第43話 空島の廃墟
『見えたぞ!あれが空島だ!』
『ふむ……』
俺はフラードを乗せて雲を越え、
空中に浮かぶ浮遊島"空島"に辿り着いた。
『……なるほど。確かに……私の魔力を感じる』
『……よし。じゃあ行こうか』
『そうだな。食料を確保する意味でも急いだ方が良いだろう』
空島に着陸した俺達は移動を開始した。
「キュキュ?」
『……綿雲みたいな兎だな』
『……ワタウサギ、というらしいな』
『えーっと……鑑定によると、甘くて柔らかい……。……甘いのかよ!?』
『……何だか、食べる気がしないな。……甘いのか』
『……先に進むか。何か食えそうなのがあるだろ』
『ああ』
そうしてさらに先に進んでいく。
ある程度進むと、開けた場所に出た。
『……何だろう、これ』
『……ふーむ。……村、か?』
『……だよな』
俺達の目の前に広がっていた光景。
それは廃墟となった村らしき跡地だった。
『……これは、少し調べた方が良いかもしれないな』
『ああ。何か手掛かりがないか探ってみよう』
手分けして廃墟となり、ボロボロとなった村の家屋を一つずつ見て回る。
『……うーん。これは……皿かな。
こっちは……桶、か?何もないな……』
カタッ。
『ん?』
カタカタ。
『……何だ、この音は?』
カタカタカタカタッ!
『……後ろかッ!』
俺は後ろから近付いてきたソレを蹴り上げた。
バギャリと何かが砕け散る音がした。
『……げぇっ』
カラカラカラン……。
『さっきからカラカラとうるさいと思ったら……
何だこれ、骸骨かよ……。こんなのが後ろにいたと思うとゾッとするな』
少し胆を冷やしながらも一応鑑定しておく。
「スケルトンの残骸」
アンデット系の魔物、"スケルトン"の骸骨が
砕け散ったもの。ここまで破損すると再構築は不可能。
『ふぅー。どうやら、倒せたらしいな』
冷静になったので、スケルトンの残骸を見る。
……ふーむ、人型の骸骨らしいな。
少なくとも動物の骨ではないようだ。
……となると。
『……この廃墟の村の住人だった骸ってとこか』
何となく目を瞑って黙祷した。
スケルトンの誕生する理由なんて分からんが
もしかしたら生前に強い未練があったのかもしれない。
その後、廃墟の家屋を出て、フラードと合流した。
『スケルトンが出た』
『こっちもだ。少し驚いたな』
『どうやら、この廃墟に人間がいたことに間違いは無さそうだな』
『そうだな……どっかに何か、記録とかそういうのが残ってたりしないかな。
そういうのがあれば、何があったかある程度分かるだろうに』
『ふむ。ではもう少し奥を調べてみるか』
『そうだな』
そしてさらに奥へと進んでみる。
そこには、他の家屋よりも大きいがやはり廃墟になっていた建物があった。
『……ふむ。この建物は大き目だな』
『ああ。もしかしたらこの村の跡地っぽいところの
村長的な立ち位置の人間の家かもしれないな』
『なら、ここならば何かあるやもしれんな』
『そうだな。手分けして探ろう』
そして俺達は二手に分かれて家屋内を物色していく。
時折骸骨が目に入って驚くが、スケルトンではなさそうなので放置する。
『……うーん。何だろうコレ』
『どうした?』
『いや、何か書いてあるようなんだけど……』
『どれ……。……ああ、"ピクト文字"か』
『ピクト文字?』
『確か、千年か二千年くらい前の比較的新しい文字だ』
『千年単位が新しいと言えるのがすごいわ』
『……ふむ』
『……なんて書いてあるんだ?』
『どうやら日記のようだな。ええ……と。
"この日は村祭り。天空の民である我らが、食べ物や生き物に
感謝し、盛大に盛り上がる祭り……。"』
『"……そのはずだった"』
『……』
『次のページを読むぞ。……ふむ。
"ソイツは突然やってきた。
私は祖先からの言い伝えでしか聞いたことがないが恐らく間違いないはずだ。
ドラゴン。村祭りも終盤という時に、突然それは現れた。
そのドラゴンは酷く傷ついていた。
そのせいかまでは分からないが、この空島に上陸するなり
ドラゴンが使える大技だと言われるブレスによる攻撃を
見境なく放った。それだけで島は壊滅的な被害を受けた。"』
『……』
『"ドラゴンはそのまま空島の先へと進んでいった。
我々の住む村はブレスの余波だけで壊滅した。
村祭りどころでもなくなった。甚大な被害を受けた
この村は廃棄することになるだろう。"』
『……』
『"もしこの私の最後の書置きを見た者がいたならば
ドラゴンに見つかる前に無事に逃げてくれることを祈る。"』
『……終わったのか?』
『……ふぅ。……ああ』
『お疲れ様』
『……うむ』
日記を読み終えたフラードは浮かない顔をしていた。
『……どうしたんだ?』
『……いや』
…………ぜ……。
『……え?』
『?どうかしたか?アス』
『……なあ、今何か……聞こえなかったか?』
『…………いや。特には何も聞こえてはいないと思うが』
『……そう、か。悪い、ただの気のせいだと思う』
『そうか』
『……そろそろ先に進むか。
日記のおかげで少しこの島の状況も分かってきたしな』
『……ああ。そうだな』
俺達は廃墟の村を後にした。
その後、フラードは渋々ながらもワタウサギを何匹か狩った。
『……甘い。不味い』
『……不味いのか』
『ゴブリンとは別な意味で不味い。私の味覚にはあわないのだ』
『ふーん。そういうもんなのかね』
『そういうものだ。ホレ』
『え』
フラードはワタウサギの肉をアスの口に突っ込んだ。
『うげっ!?ゲエッ!?ゴホッゴホッ!』
悶えながら慌ててワタウサギの肉を吐き出した。
そして、ポツリと呟いた。
『……めっちゃくちゃ不味い砂糖みたいな味がする』
『……だろう』
『不味いくらいに甘ったるくてしつこい味だな、これ』
『そうだろうそうだろう』
『……分かった分かった。これは、美味しくはない。うん』
俺もフラードもワタウサギの魔石をかじって口直しした。
そして、敵が少なそうな場所を選んで眠りについた。
************************************
(……ん?)
どこだ、ここは?確か俺は……寝ていたはずだ……。
俺が今、いるところには、植物の強い香りが漂う。
普段俺が山で食べてる植物よりも遥かに強い匂いだ。
どこだ、ここは?……夢……?でも、匂いがある夢ってあるのだろうか?
疑問を抱いていると、向こうに何かの気配を感じる。
俺は何となく、そこへ足を踏み入れる。
天井が何かキラキラと輝く木漏れ日のようになっている、
ログハウスのような、木でできた空間に出た。
……え?じゃあ、ここは木の中か何かか?
それにしては、デカすぎると思うんだが……。
これは本当に夢なのだろうか。
頭を悩ませていると、不意に声をかけられた。
俺がその方向を見ると、鎧に膝当て、グリーブ、手袋リストにマントに
至るまで黒と紫の二色で統一された黒目黒髪の男がいた。
「やあ。やっと会えたね?」




