第49話 龍の記憶
投稿遅れてすみません!
これからもこういうことがあるとは思いますが
どうかよろしくお願いします!
死霊龍。それは生前強い恨みを抱いた龍が成り果てる存在。
その肉は腐り、ただれ落ち、腐臭と瘴気を撒き散らす。
意思を持たず、生あるものを狙い、呪う存在。
憎悪と執念だけが、死霊龍を突き動かすのだ。
『……酷いな』
『……ああ』
『ギギ……ガガ、ガ……』
死霊龍。一言で言えばその存在は……不快そのもの。
肉の腐った匂いが充満し、腐り落ちて骨も見える箇所もある。
死霊龍からは魔力に絡まるような
不快なモノが放出されている。
俺はその正体を知るために鑑定した。
「瘴気」
汚染された存在が放つ魔力に含まれる。
生命に影響を与える他、土壌を汚したりするなど
環境への被害の原因でもある。
……瘴気、か。
確かに、これを長期間浴びていたら、
体調を崩すどころじゃ無さそうだ……。
光魔法で簡易の魔力の膜を俺とフラードにかける。
"ライトカーテン"という魔法だ。光の浄化作用で
多少なりとも瘴気がマシになるはずだ。
『助かる。……死霊龍、か。
かつては上位龍だった者の成れの果て……。
済まない。せめて、私が……ここで!』
フラードが魔力を解き放つ。
俺はその間に龍眼で死霊龍を視た。
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種族:死霊龍
系統:アンデット系
状態:呪い
Lv :70/70
HP :31745/31745
MP :22675/22675
攻撃力:28334
防御力:22675
魔法力:24855
魔防力:24855
素早さ:20898
ランク:A
攻撃スキル
「全力攻撃:LV6」「毒攻撃:LV7」
魔法系スキル
「闇魔法:LV7」
技能スキル
「魔力感知:LV6」「魔力操作:LV6」「威圧」
「気合法」「魔戦法」「竜闘法」「呪怨」
「HP自動回復:LV5」「MP自動回復:LV6」
耐性スキル
「闇耐性:LV7」「物理耐性:LV4」「魔法耐性:LV4」「苦痛無効」
「状態異常無効」
ユニークスキル
「竜鱗:LV10」「龍鱗:LV1」「息吹」「執念」
称号
「最終進化」「竜殺し」「魔物殺し」「魔物の殺戮者」
「災害」「天災」「災厄」
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ステータスは……俺より何割か高いくらい。
正直、フラードの敵ではないのだろう。
『アス。これは私の責任でもある。
私が自らこの失態を、収めなければならないのだ』
『分かったよ。でも回復と状態異常解除はさせてもらうぞ』
俺は強めに主張した。フラードの意志は尊重したいが
俺は仲間が傷付くのを傍観するほど呑気でもないから。
『……済まない』
『気にすんな。行ってこい』
フラードが見た目からは想像がつかない速度で
地を這い、死霊龍に肉薄する。
そのままゼロ距離で土魔法"アースジャベリン"という、
大地の槍を撃ち込み、さらに地面からも槍を複数生やす、
"ニードルランド"という魔法で死霊龍を貫く。
槍に貫かれ身動きの取れない死霊龍。
それに対して接近したフラードの尾の片方が輝き出す。
『"天叢雲剣"』
輝きを放つ尾が剣へと変化していく。
普段はそこから出てくるのか、と思わず思ったのも束の間。
死霊龍は何の抵抗をする事も許されずに頭から両断された。
力無く崩れ落ちる死霊龍の肉体。
……終わった?
『いや……ここからだ』
天叢雲剣を構えて様子を見ているフラードが答えた。
見ると死霊龍が頭から胴体まで半分に割れているにも関わらず
大量の瘴気を吐き散らしながら起き上がっている。
鑑定してみると、状態が"呪い/執念"になっていた。
HPが底をついているのに起き上がり、猛毒のブレスを
吐き散らしてくる。これはヤバイ!
