第42話 空島
俺はホシナガスクジラが噴出していた魔石を追っていた。
理由は単純に興味があるからだ。
流石に高度的にかなり苦しい。
寒いし、息もかなり苦しくて仕方がない。
それでも、ただただひたすら空の果てを目指した。
そして俺は魔石が吹っ飛んでいったところまで辿り着いた。
『おぉ……。何だか、すごい奇麗だな』
その魔石は、天上の目には見えない
不可視の魔力の網のようなものに引っ付いているように見える。
これは何なんだろうか?鑑定してみる。
【龍眼「鑑定:LV8」では鑑定できません】
……あっはい。無理でした。
……それにしても、この網のようなものに引っかかっている
ホシナガスクジラが噴出した魔石は、地上では見たことがないほど濃い色だな。
サイズもかなり大きい。お土産に少し持って帰ってみるか。
風魔法で魔石を引き剥がしてみた。
すると魔力の網のようなものに魔法の大半が吸収された。
……あ、そういうタイプの奴なのね。
結界か障壁か、バリア的な奴なんだねこれ。
これ、恐らく直接触れるとえらい目に遭うだろうなぁ。
というわけで、四苦八苦しながら、風魔法を使い魔石を数個剥がした。
因みにこの魔石は鑑定できた。
「星魔石」
天翔ける大鯨"ホシナガスクジラ"が創り出す魔石。
膨大な量の魔力が込められているが、サイズ次第でさらに量が変わる。
稀に流星となって地上に落下する。
……何だろう、触れちゃいけないものに触れたかもしれない。
とりあえず、一旦地上に戻ろう。みんなが心配するかもしれないし。
高度を下げて降りていく。
翼でバランス調整しながら気流を動かして……。
途中で巨大な雲を突き抜けていく。息がしにくい。
……プハーッ。やっと抜け……。
…………え?何アレ。
俺は雲を突っ切って現れた目の前の光景を疑った。
だって、巨大な島があるんだもん。
もしや竜の巣の中心にあるとかいう某大佐が求めた伝説のアレ?
跪け、君はラピ◯タ王の前にいるのだ。って奴?
……か、鑑定ッ!
「空島」
空中に浮かぶ鉱石で形成された浮遊島。
地上から隔離されているため、独特の生態系が完成している。
……マジか……。おお、マジか。
何かさっきから変なものしか見つけてない気がしてきた。
せっかくなので空島に近付いてみた。
……うーん。別にそこまで強力な魔力は感じな…………。
…………これは。
この魔力、これは……間違いない。いや、間違えようがない。
何故なら、その魔力はとてもよく知っているからだ。
『……フラード。ここに、いるのか……!』
俺は、空島の奥地からフラードの魔力を感じ取っていた。
これは、急いで引き返さないと。
フラードに報告する良い土産が出来たな。一応魔石も土産だが。
……そしてその道中で。
「「「グルル……」」」
ワイバーンの群れに出会いました。魔石か?この魔石のせいか?
さておき、ワイバーン。Cランクのドラゴン系の魔物。
その姿はなんていうか、プテラノドンとかみたいな翼竜に近い。
竜族としての強さは下位で、それほど飛び抜けて強いわけではない。
ただ、尻尾に毒針があって、
それを使った毒攻撃には一応気を付けないといけない。
『まあ。俺の敵ではないんだけどな』
スパークコンドルもCランクだったけど、
その時とは決定的な違いがある。
飛行能力。ワイバーン達の"飛行"スキルはレベル3か、4くらい。
対して俺の"飛行"のレベルは6。
まだ飛び慣れてないという経験の差はあるだろうが、
下位のレベル相手ならスキルによる飛行能力補正が補ってくれる。
加えて、元のステータス。つまり地力の差だ。
ワイバーンはせいぜい1千台のステータスだ。
素早さだけは2千に入る個体もいるようだが。
俺は基本1万を超える。まあ、相手にはならないんだよね。
毒?光魔法で解毒できます。
ワイバーン達は"シャイニーレイ"で貫いて墜落させた。
おっと、このままだと地上に落ちるな。試しに風魔法で受け止めてみるか。
『"風袋"』
これ、風の膜で攻撃を受け流したり、物を運んだりできる
魔法らしいけど、名前の意味と微塵も合致してないと思う。
目には見えないから、外観は分からないという点ではそれっぽいかな?
