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第55話 ミカンの力

 ウィズダムによって俺達は転移した。

 どうやらどこかの地下空間に転移したようだ。


 ……むむ。これは…………。



『……はぁ。やっぱり瘴気ってのには慣れないな』


『……いや、慣れてはダメだと思うぞ』


『だめー?』



 フラードは剣を具現化させ、地面に突き刺す。

 剣から優しい光の魔力が流れ出す。



『私はここで、アスが何をするつもりなのか、

見せてもらうとしよう。この地を浄化しながらな』


『分かった。ミカン、行くぞ』


『いくぞ!』



 俺とミカンが先へと進む。

 少し先へ進むと、目当ての奴が現れた。



「ググ……ルルルル…………」


『あ、ぞんび!』


『強さは……鑑定によれば空島の個体と大差ないな。

今の俺なら、倒せなくもないってところか?』



 ただ、見た目は空島の個体と異なり、

 フラードのような蛇型、東洋龍のような姿だ。腐ってるけど。


 死霊龍の姿はもしかしたら生前の姿に左右されるのかもしれない。

 そんなことを考えていたら、ミカンに念話をかけられた。



『おうまさん。よわい?』


『お馬さんて……。俺はアス、という名前で呼ばれてる。

まぁ、今はそれはいい。ああ、俺はそんなに

強いわけじゃないな。特にフラードに比べたら……』


『うまー、あす。ぞんびよりよわい?』


『死霊龍には、勝てなくもないが苦戦はするかもな』


『……ミカン、やる』


『!』



 ミカンが放つ魔力の質が変化していく。

 俺は距離を取り、ミカンの戦闘を観ることにした。


 資料によると戦闘行為は未経験。

 だが、戦い方は理解しているらしい。


 ミカンの周りに魔力が纏われていく。

 そして、その魔力が具現化していく。


 ミカンが、オレンジ色のぶ厚い繭に包まれた。

 繭というか、皮?……よく分からんが、

 見た目がミカンからオレンジになった。


 鑑定しようとしたが、ミカンの鑑定遮断が

 発動しているらしく、情報を視ることが出来なかった。



「グオォォォォッッ!」



 死霊龍が咆哮をあげる。

 ミカンはそれをものともせずに、

 纏っている繭からオレンジ色の液体を飛ばした。


 鑑定すると、猛毒の液体らしい。

 さらに、何やら歪な形の文字が浮かび上がり、

 それも飛ばしている。これも鑑定すると

 "呪詛「破」"という表記が出た。


 だが状態異常を無効化する死霊龍には

 どちらも通じず、猛毒を含んだ腐食した尾で

 ミカンが薙ぎ払われた。


 しかしミカンも状態異常を無効化する。

 繭が剥がれはしたが、本体にダメージがある様子もない。


 きっと、"繭纏"というスキルの効果なのだろうが、

 このスキル、相手によっては泥沼化するな。と思った。



『むむむー!』



 ミカンの全身から無造作に"アクアバレット"、

 "プラズマバレット"、"ダークバレット"が放たれる。


 ちょっ、危ない!?っと思ったが全て死霊龍へと

 向かって行く。え、ホーミング機能?



『ガァァッ!』



 しかし、死霊龍が放った猛毒のブレスが

 ミカンが放った弾丸を全てかき消した。



『"サイクロン"ッ!』



 俺は風魔法で大風を巻き起こして、ブレスを受け流す。

 ミカンでは流石にまだこの規模の

 ブレスを流すのは難しいだろうからな。



『"魔力変換"』



 ミカンの全身から魔力が吹きこぼれる。

 このスキルは、自身の持つMPの消費量分を

 いずれかのステータスに一時的にプラスするスキルだ。


 ただしHPに変換すると普通にMP消費の体力回復になる。

 

