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第7話 蛇の正体

『頼むー。いつまでも見つめてないで、

早く助けておくれ。あと見つめないで。ちょっと恥ずかしい』


(いや、知るかよ……)



 蛇はそう言って俺の頭に直接語り掛けてくる。

 だがしかし、だ。


 そもそも、馬がどうやってこの剣を引き抜けというのか。

 やれそうならとっくにやっている。



『その剣に引き抜くイメージを強く持たせた魔力を流すのだ。

そうすれば引き抜けるはず』



(……何故俺の疑問が分かったのかだろうか、この蛇)



 そもそも封印されてるような奴の手助けなんかしたくない。

 封印されるということは、

相当ヤバいことを過去にしでかしたということだろう。


『そ、そんなことはない!人間達が私を勝手に敵と見なしたのだ!

私は戦うつもりはなかったが、勇者に襲われ致し方なく戦ったのだ!』


(……。んで、負けて封印されたと。)


『うぐ。……龍断剣"天羽々斬(あめのはばきり)(のつるぎ)"という厄介な剣を持つ勇者だったのだ。

しかも"クシナダ櫛"という強力な龍特効効果のある櫛を身に着けていてな……』



 ……は?コイツ今何て言った?

 蛇はこの後も何か色々言っていたが俺はちょっと思考停止していた。


 俺は少ししてからハッとして我に返り、尋ねる。



(なあ。お前は一体何者なんだ?それからこの剣は何なんだ?)


『答えたら、私を助けてくれるのかの?』


(内容次第だな)


『……良かろう。私は"ヤマタノオロチ"。

そしてその封龍陣に刺さっているのは私の懐剣のような物だ』



 ヤマタノオロチ……だと……?見た感じは、

 大き目の蛇一匹分でとてもヤマタノオロチという存在には思えないが……。


 というか、サラッと日本の神話が入ってきたな。

 ちょっと、いやかなり興味が出てきた。



(因みにその懐剣の名前を聞かせてもらうことはできます?)



『ん?天叢雲(あめのむらくも)(のつるぎ)という。

せめてもの抵抗で勇者の天羽々斬剣を叩き折ってやった自慢の剣よ』



 ……。うん、知ってた。ヤマタノオロチから出てきた剣と言えばそうだよね。

 そりゃ鑑定できるわけないわ。日本で言う三種の神器の一つだもん。

 格が違いすぎます。…俺はもしかして今、とんでもない奴と会話しているのか?



『ただ、今は魔法陣の魔力供給源にさせられてしまっておるがな……』



 ヤマタノオロチは悔しそうに呟く。

 間接的にとはいえ自分の武器で封印されたらそりゃ悔しいわな。


 うーん。なんか、こうして話をしている分には

 悪い奴には感じないんだよな。とはいえ、まだ納得したわけじゃない。



(俺はお前をまだ信じたわけじゃない。封印を解除するには理由が弱いな)


『そ、そんな!?

私はもうこんな暗いところで一人ぼっちは嫌なのだ!

大体、私は何もしていない、していないというのに

どうしてこのような目に遭わねばならぬのだ!

八匹に我が力は分割され、封印された!!私が何をしたって言うのだ!!』



 そのままヤマタノオロチは泣き出してしまった。

 てか、八等分にして封印って、質が悪いな。

 当時の勇者はある意味相当慎重だったとも言えるが。


 しかし、封印されてからずっと暗い部屋で

 誰にも会う事なくぼっちか。その上封印で動くこともできない。


 流石に可哀そうに思えてきた。俺だったら恐らく発狂しているな。

 そういう意味で、コイツからしたら俺は希望なのかもしれないな。


 ……俺は少し考えるが、コイツの話に嘘が入っていたとしても、

 恐らくコイツ自体は悪い奴ではないのだろう。何となくだが。



(一つ、条件がある)


『グスッ。……なんだ?』


(俺の仲間になってくれないか?

俺もここに来てからずっと一人だったからな)



 一人だった期間は比べ物にならないだろうけど。



『…お前も、一人だったのか?』



 ヤマタノオロチが初めて俺に関心を持った、

 そんなふうに思える口調で尋ねてきた。

 俺は答える。



(ああ。気が付いたら俺も一人だった。この洞窟の中でな。

仲間なんてものもいなかったし、むしろずっと魔物に襲われてたな)



 今現在洞窟の中で迷子になってるしな。

 あれ、まるで良いことが起こってないじゃないか。

 ……ちょっと涙が出そうになった。



『……そうか。お前も、苦労したのだな……?』


(ああ。同じ境遇になったことがある者同士、協力し合わないか?)


『…封印を解除してくれるだけで私は感謝の念に堪えぬ。

お前が望むというのであれば、私はお前と共にあろうではないか』


(…決まりだな。この剣の抜き方は…イメージ、だったか?)



 俺は天叢雲剣に触れる。

 凄まじい力を感じる。触れてるだけなのに、だ。



『うむ。イメージを載せた魔力を強く流すのだ』


(こうか!)



 バチッッ!



 剣から魔力が弾ける音がする。

 俺の体内からグングン魔力が吸い取られる感覚がする。



『もっとだ!もっと強く!魔力を込めてイメージするのだ!』


(ぬおぉぉぉっ!こ、こんちくしょォーッ!)



 俺は剣が地面から抜けて吹っ飛ぶ様をイメージしながら叫んだ。

 魔力が抜かれて力が抜けそうになる。

 だが、気合で堪えて魔力を注ぎこむ。



(…ぬぅぅぅ…おんどりゃあぁぁぁぁ!!)



 バリリッ!!…ッポーンッ!



 変な音をたてながら剣が抜け、地面に落下し、カラランと剣から音が鳴る。


 ヤマタノオロチを封じていた魔法陣は剣を失ったことで、

 次第に色褪せていき、甲高い音を立てて砕け散って無くなった。


 今までピクリとも動かなかった、ヤマタノオロチの身体が動き出す。



『……ふう。…地上の空気を吸うたのは何時ぶりか』



 ヤマタノオロチは俺の方を見て、その蛇の目を細めて呟く。



『感謝する。我が恩人よ』


(……そんな固い呼び方じゃなくていいよ)



 俺は魔力を消費した影響で肩で息をしながら返事をする。



『そうか…。では、失礼するが…名前はあるか?』


(名前…?)



 ………そういや俺、無かったわ。名前。


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