第54話 未完なるものと神力
俺は空島の地下研究施設の
マザーコンピュータルームの隠し部屋に来ていた。
この部屋には強力な隠蔽魔法が掛けられているらしい。
フラードですらこの部屋には気付くことは難しいのだ。
俺が何故、そんな部屋に来ているのかというと……。
『……これが、前マスターの最大の遺物か』
俺は生体カプセルの中で眠っている"ソレ"を見ていた。
龍眼で鑑定もしてみる。
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種族:ミカンセイ
系統:不明
状態:休眠
Lv :10/80
HP :4560/4560
MP :5453/5453
攻撃力:3268
防御力:5092
魔法力:5738
魔防力:4940
素早さ:3629
ランク:A
攻撃スキル
「全力攻撃:LV5」「突進:LV5」「毒攻撃:LV5」
「刺突撃:LV5」
魔法系スキル
「水魔法:LV6」「雷魔法:LV6」「闇魔法:LV9」
技能スキル
「魔力感知:LV8」「魔力操作:LV8」「魔力吸収」
「MP自動回復:LV10」「浮遊」「念話」「空間把握:LV10」
耐性スキル
「火耐性:LV10」「水耐性:LV10」「雷耐性:LV10」
「物理耐性:LV5」「魔法耐性:LV5」「状態異常無効」
ユニークスキル
「スライムボディ」「捕食吸収」「吸収強化」「分裂」
「硬質化」「超硬質化」「魔力変換」「鑑定遮断」
「繭纏」
称号
「禁忌の存在」「冒涜者」
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俺は装置を起動する。ソレがカプセル内の液体を吸収していく。
カプセルから、ソレが飛び出した。
『……ここ、どこー?』
『ここはお前の部屋だった場所だ』
『わ、おうまさん!……ねー、ぼく?わたし?おれ?だれ?』
『え?……お前は……そうだな、"ミカン"でどうだ?』
ミカンと名付けた理由は、見た目が
オレンジ色の球体なのと、種族が
ミカンセイ……未完成か?だからだ。
それにしてもオレンジ色の1メートルサイズの
球体が浮遊しているのは何とも不思議だ。
『うん!わがはい?あたくし?ミカンなの!』
『一人称が定まってないな。一つに絞った方がいいぞ』
『ミカン、ミカン……ミカンなの!』
『……あー。ミカン、気に入ったのか?』
『きにいる。すき?ミカン、ミカンすき!』
『……あ、はい。好きなのね。……精神が物凄く幼いな。
これは、未完成と言われても仕方ないな、なんてな』
俺が読み漁った資料によると、
コイツは空島で唯一の生体兵器らしい。
つまりミカンは生きているのだ。
未完成故に前マスターは起動させることは
ほぼ無かったようだが、その生態データはキチンと取られていた。
簡単に言えば食事は何でもいい。食べ物である必要すらない。
そのスライムボディで何でも食べる。だがそれだけじゃない。
なんと食べることでレベルが上がる。
傾向としては良いものを食べる方がレベルが上がるらしい。
グレッシャーに続く残飯処理係になれそうである。
だが、問題はここからだ。
このミカン。なんと神を目指して作り出された
存在らしい。目標が高すぎると思う。
しかし未だ未完成。そこで完成させるために
神の力を大量に取り込んでみたらどうなるのか?