 そうして魔力変換で膨れ上がった魔法力から、強烈な一撃を狙う。


 そしてミカンは「MP自動回復:LV10」を

 持っているので、MPを消費しても凄まじい勢いで

 回復していくのだ。因みにLV10はスキルの最大レベルだ。


 ミカンの圧縮された魔力が、死霊龍へと向けて爆発する。



『"ハドウ"』



 圧縮された膨大な量の魔力がビームのように撃ち出される。



『グオォォォォッ!!』



 死霊龍はそれに対抗するようにブレスを放つ。


 ミカンの光線と死霊龍のブレスが衝突する。


 互いの全力がぶつかり合い、発生した膨大な魔力が

 衝撃波となって伝わってくる。



『"アクアカーテン"』



 俺は水の膜を纏い、衝撃を和らげておく。


 しかし。俺はここで内心驚いた。


 ミカンの放つ光線が少しずつ死霊龍のブレスを押し始めたのだ。


 先ほどまで拮抗していた時以上にミカンの魔力が

 膨れ上がっている。これは、恐らく、

 ミカンは魔法で攻撃しながら魔力変換のスキルを使い、

 魔法力を強化しているのだろう。

 これは、スキルの二重発動だ。


 スキルの二重発動、これは簡単に出来ることではない。

 フラードのように複数の意志を持つ生物ならともかく、

 一つの意志で複数のスキルを使いこなすのは簡単じゃない。

 普通の生物であれば、肉体が魔力の処理に追い付かず、

 最悪廃人のようになることも有りうるほどだ。


 しかしミカンはそれを普通にこなしている。



『……神を目指した生物兵器……か』



 あながち、間違いでは無いのかもしれない。

 俺は思わずそう思った。


 そして、ミカンの光線が死霊龍のブレスを押し切り、

 死霊龍を撃ち抜いた。


 膨大な魔力を止めどなく叩き付けられ、

 回復も逃れることも許されず、光線を浴びせられる死霊龍。


 とうとう死霊龍は、ミカンの攻撃から逃げきれず、

 力尽きて崩れ落ちた。



『しんだ?しんでる?』



 ミカンが死霊龍の屍を眺めていると、死霊龍の屍から

 膨大な量の瘴気が溢れ出し、死霊龍が動き出した。



『グガァァァ……ァ゛ァ゛ァ゛ッ゛ッ゛!』



 死霊龍が叫びを上げながら動き出す。

 "執念"のスキルが発動したのだ。



『しんでる。いきてる?うごく。うらみ!』


『そうだ。今は執念だけでコイツは動いてる!』


『ア゛ア゛ァ゛ァ゛!!』



 死霊龍が瘴気を撒き散らしながら、俺達へと向かってくる。

 瘴気を受けたせいで、気分が悪くなってくるが、

 今はそれどころではない。とにかく距離を……



『大したものだな。その球体』



 念話と共に、死霊龍が真っ二つに切断された。


 死霊龍を切断した剣から溢れる光に死霊龍が

 浄化されていく。これは……。



『フラードか』


『ああ』



 フラードが地面に着地した。

 死霊龍の方を見ると、光の浄化エネルギーを込められた、

 天叢雲剣が死霊龍を切断し、

 そのまま地面に深々と突き刺さっていた。


 恐らく、空中から剣を投げつけたのだろう。


 逆に言えば、それだけで今の死霊龍には十分な

 一撃だったということなのだろう。


 死霊龍は、もう動かなくなっていた。


 空島の個体のように、あの魔力の追憶が起こる

 可能性もあったが、それは今回は起こらなかった。


 さて、ではあれは何だったのだろう。

 何かのスキルだったのだろうか。


 例えば、生前の光景を記憶するスキル、とか。


 色々考えてはいたが、フラードが沈痛な表情を浮かべながら

 崩れ落ちた死霊龍の姿を見ているのを見て、

 一旦自分の考えにフタをした。


 ミカンは自分の獲物を横取りされたことが

 不満だったらしい。少し機嫌が悪かった。


 だが、死霊龍を浄化するなら神力が必要だと思う。


 ミカンにそう言い聞かせようとしたが、

 聞く耳を持ってくれなかった。


 フラードに許可を貰い、死霊龍の残骸を

 ミカンに吸収させることで、やっと落ち着いた。



『……アキレア。どうか安らかに』



 フラードはミカンに吸収されていく残骸へと

 言葉を交わしていた。今回は空島のように

 取り乱す事は無かったが、その表情は暗い。


 俺も死霊龍の冥福を祈り、

 その後気を取り直して地下空間を散策。


 しかし、フラードの魔力を感じ取ることは出来なかった。


 捜索を終了し、ウィズダムを通して転移を実行する。


 フラードの分体を発見することは出来なかったが、

 死霊龍を討伐し、土地の汚染の原因を排除出来たことと、

 ミカンの能力を丁度良く測れたので、

 ボチボチの成果と言えるだろう。


 態度には出ていないが、内心は落ち込んでいる

 フラードと、無邪気に動き回るミカンに挟まれながら、

 次はどうしようかと、俺は考えていた……。


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