第53話 これからの目標
あけましておめでとうございます。
2019年もほどほどに頑張っていきます。
よろしくです!
『ウィズダムーッ!準備出来たぞーッ!』
【承知シマシタ。転移ヲ開始シマス】
ウィズダムの機械音声が頭に響く。
急にウィズダムの声が聞こえたからか、
慌て出す虫族の移住組達。
転移の対象は、俺と彼ら移住組と白亜の家。
魔力が不足すればフラードが向こうで
貯蓄してくれてるだろうから、恐らく大丈夫なはずだ。
足元に魔方陣が広がり出す。
今回の転移は大規模なので魔方陣を展開するらしい。
何でも魔方陣を媒体にした方が魔力を無駄に
消費したりはしないそうだ。よく分からないが。
『ア、アス様!これは何事デスか!?』
『気にするな。これから目的地まで
移動するけど、そのための魔方陣だ』
『いや、気になるよ!?』
ミスリルの突っ込みが刺さった。
結局皆慌てふためくうちに転移が発動した。
…………
『……おっとと……どうやら、着いたようだな』
『……ここが、空島デスか……すごい、雲に包まれてマスね』
ミスリルやマザー、クワガタ達が辺りを見回している。
やはり地上に住んでいたら、こういう光景は物珍しいだろうな。
『幸い理由は謎だが自然は豊富だから、
好きな所に巣を構えてくれて構わない。
ただ、どこに巣を構えたかだけは教えて欲しい』
俺の言葉を聞いて虫族達が一斉に動き出した。
俺はミスリルとグレッシャースライムを連れて、
マザーコンピュータルームまで移動する。
コンピュータルームまで来ると、
フラードが眠たげにとぐろを巻いていた。
『……お帰りなさい』
『た、ただいま』
『マロー……』
『ひゃー、ここ、凄いですねー』
ミスリルやグレッシャーは興味津々という具合で
マザーコンピュータルームを見回している。
フラードは魔力切れを起こしたらしく、
そのせいで眠たげにしていたらしい。
ウィズダムは便利だけど燃費がかなり悪そうだ……。
それにしてもフラードには苦労をかけさせてしまったな。
後で労わっておこう。
とりあえず空島に引っ越した虫族達やミスリルらが
慣れるためにしばらく様子を見ながら生活することにする。
それからしばらく俺はマザーコンピュータルームにこもった。
フラードには俺の代わりに魔物達を纏めて貰っている。
話によると蜂や蝶が集めた蜜とカブトムシやクワガタが
狩った魔物の魔石を物々交換したりしているらしい。
そこに蟻や蜘蛛も混じり、虫族独自の交易が成り立っているそうだ。
彼らがお互い協力し合えば、安心して色々任せられるし
頑張って欲しいところだ。
因みにミスリルが土を食べ、その跡地を一部の虫が領域にしている。
ミスリルの扱いはさながらモグラのようだ。
グレッシャースライムはゲロマズで不人気な
ワタウサギを狩って魔石は渡して肉体を吸収しているらしく、
虫族に喜ばれている。因みにワタウサギは数は多いようだ。
フラードは時折種族間の揉め事を仲裁しつつ、
死霊龍のいた洞窟に赴き、瘴気の浄化を試みているらしい。
剣も力を取り戻し始めているようで、
少しずつ瘴気を浄化出来てはいるようだ。
そして、俺はというと……。
『……はぁ、読み終わらんな。この資料の山は……』
前マスターが遺した資料を片っ端から読んで回った。
まぁ、そのおかげでこの世界のことが色々と分かってきた。
まず、この世界は"ウルティム"と呼ばれるらしい。
まぁそんなことはどうでもいい。
そしてこの世界は四つの大陸があるらしい。
人間至上主義の国々があるヒューマ大陸。
獣人、竜人、ドワーフ等の人間からは亜人と呼ばれる
人種が自由を得るために渡来し、開拓したアニマ大陸。
かつて龍種の楽園だった龍の谷が大陸の面積の