『"サイクロン"!』
風魔法でブレスを受け止める。
このくらいなら構わないだろう。
その間にフラードの二つの頭が同時にブレスを放つ。
着弾と同時に死霊龍のMPがゴッソリ減った。
……なるほど。執念というのは、
MPがHPの肩代わりをするような状態なのか。
だからHPが尽きても動き続ける……。
ただし、大量の瘴気を撒き散らしながら。
『……気分悪くなってきた』
毒に瘴気、腐臭。気持ち悪くならない要素の方がない。
光魔法で自身の状態異常を回復しながら戦いを見届ける。
天叢雲剣が強い輝きを放つ。
剣からは俺の拙い光魔法など足元にも及ばないほどの
強力な光の浄化エネルギーを帯びているのが遠目でも分かった。
『これで……終いだ!』
死霊龍がブレスによる抵抗を試みるが、
それすらも浄化し、優しいそよ風に変わってしまった。
……死霊龍が再び、両断される。
「ググギガ……ガガガ……ア゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ッッ!」
斬り割かれた箇所から凄まじい量の瘴気を放出し、
同時に肉体が崩壊して倒れ出す死霊龍。
………ザ……ザ…………ザ……
ん……?
……なんだ、これは……?
頭の中に、何かが映り込んでくる……?
大勢の武装した人間……
山よりも巨大な八つの頭の巨龍……
人間に殺された竜の子供たち……
黄色い鱗に翼を生やした龍……
多頭の巨龍の頭が人間に斬り飛ばされた……
龍達の息吹……
人間の剣がへし折れる……
龍は全ての頭が斬り飛ばされていた……
『ニゲロ』
その声にハッとし、前を向く。
死霊龍が優しい光に包まれ始めていた。
『ユウシャ……ダ……。
ニンゲン……リュウヲ……ホロボスカ……!』
死霊龍が崩壊していく肉体など気にもとめず語る。
その様は、フラードですら驚いていたようだった。
『カナワナイ……シンリュウサマガ……ヤラレタ!
……ニゲロ……シンリュウサマヲマモルノダ!』
死霊龍の肉体が崩れ切った。
目の前には刻刻と薄れていく黄色い龍が浮かび上がっていく。
フラードは、その龍を、驚いた様子で目を見開いて見ていた。
『神龍様を何としても逃がすのだ。
我々の命に変えても。変えてもだ』
龍の語りは続く。先ほどよりも聞き取りやすい。
だからこそなのか。フラードの顔が曇っていく。
『神龍様さえ再起すれば……我々龍族は負けん。
神龍様……この私が必ず安全なところへ』
倒れて、分裂した多頭龍の一部を抱えた龍の情景が流れた。
フラードは、俯いたままだった。
いつの間にか黄色い龍は全身に重症を受けていた。
爪も鱗もヒビ割れ、翼は欠けていた。
全身は痛々しく血が流れ、目を背けたくなる姿だ。
『このような天空の土地にまでニンゲンが、イルトイウノカ!』
龍の放つ光の息吹。閃光が放たれる。
島に光の塔が建った。
空島だ。……え。…………ま、まさ、か……。
『神龍様……ここなら、安全なはず……。
私は、この傷です。じきに……死ぬでしょう。
息吹でなけなしの魔力も使い切りました』
次の情景は、魔方陣に捕われたフラードに語りかける
黄色い龍の姿だった。洞窟の中だ。つまり、ここだ。
『どうか、ご無事で……。
その封龍陣を解けるものに巡り会えますよう……。
……私は……屍に……なろうと、最後まで……
龍神サマ……私ハ……ヲ、お守り……します』
意識が朦朧としているのだろう。
龍は、倒れ込んだ。
『……龍神様の加護の……アらん、こと……を……』
龍は、それきり、動かなくなった。
ふと見上げると、黄色い龍の姿が薄れていく。
龍はフラードをチラリと見て、その後俺を見た。
『ありがとう』
そう言っているように、俺は思えた。
笑顔だった。最期に、黄色い龍は笑顔で逝ったのだ。
…………。
俺は静かに死霊龍の亡骸に黙祷を捧げた。
憎悪と執念、そしてフラードを護るという使命だけが
この死霊龍を突き動かしていたのだ。
自分が戦っている相手が護るべき対象だということも、
分からなくなるほどまでに、強い意志で……。
俺は、朽ち果ててなおフラードを護るために死に抗った
この龍に、敬意を評すつもりで話しかけた。
『ゆっくり、休んでくれ。安らかに……。
後は、俺がやるからさ……』
洞窟の中に穏やかな風が吹き抜けていった。
風に乗って、俺は龍の魔力を僅かに感じた……。




