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第66話 再来

 ……。


 …………。


 ………………。


 ……うぅ…………。


 ……こ、ここは…………?



 アスは、起き上がった。


 しかし、その姿は左前脚、脇腹、翼の中程までが抉れた

 見るに耐えない重傷を負った姿だった。


 アスは自分の左脚や翼が欠けているにも関わらず、

 中途半端に浮遊して移動出来ることに気付いた。



(……実は死んだ後の、世界だったり、するのか?)



 自身の現状からそんな事を考えたが、すぐに首を横に振った。


 ふと、どこかで嗅いだ覚えのある、強い植物の香りを感じた。


 ……植物の、香り?


 …………夢のような、空間で、植物の、香りがする……。


 …………まさか。


 アスは先へと進む。すると、いつの間にかログハウスのような

 樹木をくり抜いたような部屋へと行き着く。



「やあ。また、会ったねー?」



 ……やっぱりか。と、アスは思った。


 アスは見当がついていた。以前にも似たような出来事があったからだ。


 アスに話しかけて来たこの男。全身黒の装備一式の男。


 神龍ヤマタノオロチ、フラード曰く"魔王"。


 アスは、問う。


 "何しに来た?"



「そう、身構えなくていいって。今日は君に有益な話さ」




 "魔王から有益な話何てするのか?"



「お、神龍から教えて貰ったのかな?

そうそう、"黒天馬ディオメデス"はどーお?」



 "……やっぱりアイツもお前の差し金か。

 というか、そんな猛々しい名前だったのかアイツ"



「あの子を寄越したの邪神様だから。ボクは手引きしただけ。

あと、あの子人でも魔物でも何でも食べれるから、

草ばっか食べさせちゃダメだよ?」



 "……いや、初耳何だが……"



「あらら、きっと気を遣ったんだろうね。

人肉とか食べる馬と知られたら嫌われるかも、とか思ってそうだ」



 "何じゃそりゃ……"



「うん。あの子、君の奥さんになるために君のとこまで来たんだよ。

ハードシップ様の命令でだけど」



 "命令って時点で相当、アレな気がするんだが"



「でも、君と番になれないと消されちゃうんだよ。

そりゃ、必死になるよね!でも君ったら

理性あるから保留しちゃったね。

なまじ元人間だったから、厄介だァ!」



 "いや、知るかよ!?てか、消されるって何だよ!

 そもそもそんな事情、本人からも聞いた事ねぇよ!"



「そんなの知らないよー。君達若いもん同士の問題でしょ」



 "若いって……"



「ボク今年で37564歳だからさぁ。

スーパーおじーちゃんなのよ?ふふふ」



 "確かに少なくともモーロク爺では無いな。

 あと、お前のその年齢多分嘘だろ"



「……そだね。じゃ、本題。

君が出会った神龍のソックリさんについて」



 アスはその言葉を聞いて態度を改めた。

 そして魔王が年齢についてスルーしたことは指摘しなかった。



「さて……まず、君が戦ったものの正体。

アレは、一言で言えば……"祟神"だね」



 "祟神?"



「うん。神を冠する者が、強ーい恨みつらみを

長期間感じ続け、それが神力……まあ要するに魔力と

結び付いてこの世界に具現化した存在だね」



 "……じゃあ、あれは、神龍の怨念ってことなのか?"



「ご名答。アレは、神龍ヤマタノオロチが感じた

負の感情が、具現化したもの。そして、かつての

龍の谷の勇者の横暴から始まった苦悩が集った訳だ」



 "…………"



「そして、見ての通りその怨念が同じ龍族に作用しているんだね。

難儀な事だけど、生きた龍種を呪い殺し、

アンデットとして使役し、人間達に報復するつもりなのかもね。

君が道中で出会った、あのコドラ達のように……」



 "……それが、本当にフラード……神龍のやることなのか?"



「祟神はいわば理性を失った神獣の魔力集合体みたいなもんだからね。

本来の役割から逸れた行動も平気でやるさ。

恨みを晴らすためなら、それこそ

護るべき同族すら利用して、ね……」



 "…………何とかして、止められないのか?"



「……ふむ。君は、死にかけているのだが、

一体その状態から、何が出来るのさ?」



 "出来ることをやるだけだ。

 どうせ、俺はもう既に一度死んでいる。

 それにこの世界に生まれたのも、

 結局神々の気まぐれに近いしな"



「ふーん、まぁ死ぬのは別に怖くないし、

今自分が出来ることをやるだけ、ねぇ」



 "……何よりも、俺が死んだら、アイツも死ぬんだ。

 今はまだ死ねない。だから、今出来ることをやって、

 今の状況から生き残ってやるしか……ないんだ"



「……随分、達観してるね……。トコトン、変な奴だな。君も」



 "大体、自分の怨念に間接的に殺されるってのも、

 嫌だろうし……。俺も、死にたくはないし"



「……クックッ。面白いね。気が変わったよ。

これからはむしろ積極的に関わろうと思う!」



 "……はぁ?"



「……さて、と。そんな事より、君は本当に、

あの祟神をどうにか、したいんだね?」



 "……ああ……"



「……ふぅ。まあ、でも、きっと、大丈夫だろう。

……君達の関係は、見ていたから。

決して悪くは無い様だし、大丈夫だよね」



 "……何の話だ?"



「大した事じゃないよ。さて、ではあの祟神を

"お祓い"しちゃいましょーか!」



 "お祓い……どうやるんだ?"



「んー。手っ取り早いのは、"神力"で浄化しちゃう事だね」



 "死霊龍の瘴気みたいにか?"



「あー、そうだね。まあ、質が違うけど」



 "でも、神力は神獣じゃないと使えないんだろ?"



「……なーに言ってんの!君だって、神獣の卵じゃない!」



 "……え?"



「ほら、前の対話を覚えてないかい?

……君は、邪神様に頼み込まれた動物神によって、

その肉体を創り出された、と」



 "…………あぁ。確か、そうだったか。

 ……魔王。お前、まさか"



「分かった?君の体は下位とは言え神である動物神が

創り出した物。そして、かの神龍ヤマタノオロチの

魂の一部を保有している。この意味が、分かるかい?」



 "神が創った肉体と、魂の契約(ソウル・コントラクト)による魂の連結……"



「その通り。君は、決して強くはないけど、

神力をその肉体に宿している。

後は、その力を目覚めさせるキッカケさえあればいい」



 "……どうしたらいいんだ?"



「時期に、君は意識を取り戻す。

ボクが君が目覚めた時、一つプレゼントをしよう。

ソレを、使いこなして見せてよ。

…………神力を宿す者として」



 魔王が笑みを浮かべる。だが、その目は笑っていない。

 試しているんだ。奴は。死にかけの人……いや、馬に対して。


 フラードの力を間近に見て、その魂を持ち、

 空島の資料から神力の力を理解している俺に対して。


 "……分かった"



「……クックッ。健闘を祈っておくよ」




 "……ありがとうな"



 馬の姿が、靄となって消えていく。


 男はそれを見届けた。



「……勇者が相当トラウマになっているようだねぇ」


「……でも、まぁ。何とかなるでしょ」


「…………粛清の刻(カタストロフィ)、か……」



 ポツリポツリと呟いた男は、

 音も無く、そのまま奥へと去って行ったのだった……。


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