因みに風魔法の飛行補助もこの魔法でやってます。
そうして俺は十数体の息絶えた
ワイバーンを運びながら、山へと戻ってきた。
その光景にキラーアントやバトルビートル達がギョッとした。
苦笑しながらフラードやミスリルが出迎えてくれた。
『何だ?ワイバーン狩りでもしてきたのか?』
『いや、偶然出会っただけだよ』
『わーお。脳天貫かれてる。これは即死ですねー』
『さて、アス。どうだったのだ?空は』
『寒い、空気薄い、あと高度高いほど化け物が出る』
ホシナガスクジラはサイズもヤバかったな。うん。
『ふむ。そういうものなのか』
『ああ。あと、ワイバーン以外にもお土産あるぞ』
俺はホシナガスクジラの魔石を置いた。
するとフラードが驚いた様子で尋ねてきた。
『……これほどの高純度の魔石、どこから持ってきたのだ?』
『何か、魔石を噴出するクジラの魔物がいて、それを取ってきた』
『……そんな魔物がいるのか。空は、流石に私も分からない事が多いな』
『……あと、フラード。これはお前にも関わる話なんだが……』
『……何だ』
『お前の魔力を感知した』
それを聞いてフラードの表情が変わる。
『そうか。……まさか空にまで隔離されているとはな』
『どうする?取り返しに行くか?』
『ふむ。しかし、そこに行けるのはアスだけではないのか?』
『……フラードに変化してもらって、俺の背中に乗ればいいだろ?』
『なるほど。その手があるか』
『はわわ。話について行けないですー』
『ああ。ミスリルはまだ知らなかったか。
フラードは今力を失ってるんだ。これでも全然本来の能力じゃないらしい』
『……今の時点で私より強いんですけども。
アスさんよりも強いですよね。あははー。流石に嘘でしょ?』
『……まぁ、信じるも信じないも勝手だ。好きにしろ』
フラードはミスリルの茶化しには動じなかった。
『……よし。分かった。アス、行こうではないか』
『だな。そうと決まれば準備だな。……明日改めて出発しよう』
『分かった』
そして今日は蟻達やフラードはワイバーン、コンドル肉を、
俺やミスリル、カブトムシ一族は魔石や各々の食物を食べて英気を養った。
どうもカブトムシ一族は山の他の昆虫の魔物と
食物である樹液の覇権をかけて争っているらしい。
それが今年はハイパーホーンの力もあって、有利な状況だったそうだ。
しかし、敵はそれに対抗して
種族間を超えた連合軍になって対抗しているらしい。
結果、この山は現在、
カブトムシ・蟻連合軍VSクワガタ・蜂・蜘蛛・蝶連合軍になっているらしい。
いくら何でも多勢に無勢なのでは?と思ったが
そこにグレッシャースライムの分裂体が乱入。
分裂体といっても本体がAランクの魔物なので、
分裂してても普通に強い。バトルビートルのライバルである
ファイタークワガタと同等くらいには強いのだそうだ。
『まあ、もしどうしようもなくなったらミスリルに任せよう』
『えっ』
ミスリルは匙を投げつけられた。
なまじステータスが高いので損な役回りである。
因みにホシナガスクジラの魔石は厳重保管となった。
純度が高すぎて迂闊に使えないのだ。
まあ、そんなこともあったが翌日。
『よし、行くか!』
『うむ』
フラードが変化のスキルで小さくなる。
そしてそのまま俺の背に乗り、尻尾を胴体に巻き付けた。
『一応気を付けるけど、振り落とされるなよ』
『ああ、分かっている。こうして尻尾で掴まっている』
『アス様!ご武運を!』
『お気をつけてくだサイね!』
『ハイパーホーン、マザー。
みんなも山の樹液争奪戦、頑張れよ!』
『マロ?』
あれ?俺は?とでも言いたげにグレッシャーが身体を動かした。
『ははは。グレッシャーもな』
『……眠い。寝ます。ぐう』
『こいつは蹴とばすか』
ミスリルはお尻を蹴られた!
『ぎゃひーん!もうお嫁にいけない……うう……』
『何言ってんだか』
こうして大勢のキラーアント、バトルビートルらに見送られながら
俺とフラードはいよいよ空へ飛び立った。
目指すは空島。3体目のフラードを解放する。
……そして、ここから物語は動き始める。




