とりわけ、とある壊滅した都市の龍が消えたことは
もはや怪奇現象だった。人間達は色んな意味で
頭を抱えることになるのである。アスの代わりに。
そして、彼らは空島に戻って来た。
『イデデデデデデデデデデーーーッッッ!!!』
『……人間、コロス』
『殺そう』
「「「きゅーっ!きゅーっ!!」」」
『はわぁ。オリハルコンさん、良い方でした……』
『……やーっと、帰ったか、マロ』
『……うる、さい……静かに……してほしい……』
『……』
『むにゃぁ、ねむいー』
『…………なあにこれえ』
アスは、再び頭を抱えたくなった!!
……抱えられる手が無いのだが(二回目)という
デジャブを感じながら……。
「「ガァァッ!」」
『バカ頭を冷やせアホドラゴン!!』
バッシャーンッッ!
アダマンタイトとフラードがアスの放った冷水を被せられる。
『……島を、壊す気?』
「「……グ、ガルル……」」
更にクロが影で二体の動きを縛りつけ始め……。
『"繭纏"……"呪詛「縛」"ッ!』
ミカンが呪詛で身体の自由を奪い……。
『非常ニ危険ナ魔力ヲ感知。"結界"ヲ展開シマス』
アスたちの前に転移して現れたウィズダムが
フラード達を"結界"で包んでしまった。
「「グォォォッ!!」」
『……わわわ』
『……な、なんてパワー……デタラメ……』
束縛を力ずくで解いた二体が結界内で暴れ出す。
『問題アリマセン。結界内ノ攻撃エネルギー、及ビ魔力ハ
全テ吸収シ、私ノ魔力貯蔵機ヘト送ラレマス』
『グッジョブウィズダムー』
アスはウィズダムを褒めた。
『……む。私より……機械を……褒めてる……』
『イデデデデッッ!!』
『うるさい』
クロはダマスカスを蹴った。
『ッッデデデデデデェデデデッッッッ!!!!??』
理不尽である。
『やめい!怪我人に追い討ち掛けんなッッ!』
クロからダマスカスを庇いつつ、アスは治療を始める。
『……ひどい……私より……そんな龍がいいんだ……。
私との……あの夜は……なんだったの?
……私とは、遊びだった……のね』
『『エッ……』』
『待て待て待て待て!身に覚えがない!!
ミスリルとダマスカス……ってお前もか
今変な反応した奴ッ!』
『……あ、いやその……ごめんなさい』
『何で振られたみたいになってんだァァァァ!!!』
チュドーーーンッッ!!と結界内から爆発音がしたのと、
アスが叫びを上げたのはほぼ同時だった。
『……収拾、つかないナ……コレは』
(……確カニ)
ハイパーホーンとバーサクワガタは、
このカオスな空間を傍観していた。
『……ぅ、ぐぐ……こ、ここは……?』
魔鉱龍ヒヒイロカネが目を覚ました。
その隣には…………。
『……個体、魔鉱龍ヒヒイロカネ。
肉体的ダメージ、問題無シ』
『ッッな、な、なんだこの喋る
変な筒みたいなのはーーッ!!』
『あああもうめんどくせえええええ!!!』
その日の空島は、主に残念な方面で、
それはそれは賑やかだったという……。




