第65話 魔鉱龍を勧誘しよう その4
★Side:アス
『……これは』
「「「グゥゥ、ァァァ-ッ」」」
『……アンデットか』
洞穴の奥から僅かに感じる、魔鉱龍ヒヒイロカネの
呪いと関係があるであろう魔力を追っていた。
そして目の前には、"スカルコドラ"、"アンデットリザード"といった
アンデットと化した竜の子供やリザードが群がっていた。
『倒すしか、ないか……!』
光魔法"シャイニーレイ"でアンデット達を薙ぎ払う。
アンデット達も負けじと闇魔法で応戦してくる。
『クッ、数が多い!』
翼を羽ばたかせ、風魔法で自重を支えつつ滞空。
『"スーパースパーク"!』
全身から光線のように電撃を放つ。
雷魔法"スーパースパーク"だ。
数は多いが個体ごとの強さはさほどでもない
アンデット小竜達が電撃を浴びて動かなくなる。
『ふう』
念の為、崩れ落ちた骸達に光魔法で追い討ちを仕掛けておく。
アンデットは光魔法を浴びせれば確実に処理出来るからだ。
アンデット達の魔石が大量に転がり落ちる。
そのうちの幾つかを食べて魔力を回復し、奥へと向かう。
何故、ヒヒイロカネがいるような場所にアンデットがいたのだろう?
洞穴内に流れる不快な魔力を感じ取りながら奥に進んだ。
『……行き止まり?……いや……』
一見行き止まりの様に思える洞穴の壁を蹴り飛ばす。
その衝撃で壁が崩れ落ち、新たな空間が現れる。
『……隠し部屋か。いつか、
似たような事もあった気がするな。そして……当たりか』
壁の向こうの空間から、濃密な量の魔力が流れ込んでくる。
何となく、心がチクチクして、長期間浴びていると
精神が磨耗していく様な不快な魔力だ。
間違いないだろう。この先にヒヒイロカネの呪いの原因がある。
意を決して、空間の中へと入る。
『……妙だな』
慎重に歩を進める。
少し進んだところで、遠くにぼんやりとした光が見える。
何の光なのだろうと思い、その方向へと向かった。
「!ッッ!」
咄嗟に地を蹴って跳ねる。
その瞬間、俺のいた箇所を何かが薙ぎ払った。
距離を取り、攻撃を仕掛けてきたその正体を見る。
…………え……?
『……フラー……ド……?』
「…………」
いや……違う。首が一本だけだ。
それに感じ取れる魔力は、ヒヒイロカネに
纏わりついていたあの不快な魔力そのものだ。
……なら、コイツがヒヒイロカネの呪いの原因か?
だが、何故、フラードに、似ている?
……分割されたフラードは、
魔法陣の中に封印されているはずだ。
……あの、遠巻きに見える光……まさか。
考えたくない結論に至った時、フラードもどきが
尾を振るってくる。早い!
ギリギリで何とか躱し、空中に滞空して、龍眼で"鑑定"してみる。
【鑑定が遮断されました】
『……おいおい、マジかよ……』
フラードもどきが炎の魔法を放ってくる。
水魔法で、防いでその場を離脱。
遠巻きに見える光が何かを見る為に
龍眼の"千里眼"を発動し、光を見つめる。
『…………そうか。やっぱりそうなのか』
千里眼で見えたもの。それはやはり、"封龍陣"という
龍種を封印するための魔法陣と、それに囚われたフラードだった。
『……なら、こっちのフラードはッ!』
水魔法"アクアジャベリン"を飛ばす。
『……堪えないか』
魔法を受けても大して意に返さずといった様子だ。
フラードもどきが急接近し、その牙で噛み付きに来る。
風魔法でバックステップじみた動きを取ってそれを躱し、
ガラ空きになった頭を前脚で叩き付けた。
……はずだった。
『……どういう、ことだ?』
俺の目の見間違えで無ければ……脚が、すり抜けた。
「ッッッ!!?」
俺の疑問は、フラードもどきが薙ぎ払った尻尾に
横っ腹を叩き付けられ、身体ごと吹き飛ばされた。
口から血が垂れる。……痛ぇ……。
『こっちの物理攻撃は効くか怪しいのに、
向こうの物理攻撃はちゃんと通じるのかよ……。
能力も、戦闘スタイルもフラードそのものだし……。
……質が、悪いな』
「……」
その瞬間、フラードもどきから感じる魔力の質が変わった。
視界からフラードもどきが消えた。
『ッ!!不味……ッ』
バギィッ。……。
「…………ッッ……!」
……は、や……すぎ、る……。
左の脇腹と……前脚……それから……。
……翼の、中ほどまでが……持って、いかれ、ちまった……。
……"気合法"……"魔戦法"……"竜闘法"……でも、ない……。
……フラードの、持つ…………スキル…………。
……一つだけ………………。
…………"龍闘法"……か…………。
……い、しき……が…………。
……………………。
その頃、ミカンは……。
『……はぁ、はぁ…………』
「……グゥ、ルル…………」
蒼く光る独特な羽の翼を持つペガサスである、
アスに頼まれ、魔鉱龍ヒヒイロカネを食い止めているミカン。
防御能力に秀でた形態になる"繭纏"のスキルは既に使っている。
『"呪詛「縛」"』
歪な形をした文字がヒヒイロカネに放たれる。
「……!?」
呪詛が身体に刻み込まれたヒヒイロカネの身体が、
硬直して動かなくなる。
『……はー、はー……』
「……グ、ルル……」
『……こ、これで……うごけない、はず』
「……グ、ァァォオ……!」
『……げんかい?……』
「……グ、ォォ!!」
『うっ!?』
バキバキと嫌な音を立てて呪詛がボロボロと崩れ落ちていく。
ヒヒイロカネの"龍鱗"や"状態異常耐性"の効果が
呪詛の効果を上回り始めたのだ。
「グァァォォォッ!!」
ヒヒイロカネが光魔法でミカンを薙ぎ払った。
"繭纏"が剥がされたところに火炎ブレスが炸裂する。
『……ウッ』
ブレスに吹き飛ばされ、スライムボディがデロンと
潰れて広がる。……まりょくが、たりない。
体力は回復出来ても、魔力消費による
精神的な倦怠感は拭えないのだ。
『……ん……?』
ヒヒイロカネの炎を何とか体勢を立て直して、
なけなしの魔力で創った"アクアシールド"で防ぐ。
水蒸気が、ヒヒイロカネの視界を妨げる。
そして、ミカンは転がり込んだ。
そこにある、ある物を捕食する為に。
魔力を帯びた、蒼い羽が一本。そこに。
それは、たまたま、抜け落ちたのであろうアスの羽だった。
アスの魔力を含んで蒼く発光する羽を取り込む。
「!」
その瞬間、身体に黄金の光が走る。
体内から力が湧き上がるのを感じる!
【条件を満たしました。レベルが35から36に上昇しました】
『おおおーーっ!』
レベルが上がったことで、全身のダメージや疲労が回復していく。
魔力も一気に回復し、心地良い高揚感を得る。
『……グルル…………』
相手が急に元気を取り戻した事に、
ヒヒイロカネは警戒し、動きを止める。
『もー。のろいで、いしきがのっとられー!
あすが、たすける!ひひいろ、たえて!!』
元気百倍のパンのように軽快に動いて、
ヒヒイロカネの注意を引き付け始めたミカン。
だが、その時にはもう、アスは既に倒れていた……。




