第5話 自己分析を進めたら後悔した
洞窟が開けた空間。その空間にだけ眩しい日の光が差し込む。
上を見上げれば、天井に開いた大穴。そこから日差しが差し込んでいる。
そして、どうもこの地帯だけ植物が生えているらしい。
俺は今の今まで水と魔石だけで我慢してきた…。
いやむしろよく耐えたと言えるだろう。
しかし植物を目の前に俺はもう限界だった。
空腹を訴える脳が命令する。草を食えと!
夢中で草を食べた。この草はただの雑草なのだろう。
魔力などもほとんど感じ取れないが、
味だけはとにかく馬になってから今まで食べた物で一番美味かった。
それからしばらく草を黙々と食べ続けた。
一息ついて、水を飲もうと思った瞬間。
不意に魔力の流れを感じ取り、
咄嗟にその方向を見ると、不気味な顔をした木が
何やら魔法らしきものを飛ばしてきた。
慌てて水の攻撃魔法"アクアバレット"という
小さな水球を連続で放つ魔法で相殺…するどころか木の魔物を貫通した。
あれ?慌てて使ったからそんなに魔力込めてないんだけどな。
折角なのでアクアバレットで魔物をさらに貫く。
木の魔物はそのまま動かなくなった。
鑑定すると「トレントの死骸」と表示された。
この魔物はトレントというらしい。
すまん、最初は殺すつもりはなかったんだ。
……せめて責任をもってちゃんと食べて供養しよう。
木とはいえ植物だから食べたいとか、そんなやましい理由ではない。
断じてない。ないったらない。
トレントはまぁまぁの味だった。スナック菓子食ってる感覚だった。
魔石はホブゴブリンサイズだった。ごちそうさま。
俺はしばらくこの地に居座り、
雑草とトレントを根絶やしにした。
二重の意味で美味しかった。
食事にもレベリングにも困らない充実の数日間だった。
トレントを根絶やしにした後、この植物地帯を離れた。
少々名残惜しいが、いい加減洞窟から脱出しなければ。
移動を開始しつつも鑑定や魔力操作は欠かせない。
洞窟の出口を目指して…どこが出口かは知らないが。
とにかく移動している。そんな時、頭に情報が入り込む。
【条件を満たしました。「鑑定:LV3」が「鑑定:LV4」に上昇しました】
おお、鑑定のレベルがまた上がったぞ。
レベルも上がったし、折角なのでたまには自身を鑑定してみた。
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種族:アクアホース
系統:魔獣系
状態:通常
LV :12/35
HP :3520+352/3872
MP :1892+189/2081
攻撃力:2926+292
防御力:2497+249
魔法力:1749+174
魔防力:1727+172
素早さ:4092+409
ランク:C
攻撃系スキル
なし
魔法系スキル
「水魔法:LV4」
技能系スキル
「鑑定:LV4」「魔力感知:LV4」「魔力操作:LV4」
耐性系スキル
「水耐性:LV3」
称号
「転生者」「突然変異」
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……あれ?こんなにステータスの数値、高かったか?
それに……称号って何だろうな?
気になった俺は、「転生者」と「突然変異」を鑑定する。
「転生者」
此処とは違う別の世界から転生したものに与えられる称号。
効果:全ステータスに10%の補正を与える。
「突然変異」
本来の生物の進化から外れ、変異した個体に与えられる称号。
効果:条件次第で様々な進化の可能性が開かれる。
……はぁ?……別の世界?
……ということは、ここは日本どころか地球ですらないってことか?
……。もう、意味わからん。思考を放棄したい。
ただステータスの補正はありがたい。これは使えるだろう。
そう割り切ろう。これはただのステ補正の称号だ。そういうことにしよう。
……それにしても、転生か……。
この世界のどこかに、俺と同じ転生者ってのがいるかもしれない。
……洞窟から出たら、それを探すのもアリだな。
……ただ、見た目が馬だからなあ。
しかも今は魔物だし人間とかと出会っても、
打ち解けられる気がしない……。
そもそも、意思疎通すらできないのではないのだろうか……。
後、突然変異はよく分からなかったので
触れないことにした。現実逃避ではない。条件次第とか分からんわ。
某ポケ◯トでモ◯スターなアレに出てくる
進化先がいっぱいある茶色い子じゃないんだからさぁ……。
俺は自分の現状にやはり悲しみを覚える。
今なら7回くらい相手の攻撃を見切ってバスケができる気がする。
……とっとと洞窟でよう。
俺は歩く速度を速めて、洞窟のさらに先へと進んでいった……。