3分の2を占め、現在多種族が暮らすドラギエナ大陸。
永久凍土と言われ、一部の原住民を除いては
人も寄り付かない極寒のブラント大陸。
そして、大陸ではないが霧の海と呼ばれる
海の先にあるという幻の大地。
存在が知られてる時点で幻ではないだろ、と思ったが、
どうやらこの大地の存在を知るのはほんの一握りらしい。
それも伝承や不確かな噂程度のレベルだそうだ。
中には霧の海の先を目指した人間もいたそうだが、
誰一人として戻ってくることは無かったという。
まぁ、この世界は大まかにこういう感じらしい。
さらにフラード……神龍ヤマタノオロチの
同業者についても調べた。
と言っても、神鳥"フェニックス"、神狼"フェンリル"
の二匹しか分からなかったが。
フェニックスは火山地帯に生息し、フェンリルは常に
大陸間を移動している、ということは分かったが。
さらに資料を読み進めていく。
空島は元々あった浮遊島を、ウィズダムを
マザーコンピュータとして制作し、島そのものを
改造した超巨大研究施設だったらしい。
かつての街等の廃墟はその名残ということだ。
さておき、まだまだ調べなきゃ行けないことは多い。
……俺達がそこそこ苦労して進んだ地下研究施設の
防衛システム、あれで一番弱い設定だったりとか、
そういうやばい事実を知ったりもしたが、まあいい。
そんな中、フラードがマザーコンピュータルームにやって来た。
『……アス、大丈夫か?』
『……何が』
『……その、資料は後からでも読めるのではないか?
かれこれ、1ヶ月間は篭っているのではないのか?』
『今は、色々気になることがあるんだよ。
因みに今読んでるのは空島の保有戦力についてだ。
微塵も無視出来ない要素ばかりあるぞ』
『…………』
フラードは寂しげな表情を浮かべたが、
羊皮紙に夢中だったアスは気付かなかった。
『……あ、そうだ。フラード』
『何だ?』
『これを見てくれ。ウィズダム!』
『ハイ』
ウィズダムが世界地図を映し出す。
そこには三箇所に赤い点があった。
『……これは?』
『フラードと関係がある龍の、死霊龍……の反応だ』
『!』
『……ここに行けば、空島と同じような
死霊龍に出会えると思う』
『……』
『もし、同じなら、フラードの一部を
護っている可能性も多いにある』
『…………』
『そして、もう一つ』
アスが合図する。それと同時に地図に多数、
青い点が表示されていく。
『…………これは?』
『龍の谷に棲んでいた龍種の生き残りや、子孫達だ』
『…………な、何……!?』
フラードの顔が驚きに染まる。アスが続く。
『これは俺の計画なんだけどな……
空島に、龍種の新たな住処を作らないか?』
『……い、良いのか?』
『土地はまだまだあるし。
何よりウィズダムの魔力供給源が足りない。
龍種の高い能力なら、より魔力を集められるはずだ』
『……ふむ。それは、確かにそうかもしれん』
『……それに、俺にもそうしたい理由があるからな』
『……理由?どんな理由だ?』
『……それは言えない。ただ、悪い話じゃない。
いつか時期が来たら、話すさ』
『……そうなの、か。……分かった。
なら、それを待つとしよう』
『とりあえず、まずは死霊龍を倒して回ろう。話はそれからだ』
『……うむ。そうだな……まずは、それを目標にしよう』
俺は資料を読み切ったので、風魔法で運んでしまった。
『……それにしても、アスは……。
アスは、どこまで知ってしまったのだ……?』
フラードはポツリと呟いたが、
その呟きにアスは気付けなかった。
いつの間にか眠っていたからだ。
疲れからかすっかり眠りこけていたアス。
フラードはしばし思案顔だったが、
アスが眠っているのを見て、
自分も眠ることにし、とぐろを巻いて眠った……。




