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第64話 魔鉱龍を勧誘しよう その3

★Side:フラード



『……死んだか。……クズめ』



 フラードは意趣返しで放った"息吹"で

 文字通りチリにされた魔道士の男がいた箇所の

 瓦礫を無造作に尻尾で弾き飛ばし、

 アダマンタイトを見る。


 アダマンタイトの左肩の金属ボディが砕けた箇所や

 そこから走ったヒビ割れから血が流れ、

 その痛みからアダマンタイトは動けずにいるようだ。



『……すまぬ。少々、手荒くしてしまった。

私はヤマタノオロチという龍で、フラードという。

人間に捕らわれた、お前を助けに来たのだが、

傷付けてしまった。本当にすまない……』



 痛みと、洗脳魔法の術者の死亡により、

 正気を取り戻したアダマンタイトが、

 フラードを見つめ、そして、答えた。



『……救出、感謝する。……この位ならば、いずれ治る。

それよりも、私の妻や子供達は、無事なのか?』


『……お前には家族がいるのか?すまないが家族の安否は分からん。

……いや待てよ。確か、今この街には魔物暴走(スタンピード)が発生していたな。

それも、突発的に発生したらしい……。

……もしや、お前の家族がお前を取り戻そうとして引き起こした?』



 アダマンタイトの目が驚き、見開かれる。



『……それは、真か!?』



 アダマンタイトは慌てたように起き上がろうとするが、

 直後に身体から走る痛みで倒れてしまった。



『ウッグゥ……クソ、こんな、傷……!』


『待て、落ち着け。私が様子を見てくる。

今は動かない方が、良い』


『グゥ……。……頼む、アイツらは俺のような奴には

勿体ないくらいに良い奴らなんだ。

それに妻は、俺のような強固な肉体を持っていない。

殺されてしまう。頼む!助けてやって欲しい!』


『……分かった。妻や子供の特徴は?』


『アイツは、地竜だ。"地竜アサガオ"という。

子供達もまだコドラばかりだ。

もしその話が真実なら!人間達に殺されてしまうっ!』


『分かった。すぐに行く。だから心配するな』



 フラードは、思い切り飛び跳ね、一気に屋敷をぶち抜いた。


 ミスリル装備がアダマンタイトの息吹で

 消し炭になってしまったので、龍の姿で移動するしかない。


 突如として建物から龍が現れたことで

 屋敷の人間達が驚いて逃げ出していく。


 フラードは、少し離れた所に感じる、

 複数の魔力がぶつかり合っている場所を感知する。



『……竜種の魔力を、感じる。……クソ、間に合うか?』



 フラードは、その巨体からは想像出来ない速度で、

 都市の建物を薙ぎ倒し、城壁をぶち抜いて走る。


 突然の天災に、人々は呆然とその光景を

 見届けることしか出来なかった。



 ここは、辺境都市から離れた場所にある廃鉱山の近辺。


 そこには血濡れの一匹の竜と、それを取り囲む人間達がいた。



「はぁ、はぁ。なんてしぶといんだ。

流石に、竜なだけはあるな」



 息を切らせながらも、竜を追い詰めたこの男。

 その正体は、辺境都市"ハミダシ"の

 冒険者ギルドマスターであるフリッツであった。


 その手には大剣が握られている。


 周りにいる冒険者が注意を引きつつ、

 魔法でじわじわと竜の体力を奪い、

 フリッツがこの剣でトドメを刺す作戦。


 幾度かの攻撃で、ついにその時がきた。


 竜が必死の抵抗で放つ"息吹"を、複数の冒険者が

 何重にも貼った防御魔法で防ぐ事でやり過ごした。


 そう出なくても、辺りに転がる魔物と冒険者らの死体の山が、

 今回の魔物暴走による戦いの苛烈さを物語っている。


 突発的に発生したこの魔物暴走だが、

 不幸中の幸いか魔物の数自体は多くなかったこと。


 辺境都市ということもあり、戦闘能力や判断力に優れた

 冒険者や騎士が多くいたこと。


 そして、フリッツら精鋭を巧みに活かした作戦を実行出来たこと。


 迅速な対応とそれを成しえる実力によって、

 この突発的に発生した魔物暴走は、

 いよいよ最後に残ったこの竜を倒せば、決着が着く。


 息を吸い込んで、吐き出す。


 目の前の剣士が竜の眼に剣を突き刺した。


 激痛で怯んだ竜に魔法で脚に集中砲火を浴びせる。



「グァァォォォッッ!!?」



 脚にダメージを受け、竜がバランスを崩した。


 今だ!!