と、前マスターは考えていたらしい。
しかし、今までその目処が立たなかったため、
未完成のままミカンは眠りについた。
ところが、その目処が立ってしまった。
まぁ、だから俺が復活させたともいえる。
具体的には、フラードのことだ。
神龍の名を冠するフラードは、神の力……
"神力"というものを持っているらしい。
というか、神力の源は魔力なので誰でも
持ってると言えなくもないはずなのだが、
その中でも、特別特殊な魔力が神力らしい。
レベルが上がるのも、魔力を取り込んでいるらしい。
それは広い意味では神に近付くということではないだろうか。
まぁ、そんなことは今はいいだろう。
とりあえず、早い話が神力を含んだものを
ミカンが取り込み続ければいいというわけだ。
まあ、そういうわけで……。
『フラード、抜け落ちた鱗をくれ』
『……アスはいきなり何を言っているのだ』
『のだー♪』
『……なんだ?この球体は?』
『空島の最強最悪の生物兵器』
『……その割には弱いぞ?』
『今はまだ未完成なんだよ』
『……そうなのか。で、鱗を出せというのは?』
『この子……ミカンのパワーアップに必要なんだ』
『……はぁ。まぁ、抜けた鱗なら構わん。
どう使うのか知らんが……』
『よし。じゃあ早速行くぞ』
『へ?何処へ?』
『ミスリル達と一緒に転移した家までだよ』
『……はあ。まあ確かにそこなら
鱗もあるだろうが。彼処は今……』
フラードが説明しようとしたが、アスはミカンを
連れてドンドン先へ行ってしまった。
慌ててフラードはアスを追った。
そして、家に辿り着いて、ため息を吐いた。
『……何だこれ。魔石だらけじゃないか』
『……一月も放置すれば、それはそうなるだろう』
とりあえずアス達は魔石を食べることにした。
なおこの原因は、環境が変わっても主が不在でも
魔石を納めていた律儀な蟻達である。
まあその魔石も食欲旺盛な
ミカンが大半を食べてしまったのだが。
そして目的だった鱗を発見する。
実験も兼ねてアスは早速鱗を食べさせた。
ミカンが鱗を取り込んだ瞬間、
一瞬ミカンの体内が金色に光った。
それを見てフラードは固まった。
一方のアスは満足気に答えた。
『以前死霊龍を倒した時だ。天叢雲剣が光ってたよな。
あれって、神の名を冠する者だけが使える"神力"だろ?
ミカンが、神力を取り込むと、何か起こる可能性が
高いんだよ。今は、その実験中って訳だな』
『…………』
フラードは黙り込んでしまった。
自身が話したことの無い神力について、
アスはいつの間にか理解を示していた。
それが空島の資料から得たものだとするならば、
アスは一体この世界のことをどこまで知ってしまったのか?
尋ねたくはなったが、実行するほどの気概は
今のフラードには無かった。
フラードは今のアスの研究者気質に
ついていけてないのだ。無論、それだけではないが。
『……おー、ガンガンレベルが上がるな。
神力とは関係あるんだろうか?
それとも単に素材のレベルが良いのか?』
フラードは深く考えるのをやめた。
どの道考えるだけ無意味だと思ったのだ。
一方アスは何と世界樹の葉をミカンに食べさせていた。
流石のフラードもそれは唖然とした。
ミカンが葉を取り込んだ瞬間、鱗と同じように
ミカンの身体が一瞬金色に輝いた。
『……やはりな。資料によれば"神樹"とも
呼ばれるという世界樹だ。もしかしたらと思ったが……。
やはり思った通り神力を含んでいたらしい。
神の力を持つなら、万病薬になるのも納得だな』
アスは極めて冷静だった。世界樹の葉は惜しいが、
現状持っていても使い道が無いので持ち腐れるくらいなら
思い切って使ってしまおうと思ったのだ。
もちろん実験という理由もあるが。
とはいえ、この実験のおかげでミカンが鱗を
食べ切る頃にはレベルが30を超えたのである。
『よし。フラード、そろそろ行くか』
『……何処へだ?』
『死霊龍だよ。死霊龍』
『!…………分かった』
死霊龍という単語を聞き、気を取り直したフラード。
アスはウィズダムと連絡を取り、
転移をしてもらう手筈を整えていた。
『……この、ミカンとやらもついてくるのか?』
『ああ。ミカンはきっと今後役に立つだろうからな』
『……邪魔にならないか?今はまだ弱いぞ』
『資料のデータと俺の予想からすると、
多分問題ない。寧ろ死霊龍で丁度いいかもな』
『?』
『ちょーどいいー?』
アスの言わんとすることが理解できないフラード。
ミカンは元から理解していないので省くが。
【準備ガ整イマシタ。転移ヲ開始シマス】
しかし、そんなフラードの疑問も、
ウィズダムの転移によって、アスに聞く間もなく
流されてしまうのであった……。