 一気に竜へと肉薄し、魔力を込めた剣を振り下ろす。


 剣が竜の首を捉えたのと、まるで、

 地震のような巨大な地響きが発生したのは、同時だった。


 ゴトン、と。首が落ちる。返り血で身体が染まる。


 竜は、動かなくなった。


 もう一つの存在もまた、動かなかった。


 "視て"しまったからーー。



‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

種族:地竜アサガオ

系統:ドラゴン系

状態:死亡


‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ 



 冒険者達の顔が、血の気を失っていた。


 息をつきながら、フリッツはその様を怪訝に思い、

 冒険者達が向いている方を見る。


 そして、出会った。出会ってしまった。


 ……()()()()()()()()で。



『…………あぁ……』


『……嘘だ。嘘だ。嘘だ』


『『『…………嘘だ』』』


『死んで、るはずない』『……どうして』『間に合わなかった?』



 フリッツ達は顔を青ざめたまま、独り言の様に

 何かを呟く、三つ首の龍を見ていた。



『『『……また?……守レナカッタ???』』』


『…………守れなかった。……そうか』



 その瞬間だった。冒険者二人が爆ぜた。


 鮮血が飛び散り、フリッツ達はその様を見た。


 そして、恐怖した。


 二人とも、()()()()()()()()()()()に貫かれ、

 全身ハリネズミと化していたから。


 余りにも突然の出来事に誰も思考が追い付かなかった。


 ただ、フリッツだけは、

 顔は青いままだったが……龍を、見つめた。


 「ソウカ。オ前ラガ……」



「……!?」



 話しかけられた。そんな気がした。



『『『グオオオォォォォォッッッ!!!』』』


「!……ッく、来るぞォォッ!!」



 フリッツは、張り裂けそうなくらいに声を上げて叫んだ。


 それに現実に引き戻され、武器を構えた冒険者達。

 魔法を放とうとした冒険者達。



『グオオオォォォッッ!!』



 尻尾が振るわれた。男がミンチとなって吹き飛ぶ。



『グガァァアァァッッッ!!』



 女が噛み砕かれた。鈍い音を立て、血が飛び散る。


 膝から上が欠けた人体がその場に力無く倒れる。



『グルゥゥゥァァアアアアッッッッ!!!』



 人間達がゴミのように、龍の下敷きとなった。


 ブチブチと肉が引き裂かれ、骨がゴリゴリ砕ける音が響く。


 フリッツは、根元から欠けた大剣を力無い手に握り、

 ただその様を見て……笑うしか無かった。


 もう、声は掠れ切っていた。



「……はは……。……何だよ……これ。……。

……武器も、魔法も……効きやしねえ。

……次元が、違いすぎる、ぜ……クソッ……」



『『『グオオオォォォォォッッッッ!!!』』』



 龍と、目が合った。もう周りには、立っている者はいなかった。


 三つ首の口内が光で溢れ、その眩しさに思わず

 目を閉じた。……死が迫っていた。


 驚くほど、冷静にその事実を受け止めていた。


 自分は、いよいよ死ぬのだ。もう、覚悟は出来ている。


 しかし、不意に眩しい光が消える。


 不審に思ったフリッツが、目を開けた。そして。



「……涙……?」



 龍の顔を見る。……その表情は、悲しみと、憤怒に染まっていた。


 フリッツは目を閉じて、思った。



(……龍にも、仲間を想う気持ちが、あるのだな……)



 目を閉じていてもなお、分かるほどに眩い光が放たれる。


 全身が、焼けるような熱に晒される。



 その日、ある場所で。


 巨大なキノコ雲が昇った――。


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